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被災地に訪れる現実を知る

2011年に起きた東日本大震災、2024年に発生した能登半島地震、そして次に起こると囁かれている南海トラフ地震。

地震は、大きな揺れやその後の余震、沿岸部だと津波の被害など甚大な被害を引き起こします。

地震による被害だけでなく、被災地では混乱に乗じての窃盗や詐欺、性犯罪などが横行するするそうです。自身も被災し、生きるために仕方なく犯罪に手を染めてしまう人、現地の状況を知ったうえで犯罪を起こす人などさまざま。

本書「海神」(染井為人 著)では、そんな被災地で起こる災難について書かれた物語です。

テレビやメディアなどでは地震による被害の大きさを大々的に報じていて、そちらにどうしても気をとられてしまいますが、あまり大々的に報じられない陰の部分を知ることができる作品でした。

小説ではあるものの、被災地で起こるリアルを疑似体験できます。


〇ざっくりストーリー

復興支援のために天ノ島を訪れた遠田。巧みな話術と行動力で島民を信頼させ、NPO法人を立ち上げていくものの、復興支援金の横領が取り沙汰される。

島出身で記者を務める菊池一朗は、事実を認めない遠田の真相に迫ろうと奔走する。

未曾有の災害の最中、突如あらわれた島を復興させると息巻く謎の男、遠田。海難救助講師の経歴と人を惹きつけるスピーチで、島になくてはならない存在になっていく。

ボランティアとして被災地に訪れた女子大生を遠田のNPO法人に雇入れたり、参謀として外部の人間を迎え入れたり、地盤を固めていく遠田。

復興のためと語り、増えていく機会・車両、豪勢な慰霊会。

島民全員を巻き込んで起こる大騒動。遠田は果たして正義なのか悪なのか。

詐欺、窃盗、性犯罪など、被災地で起こる現実を映し出す物語。

〇被災地のリアルを疑似体験

被災地ではなぜ犯罪が横行するのかを知ることができました。

住む家や大切な人を何の前触れもなく失った人は、生きるだけで精一杯で助けを求めて藁にもすがる想いでいます。

そこを狙ってつけこんでくる犯罪。気づいたときには後の祭りで、どうしようもなく泣き寝入りしてしまうパターンも多いのだとか。

小説のなかでは、悪いのは犯罪を犯した人であるのに、マスコミに面白おかしく取り上げられてしまった結果、被害に遭った島民たちに責任があるという世論にさらされます。

復興支援金という税金を横領されたという点で、なぜ見破れなかったと批判も相次ぐようになるわけですが、特殊な状況におかれている被災者視点で考えると、やるせない気持ちでいっぱいです。

震災後にはこんなことも起こるのだと、疑似体験を通して感じれました。


胸糞悪い出来事の数々。

一方で復興に向けてひたむきに頑張る島民やボランティアの人々、これからの時代を生きていく若い世代の小さな希望の光を感じられるのは、読者にとって、物語の救いどころのように思います。

フィクションであるものの、被災地で起こる犯罪の数々を取り入れた作品なので、現実を感じられる作品でした。

興味ある方はぜひどうぞ。

Audibleでも聴けます。

最後までお読みいただきありがとうございました。


おしまい。

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