カレーのヘソは桑名にあった。
上京して驚いたことのひとつに、肉という呼び名とその種類があります。
🥩肉の東西
関西出身の自分にとって、肉じゃが、肉豆腐のように、ただ単に肉と呼ぶとき、それは牛を意味しています。それが関東だと豚なんですよね。
でも肉は肉なわけだし、鶏と牛ならともかく、豚ならそれほどたいしたことないように思えるかもしれませんが、いや、やっぱけっこう違います。味的には、豚肉の肉じゃがもおいしいし、全然許容範囲なんですけど、拭いきれない違和感というか、なんか違う感じは、いまも完全には払拭できてなかったりします。
🍛ビーフかポークか
そして、豚なのか牛なのかという点で、関東と関西で主役が異なるメニューといえば、これ。
カレーです。
もちろん、関西はビーフカレーが当たり前。外食するとカレーショップでも、洋食屋さんでも、ごろんごろんとした、角切りのお肉たっぷりのビーフカレーは大人気。
にんじん、じゃかいものはいるおうちカレーでも、薄切りになったりはしますが、やっぱりお肉は牛。
そんな関西と関東の食文化の違い。その境界線はどこになるのでしょうか。
🍛カレーのヘソ
そういえば、インスタントのカップうどんのおつゆが、西版と東版で味付けが違ってると知ったのは、けっこう大人になってからでした。たしかその境目は愛知か岐阜か、そのあたりだったように記憶してます。
そんなことを思い出しつつ調べていたら、こんなご当地グルメを発見しました。
三重県桑名市の桑名カレー。桑名というと、その手は桑名の焼き蛤なんて言葉が浮かんで、お肉より海産物が名物のようなイメージもありますが、位置的にはまさに東西肉食文化の境界線があってもおかしくないところです。
地図上の中心地のことを、体に例えてヘソと呼んだりしますが、カレーのヘソは桑名にあったんですね。
その桑名で生まれた、ビーフとポークのあいがけカレー。なんだかわくわくしますね。こういうちょっと遊び心のある着眼点、大好きです。
🔪桑名カレーアレンジ再現
というわけで、今回のご当地グルメアレンジ再現は、桑名カレーです。
まずはポークからいきます。カレーを2種類つくるのって、なかなか大変そうな気がしますが、今回は単なる具の違いではなく、カレーそのものも差別化します。
今回つくるポークは、スピーディに仕上がる軽い煮込みの時短カレー。そしてビーフのほうはじっくり煮込みでいきます。
🐽ポークカレーをつくろう
🐽ポークカレーの材料(2皿分)
・豚こま切れ…50グラム
・玉ねぎ…1/4個
・しめじ…5本
・カレー粉…大さじ1
・バター…10グラム
・ケチャップ…大さじ1
・お好みソース…大さじ1
・コンソメパウダー…小さじ1
・水…1.5カップ
時短なので、お肉は薄切り。玉ねぎときのこで、旨味を出していくスタイルです。きのこは、しめじを使ってますが、舞茸やマッシュルームでもOKです。
バターで豚肉を炒めます。
色が変わってきたら、薄切りの玉ねぎと細かく刻んだしめじとカレー粉を投入。
からめながら、玉ねぎがしんなりとするまで炒めます。
ケチャップ、お好みソースとコンソメを合わせます。
またまたよくからめつつ炒めて、よくなじんだら、煮込みの準備。
水をいれて、沸かします。
そのまま強めの火で、10分〜15分ほど煮詰めて、味をまとめていきます。
いったん冷まして、味を落ち着けておきます。
薄切り肉を使うので、煮込み時間が時短できて、手早くつくれるカレーは、平日の夜に急にカレーが食べたくなったときにも、おすすめです。
🐮ビーフカレーはじっくりこってり
続いて西のアイドル、ビーフカレー。こちらは、じっくり煮込む系でつくります。
🐮ビーフカレーの材料(4皿分)
