飯塚 信夫(神奈川大学経済学部教授)

日本経済論、経済統計。ホームページ(https://todobuono.amebaow…

飯塚 信夫(神奈川大学経済学部教授)

日本経済論、経済統計。ホームページ(https://todobuono.amebaownd.com/)、東京財団政策研究所のEBPMに資する経済データの活用プログラム(https://www.tkfd.or.jp/research/detail.php?id=3839)もよろしく

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2023年に読んでいただいたnote

 2018年12月にnoteを始めて以来、5年強が経過しました。1万人近くのフォロワーをいただき、大変ありがたく存じます。また、この1年で多くのビュー、スキをいただきと感謝申し上げます。  2023年に多くのビュー数をいただいた上位のnoteを紹介させていただきます。  ビュー数で断トツの1位になったのは「一般労働者の所定内給与増加率が2%を超えたことに注目したい~2023年5月の毎月勤労統計(速報)」でした。2023年は賃金動向に注目が集まりましたが、一般労働者とパートタ

    • 2024年度はエネルギー価格中心の物価上昇になるか?~2024年3月の消費者物価

      昨日(19日)、2024年3月の消費者物価が公表されました。消費者物価の前年同月比上昇率は2月の2.8%から3月は2.7%と0.1ポイント縮小しました。一方、日経朝刊はコストプッシュ圧力が今後の消費者物価を押し上げるリスクを示しています。 生鮮食品及びエネルギーを除く総合に注目  消費者物価の代表的な指数は「総合」「生鮮食品を除く総合」「生鮮食品及びエネルギーを除く総合」の3種類あります。金融政策では、景気とは無関係に天候要因などで変動する「生鮮食品を除く総合」が注目され

      • 2024年以降の指数を使ってはダメ‼~毎月勤労統計調査

        ちょっと刺激的なタイトルになってしまいました。毎月のように「毎月勤労統計調査」(厚生労働省)の速報値の動向を書かせていただいているのに、「こんな変なことが起きてるんかい」と今頃気が付きました。 正確に言うと、経済分析などで「毎月勤労統計調査」の賃金、労働時間関連の指数を使う際は、2024年1月以降の値は使ってはいけないというのが結論です。 以下、その理由を説明していきたいと思います。 指数で計算した前年比と公表された前年比が合致しない‼  下の表をご覧ください。毎月勤労統

        • 先月の経常収支黒字急増は幻だった?~2024年2月の国際収支

           昨日(4月8日)、2月分の国際収支統計が公表されました。今朝の日経朝刊では旅行収支の黒字が倍増したことが注目されていますが、主役はそれではありません。いつものように、季節調整値と原系列の前年同月差に注目しながら中身を確認していきたいと思います。 季節調整値で見ると経常収支黒字は急縮小  2月の経常黒字は季節調整値でみると1.4兆円。急増した2024年1月から一転して縮小しました。2024年1月(2.7兆円)からの黒字縮小に最も寄与したのは第一次所得収支の黒字縮小(1月:

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          実質賃金上昇率のマイナスが過去最長に並んだけれども…~2024年2月の毎月勤労統計

          「毎月勤労統計調査」(厚生労働省)の2024年2月分が本日(8日)公表されました。日本経済新聞夕刊は、実質賃金上昇率(▲1.3%)が23ヵ月連続のマイナス(2022年4月~2024年2月)と、リーマン・ショック前後の2007年9月~09年7月以来に並んだと報じています。  しかし、リーマン・ショックの時期は23ヵ月中18ヵ月、名目賃金上昇率もマイナスでした。名目賃金上昇率がプラスで、物価上昇率がそれを上回るために実質賃金上昇率がマイナスになっているのとは、だいぶ事情が異なりま

