飯塚 信夫(神奈川大学経済学部教授)

日本経済論、経済統計。ホームページ(https://sites.google.com/…

飯塚 信夫(神奈川大学経済学部教授)

日本経済論、経済統計。ホームページ(https://sites.google.com/view/todobuono/)、東京財団政策研究所の研究プログラム(https://www.tkfd.or.jp/research/detail.php?id=3839)もよろしく。

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【お知らせ】マガジンを再編成いたしました

 2018年12月にnoteを始めて以来、コツコツとコラムを書いてきました。コラムは本務校や非常勤先の講義にも活用(参考資料として読んでもらうなど)しておりますが、本数がそこそこ増えてきて(現在:321本)、整理が必要になってきました。  従来のマガジンはいったん廃止し、「経済統計のよもやま話」関連で9個のマガジンを作成。そのほかに、分類しきれないコラムを集めた「その他のよもやま話」、お手伝いしている東京財団政策研究所での活動の紹介を集めた「東京財団政策研究所での活動」も含め

    • 「総合」を除き、上昇率高まる。主因はサービス?~2024年6月の消費者物価

       本日(19日)、2024年6月の消費者物価が公表されました。消費者物価(総合)の前年同月比上昇率は2.8%と5月の2.8%と横ばいでした。日銀の金融政策に関連して注目を集める生鮮食品を除く総合は2.6%上昇と5月の2.5%から伸びが拡大しました。エコノミストの皆さんの間で”日銀版コア”と呼ばれている消費者物価(生鮮食品とエネルギーを除く総合)の上昇率も2.2%も5月の2.1%から拡大しました。以下の日経記事が「今回の物価上昇は電気・ガスの押し上げ」と書いていますが、主因はほ

      • 季節調整値でみると経常黒字は前月から減少~2024年5月の国際収支

         昨日(7月8日)、2024年5月分の国際収支統計が公表されました。日経夕刊では「経常収支の黒字額は、比較可能な1985年以降の5月としては過去最大となった」と報じ、9日の朝刊でも「サービス収支が2ヵ月ぶり黒字」と報じています。本稿では季節調整値と原系列の前年同月差に注目しながら月次の推移を確認していきたいと思います。 経常黒字の原数値の前年同月差は拡大したが… 5月の経常黒字は季節調整値でみると2.4兆円。4ヵ月ぶりに減少しました。2024年4月(2.5兆円)からの黒字

        • 一般労働者の所定内給与上昇率が3%に近づく~2024年5月の毎月勤労統計

           本日(8日)、「毎月勤労統計」(厚生労働省)の2024年5月分の速報値が公表されました。日経電子版は、基本給(所定内給与)の伸びが31年ぶりの伸び率になったことに注目しています(先月は「29年ぶり」と報じてました)。  かねて私のnoteで書かせていただいている通り、新聞・雑誌が注目する就業形態計の給与は、パートタイム労働者の労働時間の変動の影響を受けてしまいます。いつものように、一般労働者の所定内給与の伸び率とパートタイム労働者の時給の伸び率に注目していきましょう。 一

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        • 経済統計のよもやま話(物価)
          16本
        • 経済統計のよもやま話(国際収支統計、貿易統計)
          26本
        • 経済統計のよもやま話(雇用・賃金・人口)
          58本
        • 経済統計のよもやま話(GDP)
          40本
        • 経済統計のよもやま話(企業・収益・景気指数)
          31本
        • 経済統計のよもやま話(インバウンド関連等)
          56本

        記事

          異例のGDP2次速報の改定~公共投資の速報推計にも課題

           本日(7/1)、内閣府が2024年1~3月期のGDP2次速報の改定値を公表しました。GDP速報は1次(2024年1~3月期であれば5月16日に公表)、2次(同6月10日に公表)と公表された後は、新たな情報などがあれば次の四半期(今回であれば4~6月期)の公表の際に過去に遡って実績を改定するのが一般的であり、かなり異例な対応です。直近で2次速報の改定値が公表されたのは2000年7月27日に公表された2020年1~3月期ですが、コロナ禍にあって「法人企業統計季報」(財務省)が速