・牛肉(カレー用&すじ)…400グラム
・玉ねぎ…1/2
・にんじん…1/2
・バター…10グラム
・赤ワイン…1カップ
・フォンドボー…小袋1
・トマトペースト…小袋1
・水…2カップ+α
・カレー粉…大さじ2
・天ぷら粉…大さじ1
お肉はカレー用の角切りと、牛すじのダブル使い。
お鍋を熱して、バターで焼き色を付けていきます。
これくらい表面を焼き固めると、お肉の焼けるいい香りが充満してきました。
すりおろした玉ねぎとにんじんを加えます。玉ねぎはけっこう汁も出てますが、それもそのままいれてOK。しばらく炒めて、水分を飛ばします。
玉ねぎとにんじんがペーストのようになったら、赤ワインを注ぎます。
フォンドボー、トマトペースト、水を2カップ分合わせて火にかけます。
そのまま中火で1時間ばかり。お肉にすっと竹串が通れば煮上がりです。
このまま味を調えたら、いわゆる牛肉の赤ワイン煮込みですが、今回はこれをカレーに仕立てなくては。
ポークのほうは煮詰めただけなので、比較的さらりとしたスタイルになりますが、ビーフはこってりとろみのあるカレーを目指します。ここでもちょっと差別化しようかなと。
せっかくあいがけにするので、それぞれのキャラクターははっきりさせたほうが、食べたとき楽しいはず。
バターを熱して、カレー粉と天ぷら粉をいれます。我が家は常備している粉ものが天ぷら粉なので、それを使いますが、もちろん小麦粉でもOKです。
練り合わせるように炒めて、ペースト状にします。
牛肉の赤ワイン煮込み状態のベースを、すこしずつ加えて溶きのばします。
全体がまとまったら、軽く温める感じで火にかければ、とろりとしたとろみのビーフカレー完成です。
🍛ダブルカレー夢の共演
西と東の2大カレーが、出番待ちしている楽屋の様子です。
さあ、いくぞ夢の共演。
ごはんはもちろん、お皿の真ん中に1本どどんと横たえるように。
まずはこってりビーフカレー。
いいとろみです。赤ワインたっぷりの分、色味も濃い系。
続いてあっさりポーク。
こちらは、ソースの粘度がゆるいので、お皿にさーっと広がる感じ。真ん中のごはんが、しっかり堰き止める役割を果たしてくれてます。グッジョブ、ライス。
よし、お肉をダブルでいくのだから、カレーといえば…のあれもダブルでいってみよう。
まずはらっきょう。甘酸っぱくて、コリコリしてておいしいですよね。
そして福神漬。赤いほうが雰囲気出るかと思いつつ、売ってなかったので茶系でがまん。でも、全体の色味が統一されて、これはこれできれいかも。
🍛あいがけカレーの贅沢
さあ、完成しました。桑名スタイルあいがけカレー。どっちからいこうかな。
まずは軽めに仕上げたポークにします。お肉は薄切り、玉ねぎと、しめじの存在もしっかり残ってます。
ソースにとろみをつけていないので、さらりと味わえる感じです。スパイスカレー的な印象になりました。
続いてビーフ。こちらは濃厚。牛肉の赤ワイン煮込みをつくって、そこにカレー粉と粉で香りと味わい、とろみを加えたスタイルです。
これは、The欧風カレー。赤ワインのおかげか、酸味も感じますが、とにかくフォンドボーの旨味がしっかりとソースにいきわたってます。そしてお肉もごろごろ。食べ応えのあるカレーに仕上がりました。
個人的にどちらが好きかといわれると、やはり懐かしいビーフかなと思いますが、けっこう濃いので、交互に食べるポークの爽やかさも捨てがたい、いいバランスでした。
日本カレー界のヘソ、桑名には東西両方の味をひと皿で楽しめる、こんな贅沢なカレーがありました。
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