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秋の鳴子温泉湯治①【往路~板室温泉勝風館へ】

 9月初旬、都内大学病院にてー


医師 「10月から、総合内科にも罹ってください。うちの科と併診」
   「あなたの病気、線維筋痛症(FM)だけじゃないのよ。FMはこんな血液の異常は出ないから」
私  「…ですよね」
医師 「あなたの身体は本当に難しい。今まで見たことないよ」
   「特にビタミンB12欠乏症は、胃袋を全摘出した人が10年後になるレベルだから」
私  「宿業しゅくごうです。まったく、長い闘いで」

 如何にも研究者という風采で、忌憚なく物事を云う血液内科の担当医。
患者によっては相性を選ぶだろうが、界壁なく話が出来るこの医師を私は割と信用している。

 既に断定されている線維筋痛症は合併症を伴うことも珍しくない。
採血の度に検出される異常値、貯蔵鉄に血清補体価、抗核抗体にCPKの乱高下。そして慢性的な低白血球はFMとの因果関係はない。身内にも指定難病者が二名いるため、疑わしき膠原病の調査は続いている。

私  「2年前に倒れた時からは、少し治まっては来ているんです」   
   「細かい発作と激痛は勿論ありますが、救急車で運ばれるようなことはないです」
医師 「それは数値にも出てる。前はもっと凄かったからね」
私  「湯治に出ている時はやはり楽で、発作もないです。まあ、メンタル的なものも多分にあるとは思いますが」
医師 「そうだね。引き続き、気を付けてね」
私  「ではまた来月、行って参ります」


 いつからか大型化した中秋の連休、飛び石を休暇で接続すれば9日間。
流石に仕事の都合上全てを休みにはできないが、中日にテレワークを挟みつつ、私は湯治ワーケーションに出た。聖地であり、ホームでもある鳴子温泉郷「川渡温泉」を目指してーー


 
 自宅の埼玉から鳴子温泉までは400キロ強。長時間の運転は痺れや激痛が出るため、私の身体では一日では到達できない。通常、中間地点近くの福島県内の宿で前泊を噛ませる。

 理想は郡山よりも上。「月光温泉クアハイム」や、暑い時期は温湯がある磐梯熱海、冬場は激熱の飯坂温泉などが理想的だ。初日でギリギリまで宮城県まで寄せておき、2日目の移動を軽くしておく。13時チェックインの鳴子の宿に、出来れば受付開始と共に根城を張りたいのだ。

 だが旅の草稿を練り始めた段階で県民割の延長が決まり、今回の前泊は隣県の栃木県に。宿代が実質半額近くなるので使わぬ手はない、後半のドライブが長くなるのは致し方なし。
 
 東北道のラインで療養に向く温泉地と言えば、私の中で筆頭は塩原温泉郷と那須湯本の中間に位置する「板室温泉」だ。
初訪から十年近く経つだろうか、歓楽街の要素は皆無で、山紫水明のこの地には定期的に骨を休めに行く。

 和の趣の小さい宿、畳にゴロン。清流の音と野鳥の声が遠くに聞こえる。柔らかな湯触りで、優しい石膏臭の香に抱かれる。車で数分、木ノ俣園地の林道。コバルトブルーの渓谷を歩けば、忽ち塵界からの解放。

 埼玉県南の私の自宅から2時間程度で行ける山の療養温泉地として、湯宿温泉(群馬)、少し離れるが湯岐温泉(福島)と並び重宝している板室温泉。宿泊はいつもの「あったか~い宿 勝風館」。

 家庭的で美味しい食事、素晴らしき湯、ご家族の温かい歓待。
本丸である鳴子温泉の前座に使うには、あまりにも豪奢な宿。実はこの場所で、どうしてもお会いしておきたい人物がいたのだ。

つづく

                           令和4年9月17日

毎回利用する宿 「あったか~い宿 勝風館」
静かな温泉街 川の音が聞こえます
朝散歩 那珂川の支流湯川
木ノ俣渓谷 この日は曇り
晴れているともっとブルーに
30分程の散策路が整備されています
今回はこちらで2泊 中日は仕事
Wi-Fiも強いです
宿からすぐ 美味しい湧水が出ています

<次回はこちら>

<板室温泉は以前にも詳しく取り上げています>

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