          異例のGDP2次速報の改定~公共投資の速報推計にも課題

          出荷-在庫バランスがプラスを維持~2024年5月の鉱工業生産指数(速報)

           2024年5月の鉱工業生産指数の速報値が本日(6/28)公表されました。日経は、民間予測(2.0%上昇)を上回り、前月比2.8%上昇となったことに注目しています。私は、GDP統計と同じように前年同期比(前年同月比)に注目して観察してみたいと思います。 5月の鉱工業生産の前年同月比上昇率は2023年10月以来のプラス  前年同月比でみると、2024年5月の生産は0.3%上昇。2023年10月(0.9%上昇)以来のプラスでした。ただ、4月のマイナス(1.8%低下)が大きく、

          出荷-在庫バランスがプラスを維持~2024年5月の鉱工業生産指数(速報)

          日本人観光客の延べ宿泊者数の減少続く~2024年5月の宿泊旅行統計調査と2024年4月の出入国管理統計

          観光庁の「宿泊旅行統計調査」の2024年5月分が本日(6月28日)公表されました。「出入国管理統計」の「短期滞在」の入国外国人の動向ともにポイントをまとめたいと思います。なお、昨年の実績値が改定されており、前年同月比の動きなどが前月のnoteから変わっている点には注意ください。 2024年5月の延べ宿泊者数、前年同月比0.8%増  2024年5月の延べ宿泊者数は5176万1760人泊であり、前年同月比で0.8%増加しました。4月の10.1%増から急縮小しました。日本人観光

          日本人観光客の延べ宿泊者数の減少続く~2024年5月の宿泊旅行統計調査と2024年4月の出入国管理統計

          ”日銀版コア”の上昇率が2%割れ寸前~2024年5月の消費者物価

           本日(21日)、2024年5月の消費者物価が公表されました。消費者物価(総合)の前年同月比上昇率は2.8%と4月の2.5%から上昇率が拡大しました。日銀の金融政策に関連して注目を集める生鮮食品を除く総合も2.5%上昇と4月の2.2%から伸びが拡大しました。日経夕刊の記事はそこに注目しているようです。  一方、エコノミストの皆さんの間で”日銀版コア”と呼ばれている消費者物価(生鮮食品とエネルギーを除く総合)の上昇率は2.1%と4月の2.4%から伸びが縮小しました。総合や生鮮食

          ”日銀版コア”の上昇率が2%割れ寸前~2024年5月の消費者物価

          貿易収支の前年同月差が2023年3月以来のマイナスに~2024年4月の国際収支

           本日(6月10日)、2024年4月分の国際収支統計が公表されました。日経夕刊では「経常黒字は15カ月連続。経常黒字額は比較可能な1985年以降で4月としては最大」と報じています。本稿では季節調整値と原系列の前年同月差に注目しながら月次の推移を確認していきたいと思います。 季節調整値で見ると前月比増加だが、原数値の前年同月差は縮小  4月の経常黒字は季節調整値でみると2.5兆円。2ヵ月連続で増加しました。2024年3月(2.0兆円)からの黒字拡大に寄与したのは第一次所得収

          貿易収支の前年同月差が2023年3月以来のマイナスに~2024年4月の国際収支

          消費が14ヵ月ぶりプラスって本当?

           総務省統計局が本日(7日)に発表した「家計調査」において、世帯人員2人以上の世帯の実質消費支出が前年同月に比べて14ヵ月ぶりに増加したことが注目を集めています。日経新聞夕刊は、3連休で外食が伸びたことなどが要因だと報じています。記事につけられたグラフをみると、今年に入ってから前年同月比のマイナス幅が縮小してきた姿が確認できます。  一方、GDP統計における実質個人消費(実質民間最終消費支出)の前年同期比の伸びは、2023年7~9月期にマイナスに転じて以来、マイナス幅が拡大し

          消費が14ヵ月ぶりプラスって本当?