          実質賃金上昇率のマイナスが過去最長に並んだけれども…~2024年2月の毎月勤労統計

          延べ宿泊者数は6ヵ月連続で2019年同月超え~2024年2月の宿泊旅行統計調査と2024年1月の出入国管理統計

          観光庁の「宿泊旅行統計調査」の2024年2月分が本日(3月29日)公表されました。「出入国管理統計」の「短期滞在」の入国外国人の動向ともにポイントをまとめたいと思います。 2024年2月の延べ宿泊者数、前年同月比17%増  2024年2月の延べ宿泊者数は4814万7890人泊であり、前年同月比で17.0%増加しました。2024年1月の15.6%増に続き、2ヵ月連続の2ケタ増です。外国人観光客の寄与が13.4%と、2024年1月の13.1%から若干拡大し、日本人観光客の寄与

          延べ宿泊者数は6ヵ月連続で2019年同月超え~2024年2月の宿泊旅行統計調査と2024年1月の出入国管理統計

          【お知らせ】『第7回中長期経済見通し研究会』の開催報告を掲載いたしました

          私が参加している東京財団政策研究所の研究プログラム「エビデンスに基づく政策立案(EBPM)に資する経済データの活用」の一環で実施している、中長期経済見通し研究会の第7回の開催報告をホームページに掲載いたしました。主要シンクタンクで経済見通しを担当するエコノミスト6人が日本経済の先行きについて議論しております。ご高覧いただければ幸いです。 この開催報告の掲載をもって2年半にわたった研究プログラムの成果発信が終わりました。下記のリンクで成果をまとめていますので、こちらもあわせて

          【お知らせ】『第7回中長期経済見通し研究会』の開催報告を掲載いたしました

          未払利息は辛かった(涙)~変動金利型住宅ローンの思い出

           日本銀行がマイナス金利政策を解除したことで、変動金利型住宅ローンの金利がいつから上がるのかに注目が集まっています。日経電子版の下記の記事でも、変動金利型住宅ローンの金利の金利の決定方法などを詳しく解説しています。その中で気になるのが以下の記述です。 利息が毎月の返済額を上回ると、未払利息が発生する  上記の記述では、「金利が上がれば返済額に占める利払い部分の比率が増え、元金が減るペースが落ちかねない」とあります。元金が減るペースが落ちるだけならまだしも、元金が減らずに、

          未払利息は辛かった(涙)~変動金利型住宅ローンの思い出

          エネルギー価格の引き下げ寄与が急縮小~2024年2月の消費者物価

          本日(22日)、2024年2月の消費者物価が公表されました。消費者物価の前年同月比上昇率は1月の2.2%から2月は2.8%と0.6ポイントも拡大しましたが、日本経済新聞夕刊も報じている通り、政府の電気・ガス代の抑制策が影響しており、インフレ率が実勢として高まったとはいえないようです。 エネルギー価格のマイナス寄与が1.0ポイント縮小  総合指数の前年同月比上昇率を寄与度分解した下図をご覧ください。2024年1月から2月にかけて灰色の棒グラフで示したエネルギーの寄与度が1.

          エネルギー価格の引き下げ寄与が急縮小~2024年2月の消費者物価

          【お知らせ】『EBPMに向けた経済データの現状と課題』を刊行いたしました

           私が参加している東京財団政策研究所の研究プログラム「エビデンスに基づく政策立案(EBPM)に資する経済データの活用」が今月末で終了するにあたり、最終成果として『EBPMに向けた経済データの現状と課題』を刊行し、2年半の活動と成果を振り返りつつ、6人の研究メンバーが政策提言をとりまとめました。下記のリンクからご高覧いただければ幸いです。 なお、4月からは新しい研究プログラムが同じメンバーで始まります。今後も研究成果を発信いたしますので、引き続きどうぞよろしくお願い申し上げ

          【お知らせ】『EBPMに向けた経済データの現状と課題』を刊行いたしました

          前年同期比で見れば3四半期連続減速で変化なし~2023年10~12月期のGDP改定値

          本日(11日)、内閣府は2023年10~12月期の国内総生産(GDP)改定値を公表しました。日経電子版は季節調整済み前期比の動きに注目し、速報値の0.1%減(年率0.4%減)から0.1%増(年率0.4%増)へ上方修正されたことを報じています。私がnoteでかねて注目している前年同期比の動きをみると3四半期連続で実質GDP成長率は縮小しているという状況に変化ありません。 設備投資が上方修正、民間在庫が下方修正  GDP速報の改定値では、3月4日に公表された「法人企業統計」(

          前年同期比で見れば3四半期連続減速で変化なし~2023年10~12月期のGDP改定値

          法人企業統計に基づく労働分配率、基準を揃えて議論しましょう!

