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【ロードバイク】プロのオーバーホールをもっと身近に!■2023年04月29日

広島県広島市にある『動く』自転車屋【サイクルサービストグト】のnoteをご覧いただきありがとうございます。

『快適長持ち系自転車安全整備士』店長のノーリーです。
明けましておめでとうございます。

2023年初のブログはオーバーホールについての投稿です。

■人も愛車もリフレッシュが必要

さて、自転車には自然治癒力が無いので、生物よりもケアを意識しなければなりません。
そして自転車に対しての究極のケアとも言える作業がオーバーホールではないでしょうか。
車体を分解・洗浄・組立・調整を行うことで、愛車がシャキッとします。
オーバーホールをすると新車で購入した時以上のパフォーマンスを発揮することも決して少なくありません。
使用していく過程で各部品の馴染みが生じ、それをまた適切に組み付けて調整するからです。
工賃や部品代等もそれなりにかかりますが、ついでのカスタマイズも楽しめます。
気軽に車体買い替えがしづらいご時世ですから、今ある愛車を大切に乗り続けるという選択も素敵なことです。

↑今回の車体は、以前このブログに登場した【GIANT】(ジャイアント)のDEFY(ディファイ)です。

■当店の整備作業はここが違う

当店ではユーザーさんのご要望をしっかりとヒアリングします。
安全上の問題や物理的な問題が生じる部分については進言しますが、基本的にはユーザーさんの想いに寄り添うスタイルです。
使うパーツや作業内容それぞれにメリットもデメリットもあるので、ユーザーさんにもきちんとご説明します。
当店の常連さんからも、このヒアリングとご説明は好評です。
その上で作業も細かく丁寧に行います。
長くなりますが、写真とともにご紹介しましょう。

※写真の順番と実際の作業の順番が異なる部分もあります。

まずは分解です。
早速ペダルが固着していたので、ワコーズのラスペネを使いました。
固着したネジにはオススメです。

これでペダルを外し、状態も確認できました。

オーバーホールでは消耗品も一緒に新品に交換するのがベストですが、部品の納期がかかりすぎることもあったり、ユーザーさんの事情でそのまま使うこともあります。

もちろん状態によりますが、使えるものは再利用することも多いです。

駆動系には特に優秀なケミカル用品を使います。
その上で何度もブラッシングをするので作業には根気が必要です。

フレーム全体が積年の汚れを纏っています。
このあたりも何とかキレイにしたいものですが、それは後ほど…。

スピードメーターになるサイクルコンピューター(サイコン)は有線式。

センサー部分もしっかりと掃除しておきました。

フロントディレイラーを正しく機能させるためにかかせないバックアッププレートも取付位置を見直さなければなりません。

レバー側のシフトアウターケーブルのエンドキャップはノーズ付きではないものが使われていました。
これが絶対にダメというワケではありませんが、良いともいえないのでノーズ付きに交換します。

クランクキャップを抜いてみると、ここも汚れが溜まっていました。

拭き上げてキレイにしていきます。

フロントチェーンリングとクランク等も徹底洗浄するために分解します。

油汚れに強い洗剤を当店にて販売しております。
気になる方はぜひお気軽にお問い合わせ下さい。
汚れが浮いてくるのは面白いものです。
洗剤とブラシの合わせ技で洗浄していきます。

フロントフォークも洗っておきましょう。

キャリア用ダボ穴に埋め込まれた栓は固くて脆くなっていました。
このままでは具合が悪いので抜いていきます。

つまむ余地がない箇所もありましたが…

これで引っこ抜いて解決できました。

完全にフレームだけの状態になったら各ネジ部の精度を高めます。

こんなところも

こんなところも手抜きはしません。

フロントディレイラー取り付け台座を固定するところまで、ネジの精度を上げます。

ネジ山がしっかりしているのが見えますか?

