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洋 服 が く れ た 魔 法 .*・゚
表紙を飾る女性に、目を奪われました。
つばが顔の倍ほどに広い女優帽、
厚縁のウェリントン型メガネ、
ストールもジャケットも全て
品のある黒で統一されています。
一層際立つ白い肌に
さっと引かれた真紅のルージュ。
アイラインでキリリと縁取られた瞼の奥には
ペルシャ猫のような淡いブルーの瞳です。
大粒の耳飾りと胸元のブローチ、
バングルに指輪、
アクセサリのゴールドがリンクして
一層エレガントな雰囲気。
*
女性は、
七十に手が届くといった年齢でしょうか。
白い肌には確かにシワがあり、
手には骨っぽさが目立っています。
母よりも年上のその女性。
それでも
彼女を見て私がいちばんに抱くのは
その堂々とした美しさへの
憧れでした。
*
本のタイトルは
「 advance style 」
60歳から100歳までの女性を被写体に
ニューヨークの街で撮ったスナップを集めた
写真集です。
ページをめくる度に現れる
ファショナブルな女性たちを見ていると
いつの間にかこちらまで
わくわくと楽しい気持ちになってゆきます。
・
白肌にグレイヘア、
藤色のアイシャドウとロイヤルパープルの手袋を
合わせてチャーミングに微笑む女性。
褐色に透けるサングラスから
凛々しい眉が浮かぶ横顔。
白に黒のメッシュが入った髪を
後ろでひとつに纏め、
耳に貝殻を模したイヤリングをつけた
遊び心のある女性。
オレンジの短髪に
サラリと涼し気な白シャツ。
ブレスレットとピアス、ブローチを
瞳の色と同じ、オリーブグリーンで揃えた
色使いの見事な女性。
・
彼女たちは皆、
自分の愛するファッションを楽しみ、
そのファッションを纏う自分を愛している、
そんな風なのです。
僕は、“old”という言葉をネガティブに考えたことはない。年をとっているということは、だれよりも経験豊かであり、賢く、アドバンスしている、つまり人生の上級者なのだから。ここに出てくる女性たちは、社会が描く「年をとった女性」というイメージにひるまない。彼女たちは皆、若々しい心とスピリットをもっており、個々のスタイルと創造力で自己表現している。
いくつになってもお洒落心を胸に、
ファッションを通して
自分の大好きな世界を表現する姿が
どんなに人を若く、いきいきと、
魅力的に見せてくれるか、
彼女たちから教えてもらいました。
*
グリーンのカーディガンと
黒地に白の水玉スカート、
それから白い靴下に黒のバレエシューズ。
色みをしぼり、今日の主役は
明るく鮮やかなグリーンです。
あのマダムたちを見ていたら、
私ももっと自分の好きなお洒落を
楽しみたくなりました。
「素敵な色だね。すごく、春っぽくてきれい」
「え、あ、あの、ありがとうございます!
ちょっと、色味のあるものが着たくなって」
終業後の更衣室、一緒になった先輩の
思いがけない言葉が
嬉しくて、嬉しくて、
頬の上でぱあっと体温があがりました。
この服を選んだ自分と
この服を着ている自分が
昨日の自分よりちょっと好きかもしれない、
そんな気がして、
お洋服が秘めているステキな魔法を
かけてもらったようでした。
これからもあたたかい記事をお届けします🕊🤍🌿