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「推しがいるから頑張れる」の反対は?

「効率よく生きたいなら、生まれてすぐ死ねばいい」

なかなかフックのある言葉ですよね。
本屋さんの新刊コーナーに積まれていたのが視界に入り、帯に書かれたこの一文をきっかけに読んでみました。

著者のSHOGENさんは、たまたま目にした一枚のペンキアートに強烈に惹かれたことがきっかけで、7年勤めた化粧品会社を辞めてアフリカへ行ったというバイタリティあふれる人です。
単身向かったアフリカで得た縁をきっかけに、タンザニアにある「ブンジュ村」という、人口200人の小さな村に滞在することになります。


生活様式に始まり、様々な点から日本との違いが語られるのですが、私の中で一番印象的だったのは「自分の休息を削ってまで仕事を優先するのは恥ずかしい」という価値観でした。

ブンジュ村は日が暮れるのがとても早い。電気が乏しい村だから、日が明るいうちしか家族の顔を見ることができません。だから、少しでも長く家族の顔を見るために、みんな早く帰るのです。
どんなに仕事に誇りを持っていても、それ以上に大切なものが何かを知っています。まず自分自身を、そして目の前の人や家族を最優先にしているのです。

『残業しない理由』の章より引用


ちょっと意地悪な質問をしてみます。
電気などのインフラが整えば、そういう価値観も廃れるのでは?

あくまでも推測ですが。
読了して、私は「インフラが整ったとしても、この村の人々の価値観は変わらないだろう」と思いました。
理由は「まず自分自身を、そして目の前の人や家族を最優先にしているのです。」の「まず自分自身」にあります。


・自分よりも周りを優先すること
・周囲のために自我を抑えること
・大切な人のために泥を被ること
などが称賛され、その逆の行為が非難される様は、実生活でもフィクションでも具体例を挙げられます。

もちろん、唯我独尊の自己中心的なふるまいなら、非難されてしかるべきです。
けれど本書で語られる、ブンジュ村の人々の価値観に根付いている「一番大事なのは、まず自分を大切にすること」には、そういった横暴さはありません。

ブンジュ村の子どもが、小さい時からお母さんに教えてもらっていることがあります。それは、
「自分が、自分の一番のファンでありなさい」
ということ。
(中略)
「自分が、自分の一番のファンでありなさい」とは、自分に愛を吹き込む行為です。ある時、村長が言いました。
「愛が注がれたものからしか、愛は与えられないんだよ」
自分自身を愛で満たしていれば、自分の行為のすべてに愛が宿る、というのです。

『自分が、自分の一番のファン!』の章より引用

この部分を読んだ時。
推し文化の真反対の価値観だ。
という感想が、脳裏に浮かびました。

・推しが何より大切
・推しのことが好きな自分が好き
・つらい日々でも、推しがいるから頑張れる

ここまで極端ではなくとも。
「自分自身を愛で満たすために、自分以外の力を借りる」ことを行っている人は少なくない。


どちらが良くて、どちらが悪い。
そういった安直な判断ではなく。

大前提として、利己ではない方法や考え方で。
自分で自分を満たすことや、自己肯定感を上げることに対して、もう少し意識を向けてもいいんじゃないか。
そんなことを思いました。

違う文化に触れられるのもまた、本の良いところです。
今日も良い日になりますように。


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