           少し前の記事ですが、3月5日の日経朝刊に興味深い記事が出ていました。4日に公表された「法人企業統計調査」の2023年10~12月期の結果を踏まえた記事で、中小企業(記事では、資本金1000万円~1億円の企業と定義)の労働分配率が低下し、賃上げ余力が高まっているというものです。  記事では、「中小企業の労働分配率は直近4四半期の移動平均で70.7%と、前年同期から1.4ポイント低下」と書いてます。ここで言う直近四半期は、2023年1~3月期から2023年10~12月期の平均と

          法人企業統計に基づく労働分配率、基準を揃えて議論しましょう!

          季節調整値で見ると経常黒字は直近のピークに近づく~2024年1月の国際収支

          本日(3/8)、2024年1月の国際収支統計が発表されました。日経は、資源高が一服して貿易収支赤字が縮小したこと、旅行収支が過去最大の黒字となったことなどに注目しています。いつものように、季節調整値と原系列の前年同月差に注目しながら中身を確認していきたいと思います。 第1次所得収支の黒字拡大が寄与  1月の経常黒字は季節調整値でみると2.7兆円。直近のピーク(2023年7月:2.8兆円)に近づきました。2023年12月(1.8兆円)からの増加に最も寄与したのは第一次所得収

          季節調整値で見ると経常黒字は直近のピークに近づく~2024年1月の国際収支

          賃金上昇率の加速は、特別給与のブレのせい?~2024年1月の毎月勤労統計

           昨日(7日)、毎月勤労統計調査の2024年1月速報値が公表されました。日経電子版は、実質賃金の減少幅が縮小したことに注目しています。名目賃金の上昇率が2023年12月から拡大した一方で、物価上昇率が小さくなったためです。ただし、賃金上昇率の加速は、特別給与の前年同月比のブレとみた方が良さそうです。以下、確認してみましょう。 1月の特別給与が2ケタ増って実勢?  就業形態計の現金給与総額の前年同月比は、11月(0.7%)→12月(0.8%)→1月(2.0%)と、確かに急上

          賃金上昇率の加速は、特別給与のブレのせい?~2024年1月の毎月勤労統計

          延べ宿泊者数は5ヵ月連続で2019年同月超え~2024年1月の宿泊旅行統計調査と2023年12月の出入国管理統計

          観光庁の「宿泊旅行統計調査」の2024年1月分が本日(2月29日)公表されました。「出入国管理統計」の「短期滞在」の入国外国人の動向ともにポイントをまとめたいと思います。 2024年1月の延べ宿泊者数の前年同月比、久しぶりの拡大  2024年1月の延べ宿泊者数は4787万9390人泊であり、前年同月比で21.2%増加しました。2023年12月まで10ヵ月連続で伸び率が縮小していましたが、2024年1月は久しぶりの拡大となりました。外国人観光客の寄与が14.7%と、2023

          延べ宿泊者数は5ヵ月連続で2019年同月超え~2024年1月の宿泊旅行統計調査と2023年12月の出入国管理統計

          出生数最少は、どれだけ”想定外”なのか?

           昨日(27日)、「人口動態統計調査」の速報値が公表され、外国人を含む2023年の出生数が75万8631人と前年に比べて5%減ったことが明らかになりました。日経新聞は28日朝刊で、足元のペースが続けば2035年には出生数が50万人を下回ると警鐘を鳴らしています。  一方、出生数など人口については、専門の研究機関である国立社会保障・人口問題研究所が、これまで数年ごとに見通しを推計してきています。最近の動向は、その見通しと比べて、どれだけ”想定外”なのでしょうか? 日本人に限る

          出生数最少は、どれだけ”想定外”なのか?