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小雨の朝と社会人


小雨の降る朝でした。

車での通勤中。赤信号で止まっていると
目の前の横断歩道を
ひとりの女性が横切っていきます。

傘をさしながら歩くその方は
ズボンのスーツに、低いパンプス。
前髪は、七三に分けてぴっちり横に流し
長い髪を後ろでひとつに結っています。

気持ちのよい身だしなみです。
この方もいま、出勤するところなのでしょう。

雨の中でも
シャキシャキと歩くその方の姿に
ふと思い出したのは
数年前に勤め先で受けた
新人研修のひとコマでした。

息子が中学生のころまでは
『人を見た目で判断してはいけないよ』
と教えていたんです。

でもね、高校生になって以降は
『人は見た目で判断されるからね』
と教えるようになりました。


清々しい話し方をされる
女性の方でした。
50代で、総務課の課長を務めていらして
私はその方に、
新人研修をしてもらいました。

もちろん、人は見た目ではないというのは
本心ですし、
息子には、一方向から人を決めつけない、
そんな視点を持って欲しいと思います。

じゃあなぜ、言うことを
そっくり変えたのかというと
それは彼が、大人の仲間入りをする年齢になったからです。
大人として「見られている」という意識を
少しずつ持ってもらおうと思ったんですね。


周囲から「細かくて厳格な人」と
評されていた方で
私も、同期のメンバーも
ずいぶん緊張していましたけれど
その声にはたしかに、
やさしさを感じました。

社会というのは、実際のところ
皆がみな、寛容にものごとを捉えてくれる人ばかりではありません。
自分が相手を見る目線と
相手が自分を見る目線は違います。
社会人として働くということは、
一人前の大人として
評価される対象になるということです。

ひとつことわっておくと、
ここでいう見た目というのは
容姿の美しさというんではなくて、
身だしなみの類いのことです。


この人に任せてよいか、
この会社を信頼してよいか、
相手の方は些細な情報、つまり
身だしなみや話し方
ちょっとした言動からも判断されます。

ですから、社会人として働く皆さんには
身だしなみはもちろん、
そういった細部に垣間見える
働く姿勢を見られているということを
意識していただきたい。

まだ働くということに漠然としたイメージしか
持てないかもしれませんが、
この意識はぜひ、これからも
こころの片隅に置いていてください。


なんだか、カタイことばかり
話してしまいましたけれど
皆さんなら大丈夫です。
みんなで、頑張っていきましょう。

あれから数年が経ちました。

いま、一応社会人として毎日を送っている自分が
あのとき思い描いた社会人に
なれているだろうかと考えると
正直なところ、心許ない気もします。



私はその後、勤め先を移ってしまったため
その方とお会いする機会は
もうありません。

ですけれど、
後にも先にも、あんなふうに
働くことへの心得を
きちんと自身の言葉で伝えてくださった
格好良い社会人を
私はほかに知りません。





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