          出生率、「コホート」で見てみると~2023年人口動態統計月報年計

           本日(6/5)は統計発表が相次いでいますね(汗)。  厚生労働省は2023年の「人口動態統計月報年計(概数)の概況」を本日公表しました。2月27日の速報値公表時には判明しなかった「日本における日本人(前年以前発生のものを除く)」の出生数や合計特殊出生率などが判明しました。日経電子版は、2023年の合計特殊出生率が1.20と過去最低となったこと、出生数が5.6%減少したことを報じています。  私のnoteでは、2年前の下記のnoteをアップデートし、「コホート」でみた出生率の

          出生率、「コホート」で見てみると~2023年人口動態統計月報年計

          パート時給の伸び減速が気になる~2024年4月の毎月勤労統計

           本日(5日)、「毎月勤労統計」(厚生労働省)の2024年4月分の速報値が公表されました。日経電子版は、基本給(所定内給与)の伸びが29年ぶりの高さになったことなどを報じています。  ただ、私のnoteで毎月注目している共通事業所ベースだと賃金上昇の急加速は観察されません(注目している理由は下記の先月のnoteをご覧ください)。むしろ、パートタイム時給の伸びが鈍化したとことが気になります。 共通事業所ベースだと名目賃金上昇率は1.7%  注目度の高い就業形態計の現金給与総

          パート時給の伸び減速が気になる~2024年4月の毎月勤労統計

          賃上げ余力があるのは実は中堅企業?~2024年1-3月期の法人企業統計

           昨日(6/3)、2024年1~3月期の「法人企業統計」(財務省)が公表されました。本日の日経朝刊は、法人企業統計を用いた労働分配率を算出し、大企業の賃上げ余力が大きいことを報じています。 別の定義でも大企業の労働分配率低下は顕著  下記のnoteで書いた通り、法人企業統計を用いた労働分配率には2種類の計算方法があります。一つは日経記事が用いている、「人件費÷(人件費+経常利益+支払利息+減価償却費)」。もう一つは、法人企業統計の年報に近い、「人件費÷(人件費+営業利益)

          賃上げ余力があるのは実は中堅企業?~2024年1-3月期の法人企業統計

          出荷-在庫バランスが2021年7-9月期以来のプラス幅に~2024年4月の鉱工業生産指数(速報)

           マガジンを再編成したら、生産や企業収益関連のnoteを最近あまり書いていないことに気づきました(笑)。講義用資料としても活用できるので、4月分からぽつぽつフォローしていこうかと思います。  2024年4月の鉱工業生産指数の速報値が昨日(5/31)公表されました。日経は、民間予測(1.2%上昇)と異なり、前月比0.1%低下となったことに注目しています。私は、GDP統計と同じように前年同期比(前年同月比)に注目して観察してみたいと思います。 そもそも、鉱工業生産指数ってどうや

          出荷-在庫バランスが2021年7-9月期以来のプラス幅に~2024年4月の鉱工業生産指数(速報)

          日本人観光客の延べ宿泊者数が2019年同月と比べて減少~2024年4月の宿泊旅行統計調査と2024年3月の出入国管理統計

          観光庁の「宿泊旅行統計調査」の2024年4月分が本日(5月31日)公表されました。「出入国管理統計」の「短期滞在」の入国外国人の動向ともにポイントをまとめたいと思います。 2024年4月の延べ宿泊者数、前年同月比11.9%増  2024年4月の延べ宿泊者数は5095万5500人泊であり、前年同月比で11.9%増加しました。2ヵ月ぶりに2ケタ増になりました。日本人観光客の寄与が3.9%と2ヵ月ぶりにプラスとなりました。一方で、外国人の寄与は8.0%と2022年11月以来の1

          日本人観光客の延べ宿泊者数が2019年同月と比べて減少~2024年4月の宿泊旅行統計調査と2024年3月の出入国管理統計

          日本のアルコール輸出金額は過去10年間で5倍に~けん引役は?

           ゼミの学生が日本のアルコール輸出動向に興味があると言ってきました。日本のアルコール輸出金額の推移については、「農林水産物品目別実績」(農林水産省)のホームページで、1989年以降のデータが入手できます。また、2005年以降については、国別の輸出金額の内訳も知ることができます。ただし、ビールと清酒を除くと個別のお酒の輸出金額はそのページではわかりません。  一方、国税庁の「酒類の輸出動向について」ホームページでは、主要品目別の内訳データを知ることができます。ただし、遡れるのは

          日本のアルコール輸出金額は過去10年間で5倍に~けん引役は?