ルーフトップ・パーティー
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ルーフトップ・パーティー

ニューヨーク、ときどきDIARY

今回のテーマ:ホームパーティー

by らうす・こんぶ

ニューヨークに住んでいたときは、「どうしてニューヨークに行こうと思ったの?」とよく聞かれた。それに対する私の答えは、「ニューヨークで普通の生活がしたかったから」だった。

ホテルではなく自分が契約したアパートに住み、スーパーで買い物をしたり、アパートで食事を作ったり、仕事をしたり、ジムに行ったり、友達を作ったり、友達を呼んでパーティーをしたり…というような生活をしたいと思った。

ボロだが広いアパートに引っ越して、やっと念願だったホームパーティーが開けるようになった。パーティー会場は我が家のキッチン。高さの違うテーブルを2つくっつけて、その周りにアパートにある椅子を全部並べる。椅子は8つあるから、パーティーの定員は私も入れて最大8人。

テーブルの上に食器やナイフやフォーク、紙ナプキンを置き、私でも無難に作れる料理を2、3品とビールやワインを並べれば準備は完了。スロークッカーで作るチキン料理やすし太郎のちらし寿司、ポテサラは定番だった。あとはみんなが飲み物やら、チーズやら、アペタイザーやら、デザートやら持って来てくれるので十分豪華な食卓になる。料理に統一感がなくても、いろんな食べ物がごちゃっと食卓に並ぶのが、私には楽しかった。

と、ここまではニューヨークではよくあるホームパーティーだが、私のホームパーティーはちょっと違っていた。

私のオンボロアパートにはオンボロな屋上があった。そこは衛星放送用のアンテナがあるくらいで、他には何もない殺風景な場所。バーベキューをしたり眺めを楽しむようには作られていない。それでも、独立記念日にはイーストリバーで打ち上げられる花火が見え、ゴトンゴトンと派手に騒音を撒き散らしながら走っていく地下鉄が見える。また、屋上の出入り口の壁にはいかにもニューヨークって感じのグラフィティーがあって、そんなオンボロ屋上が私は好きだった。

そこは天気のいい日のパーティー会場でもあった。夕方涼しくなると、みんなでキッチンから小さなテーブルや椅子を屋上に持ち出してワインを飲んだり、楽器や歌が得意な人にミニコンサートをしてもらったり、独立記念日にみんなでビールを見ながら花火を見たりするのは最高に楽しかった。

数ヶ月前に帰国して何が残念かといえば、もうあの屋上でホームパーティーができないこと。今は、人を大勢呼んでパーティーをすること自体ができなくなってしまったが…。

ルーフトップ・パーティーは、私のニューヨーク生活の中で最もニューヨーク的な部分だった。


らうす・こんぶ/仕事は日本語を教えたり、日本語で書いたりすること。21年間のニューヨーク生活に終止符を打ち、東京在住。やっぱり日本語で話したり、書いたり、読んだり、考えたりするのがいちばん気持ちいいので、これからはもっと日本語と深く関わっていきたい。

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ニューヨーク、ときどきDIARY
専門も趣味もまったく異なるライターたちが、パンデミックをきっかけに始めた日々の共同つれづれ日記。 河野洋、らうす・こんぶ、福島千里の3人が同一テーマで綴るそれぞれのニューヨーク愛。 みんなが知ってるニューヨーク、誰も知らないニューヨークをまるごとお届け!