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日本のアルコール輸出金額は過去10年間で5倍に~けん引役は?

 ゼミの学生が日本のアルコール輸出動向に興味があると言ってきました。日本のアルコール輸出金額の推移については、「農林水産物品目別実績」(農林水産省)のホームページで、1989年以降のデータが入手できます。また、2005年以降については、国別の輸出金額の内訳も知ることができます。ただし、ビールと清酒を除くと個別のお酒の輸出金額はそのページではわかりません。
 一方、国税庁の「酒類の輸出動向について」ホームページでは、主要品目別の内訳データを知ることができます。ただし、遡れるのは2003年までとなっています。
 そもそも、これら省庁のデータは「貿易統計」(財務省)の品目別データを加工したものです。国税庁のホームページに掲載されているデータを「貿易統計」の品目別データで再現できないか、やってみました。

品目別コードと個々の酒類の関係

 国税庁ホームページでは、酒類を以下の8酒類に分類しています。

ウィスキー(220830000)
清酒(220600200)
リキュール(220870000)
ビール(220300000)
ジン・ウオッカ
焼酎
ワイン
その他

 このうち、ウィスキー、清酒、リキュール、ビールはそれぞれ貿易統計の品目別コードがあります(上の表のカッコ内)。ウィスキー、清酒、ビールは1988年以降のデータが入手可能ですが、リキュールは1996年以降しか入手できません(財務省にヒアリングしたところ1995年以前は「220890100」に収録されているそうです)。
 ジン・ウオッカは、ジン及びジュネヴァ(200850000)とウオッカ(22086000)の合計金額のようです。1990年以降のデータがありますが、途中、データの無い年もちょこちょこあります。
 焼酎は2008年から2021年まで品目別コード「220890100」で金額が入手できますが、2022年からは連続式蒸留焼酎(220890200)と泡盛(220890300)に分かれた模様です(2008年以前は「その他」にカウントされています)。
 ワインは金額があまり大きくないのに品目別コードがたくさんあります。スパークリングワイン(220410000)のほか、品目コードは220421000、220422000、220429000、220430000、220510000、220590000が該当するようです。
 その他は、品目別コードの220600900、220820000、220840000、22089000が該当するようです。

ウィスキー、清酒、ビールの3品目で7~8割を占める

 以上のように品目別コードを探し、品目別を積み上げた金額と農林水産省が公表するアルコール輸出金額のデータと整合的なデータを1996年までさかのぼることができました。国税庁の2003年までの品目別データとも整合的です。
 まず、最初の図は1989年から2023年までの長期推移を描いたものです。1989年までの長期間のデータが「貿易統計」から入手可能なウィスキー、清酒、ビールの3品目以外は「その他」にまとめています。3品目合計がアルコール輸出全体に占める比率は70%(2007年)~88%(1998年)の範囲内で推移しています。直近(2023年)は81%です。この3品目が日本のアルコール輸出の主力といえそうです。
 グラフをみると10年前の2013年からトレンドが変化しているようにうかがえます。それまで横ばい圏内で推移したのが、2013年を境に増加が著しくなります。2023年のアルコール輸出額(1344億800万円)は2013年の5.35倍まで拡大しました。過去10年間の増加額(1093億1100万円)に最も貢献したのはウィスキー(461億1100万円)の増加額、清酒(305億5800万円)の増加額がそれに続きます。

近年はウィスキー輸出が台頭、ビールは存在感低下

 下図は、品目別積み上げ額がと農林水産省が公表するアルコール輸出金額のデータと一致できた1996年以降の品目別シェアのグラフです。
ウィスキーのシェア上昇が顕著です。最新の2023年でアルコール輸出金額の37.3%。2021、22年は4割を超えてました。アルコール輸出は2000年前後に25%程度まで上昇した後、いったんは10%程度まで低迷していました。
 一方、存在感が徐々に低下しているのがビール。1996年には43.7%とアルコール輸出金額の内訳でトップだったのが、2020年には8.1%まで低下しました。最新の2023年では13.3%です。
 清酒のシェアは3~4割で推移。直近の2023年は30.6%と若干低下しています。
 ただ、前述したように過去10年間にアルコール輸出金額は急増しており、品目別内訳で輸出が減少しているものは、焼酎(6600万円減)を除いてありません。ビールも2013年に比べて2023年は124億5700万円増加しています。ウィスキーの輸出急増で他の品目のシェアが相対的に低下したと見るのが良さそうです。
 なお、ウィスキー、清酒、ビールについで安定的に輸出を伸ばしているのがリキュールです。品目別シェアも1割程度で推移し、2023年は9.3%。ウィスキー、清酒、ビール、リキュールの4品目でアルコール輸出の9割を占めており、これらの品目の輸出戦略が、今後のアルコール輸出金額の拡大を左右しそうですね。

(追記)いわゆる発泡酒や第三のビールの扱いについて財務省に問い合わせたところ、それぞれ個別に、その製品の製法等を角印のうえ、22.03(ビール)、22.06(その他の発酵酒など)、22.08(リキュールなど)に分類判断されるとのことでした。また、「なお、酒税法上の酒類の表示名とHS分類上(この場合の貿易統計上)では分類が異なることがあります」とのことです。

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