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春の東北湯治⑫【いざ下北半島へ 八甲ラジウム~姉戸川温泉】

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 温湯ぬるゆ温泉「後藤客舎」の女将さんの見送りを受け、向かうは下北半島。昨年8月、増富温泉三英荘のテレビに映ったあの豪雨災害。隔靴搔痒の日々から解き放つべく、いざ5年振りに下風呂温泉へ。

 下北半島は凹型の青森県の右上、同県だが出発した黒石市から3時間以上はかかる。恐らくむつ市から東側の海岸沿いはまだ復旧中で、片側通行のポイントもあると予想される。

 一日で運転できる許容時間を超えてしまい、一度三沢方面で立ち寄り湯で休息をとることにした。ちょうどここが中間地点であり、このエリアはモール泉の宝庫でもある。午前中に一カ所、三沢駅近くで昼食を摂り午後にもう一カ所、15時に下風呂に入るという算段だ。

 かつての湯巡りの際、烏の行水で「姉戸川温泉」「八甲温泉」「東北温泉」「ひばの湯ぽぷら」「李沢温泉」「あおば温泉」と回っている。鳴子や別府とも少し印象が違い、山梨に似ている印象か。ロードサイドに忽然と現れる「○○温泉」の看板。そのどれもが良質で、200~300円と格安だ。

 湯巡りの際にメモや写真を撮影するようになったのはこの2~3年。病で思うように身体が動かなくなってからだ。全て湯が良かった記憶があるが、やはり記録を取らなかったことは今になって後悔している。因みにあおば温泉は既に廃業してしまったようだ。

 全国的にも浴場や旅館の廃業は伝え聞いているが、特に多いのが青森。どこも後継ぎがおらず、自分の代で閉めるという話は噂でもしばしば聞いている。 
 「もういつなくなるか分からない」、全国の温泉ファンの心底には、青森の共同浴場に対して近しい思いがあるのではなかろうか。


 多士済済のモール泉群の中から立ち寄りを決めたのは、「八甲温泉」と「姉戸川温泉」。前訪の記憶で、より印象に残った2軒を回る。最初に寄ったのは手前にある八甲温泉。田園風景の中、角地にその姿を捉えた。

 あの時と全く変わっていない玄関、家主は旅館とドライブインを兼業しており、番台には誰も座っていない。こちら宿泊はなんと2食付きで4,500円だという。昔はこの価格帯でも探せば見つかったと聞くが、現代ではこの値段の宿を見つけるのは困難だろう。

 Ⅼ型の浴槽には東京蒲田や東鳴子などで見られる黒湯。表層には油膜が張るように泡が立ち、湯口から排水の方へゆっくりと流れている。見事な油臭を纏い、熱湯にも拘らず全身に気泡が付いた。
 ガス成分は熱に弱いため、通常泡付きが見られるのは温湯が多い。この熱さでの泡付きは鮮度の良さを意味する。
 素晴らしき浴感、「青森強し」を印象付けるにはこの上ない一湯だった。

 
 三沢駅へと向かいお次は昼食。ここは寺山修司ゆかりの地、9店舗の「寺山食堂」がある。屋号は全て別だが、故人の好んだメニューが各店舗でいただくことが出来る。

 私が飛び込んだのは、元祖寺山食堂の跡地でもある三沢駅前の「きらく亭」。三沢名物バラ焼を注文した。玉ねぎと牛バラ肉を甘辛のタレで焼いただけだが、これが驚くほど旨い。鉄板焼きなので最後までアツアツ、久々ご当地グルメを喰らい大満足だ。

 少し腹が重いが、続けて「姉戸川温泉」へ。こちらもあの時と変わらぬ番台、以前200円だったが250円に値上がりしていた。物価がこれだけ上がっているのだから仕方あるまい。
 
 写真撮影交渉するも、「汚いからやめてよ」と館主に制される。
「このボロがいいんです」、三拝九拝すると何とか許諾を得た。こちらも如何にもというモール感。
 褐色がかかった薄グリーンの源泉はヌルヌル感あり。温度も40度ほどで、一時間程浸かっていた。ケツがなければいつまでも入っていただろう。青森でおすすめは?と問われると、真っ先にこちら姉戸川温泉も候補に挙がってくる。 

 さあ、後は北上するのみ。本旅の目的を果たすべく下風呂へとハンドルを切った。

                           令和4年4月28日 

八甲温泉 旅館とドライブイン併設
2食付き4,500円は興味深い いつか来れるだろうか
八甲L字浴槽 黒湯油臭
アワアワ~
三沢駅前きらく亭 長嶋茂雄氏の写真が沢山ある
バラ焼 ご飯おかわりも自由っぽい
袖型看板が 蛍光灯だろうか
ボロ看板はLEDよりも蛍光灯の方が映える
姉戸川温泉 ※撮影許可を得ています

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