すぐには使わなくても、後々リアラック(キャリア、荷台)を付けるかもしれないので、今この時点で妥協するわけにはいきません

ケーブルガイド固定用のネジも
やっちゃいましょう。

BBを抜くときにかなり固かったので、ここもしっかりとネジの精度を上げたいものです。

専用工具で整えていきます。

するとバリ(金属片)がこんなに出てきました。

ネジ山はキレイになりましたが、まだまだBBシェルの作業は終わりではありません。

使用するBBにもよりますが、今回の場合はBBシェルをフェイシングします。

削り進め過ぎてしまうとシェル幅が変わって不具合が生じるので、慎重に作業を進めなければなりません。

しっかりと削れています。

このあたりはプロに任せるべき作業と言えるでしょう。
当店ではJISタイプのBBシェルのフェイシングだけも承ります。

キレイにフラットになりました。

フレームをしっかり洗ったら、ユーザーさんのご希望次第でガラス系コーティングも行います。
完全に落とせない汚れもあり、キズはキズのままですが。

フロントフォークもかなりキレイになりました。

続いてホイールの振れ等も調整します。

リムもハブも洗浄済みです。

再利用できそうなものならそうしますが、このリムフラップは劣化が著しく再利用はオススメできません。
代わりにリムテープで仕上げます。

大事な記号は隠さないように…。

リムフラップにも寿命があります。

これは要交換ですね。

カセットスプロケットのスペーサーのロゴや文字の位置にも気を使います。

本来ならここまでしなくても問題はありませんが、私がそういう性分なんでしょう。

ホイールのセンター出しも振れ取りも完了しました。

一旦外した部品もどんどん洗浄していきます。

こういう小物もピカピカに!

ヘッドパーツも普段は掃除ができない部分です。

オーバーホールでピカピカになります。

このゴムが劣化していないことを祈りつつゴムを外してみると…

セーフ!
これはまだ使えますね。

チェーン洗浄は特に大変です。
ディグリーザーを浸透させてウエスで拭き取り、パーツクリーナーも併用してブラッシングを繰り返し、徹底洗浄します。

チェーンルブ(オイル等)は車体の用途によって選ぶことが大切です。

事前にヒアリングした『自転車の使用目的』に適したものを選定します。

↑はシフトケーブルガイドです。

フロントディレイラー取り付け台座も組み付けます。

ディレイラーハンガーも今回は再利用予定です。
芯出し作業でどうなるか…。

↑はキレイになったヘッドパーツです。

フロントフォークとともにヘッドパーツも組み付けます。

こうしてみると自転車って感じになってきましたね。

ユーザーさんの思い入れがあるバーテープはチェーンステイプロテクターとして再利用しました。

この方法を採用する場合は、バーテープを巻き付ける向きに注意しなければなりません。
また、ただテープを『巻くだけ』ではなく、きちんと『巻き付ける』ことが重要です。

フィニッシュは余った化粧テープを採用しています。

ディレイラーハンガーの芯出し作業です。

手曲げ修正作業ですが、これはどんなに慎重に作業してもディレイラーハンガーにトドメを指すこともあります。
ディレイラーハンガーが曲がったら基本的には要交換です。

今回もユーザーさんにリスクをご説明の上でトライしてみました。
その結果、一旦は無事に芯出しも終わったのでこのまま組んでいきます。
ただし、予備のハンガーは持っておいた方が良いでしょう。

シートクランプの隙間にも砂が入り込んでいたので洗浄済み。

ハンドルバーもテープの跡がベタベタしていましたが、

それもこの通り!

シートチューブ内部にうっすらとグリスを塗って固着防止効果を狙います。

ブレーキ本体も徹底洗浄!

↑のブレーキシューはアップグレードします。

しっかり洗浄したらリンク部分に注油もします。

このローラー部分も同様です。
使うオイルによっては逆効果になることもあるので気をつけましょう。

カートリッジタイップのブレーキシュー。

ブレーキシューの受け側にもブレーキダストが溜まるので、洗浄が必要です。

かなりキレイになりました。
これに新品のシューをセットします。

いろいろな部品で構成されているのはブレーキ本体もまた同じことです。

洗浄できる部分はとことんやっちゃいます。

フロントディレイラーも丸洗いして、

新品のような輝きを取り戻しました。

リアディレイラーも分解して洗浄する…だけでなく、

ダメージを受けてバリが出た部分をヤスリで整えます。

シマノのRD-5800もシフトインナーケーブル出口にライナー管がありますが、お持ち込み時点ではボロボロになっていました。
使っていると摩耗するので仕方が無いことです。
なので今回は自作して補修してみました。

↑分解洗浄、グリスアップも済ませたリアディレイラー。

サイクルサービストグトでは、ユーザーさんの使用環境等を考慮してBBシェルへのグリスも使い分けます。

BB本体にはまた別のグリスを使いました。

専用工具で確実に固定。

BBもかなりキレイになりました。

クランクキャップを適切な力で締め付け、

固定用ボルトも適正トルクで締め付けます。

ブレーキインナーケーブルにも長持ち処理をしています。
ここで使うケミカル類も1種類とは限りません。
用途によって変えます。

汚れていたら見落としていたであろう、アウターケーブル。
被覆に割れが生じていました。

アウターケーブルはただ単にカットしただけではありません。
ここから切断面をヤスリで整え、ニードルでライナー管を整えます。

シフトインナーケーブルには違うグリスを。

フロントディレイラー用のバックアッププレートも洗浄して付け直しました。

ペダルの固定時には専用のグリスも使います。
こうして1台の自転車に4種類のグリス、さらに3種類のオイルを使いました。

■完成!

いくつか写真を取り損ねましたが、キッチリ仕上がりました。

ブレーキゾーンだけでなくリム全体も洗ってあるので、素手で触っても手が汚れません。

ブラチラ(ブラケットのチラ見え)も無し。

ロードバイクの顔とも言えるバーテープはできるだけ美しく仕上げたいところのひとつですよね。

ビフォー
アフター

全体的にこびりついていた汚れもここまで落とすことができました。

タイヤも完全に丸洗いした上で、刺さっていた小石等も取り除いてあります。

ビフォー
アフター

駆動系の部品は交換ではなく洗浄しただけです。
見違えるほどキレイになっています。
作業を担当したメカニックとしては達成感を得られる部分ですね。

チェーンがほとんど伸びていなかったのでスプロケット同様、今回は交換せずに洗浄して再利用することにしました。
オイルはチェーン全体にしっかりと行き渡り、動きは非常に滑らかです。

キズは残っているものの、汚れは一旦無くなったリアディレイラー。
将来的にはコンポもアップグレードされるかもしれません。

各インナーケーブルの末端処理は当店オリジナルの技法『MEF(マーブルエンドフィニッシュ)』で仕上げさせていただきました。
同じカタチは2つと無い、オリジナリティーを出すにはピッタリの方法です。
遊び心も追加されますね。

有線式のサイコンは断線すると時計としてしか使えません。
そうならないように、ルーティングにはいくつか保険をかけてあります。

トップチューブの真ん中あたりはもともとブレーキインナーケーブルのみが通っていました。
しかし、自転車を担いで階段を昇降するとのことで、そのままだとトップチューブにキズが付きやすくなります。
手にもワイヤーが食い込んで痛いとのことなので、ダミーアウター工法をご提案し、このように仕上げさせていただきました。

アウターケーブルの長さによってブレーキタッチも変わります。
元々は少し短めでゴリゴリ感があったので、長さを最適化して軽いレバータッチを取り戻しました。

ビフォー
アフター

これ以上は塗装が傷むんじゃないかってところまでは汚れを落とすことができました。

ハブももちろんキレイになっています。

ビフォー
アフター

フロントフォークも見違える仕上がりです。

リフレッシュした愛車とともに素敵な年明けをお過ごしいただければ幸いです。

■お預かりからお届けまで

当店では有料にて自転車をユーザーさんの元へ受け取りに伺い、さらにユーザーさんの元へお届けするサービスもご提供中です。

「部活が終わる頃には自転車屋が開いてないんスよね…。」
「仕事が終わる頃には自転車屋も閉まっちゃてて…。」
「クルマが無いから壊れた自転車を運ぶのが大変で…。」
そういうお悩み、お困り事は当店が解決できるかもしれません。
事前にご予約が必要ですが、大型連休でも深夜でも早朝でも対応可能です。

■自転車のご依頼・ご相談等はメールでお気軽にどうぞ↓

当店は出張修理等が多いため、決まった店休日や営業時間という概念がありません。
他店様が営業していない時間帯でも予約制にてご依頼等を承ります。
また、当店にて自転車の販売(防犯登録含む)も行っておりますが、他店様にてお買い上げの自転車の組立や点検及び調整、修理やカスタマイズ、オーバーホール等のアフターケアも大歓迎です。
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※運転中や作業中等ですぐに返信できない場合もありますが、チャット感覚でお気軽にご利用下さいませ。

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