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日本人観光客の延べ宿泊者数の減少続く~2024年5月の宿泊旅行統計調査と2024年4月の出入国管理統計

観光庁の「宿泊旅行統計調査」の2024年5月分が本日(6月28日)公表されました。「出入国管理統計」の「短期滞在」の入国外国人の動向ともにポイントをまとめたいと思います。なお、昨年の実績値が改定されており、前年同月比の動きなどが前月のnoteから変わっている点には注意ください。


2024年5月の延べ宿泊者数、前年同月比0.8%増

 2024年5月の延べ宿泊者数は5176万1760人泊であり、前年同月比で0.8%増加しました。4月の10.1%増から急縮小しました。日本人観光客の寄与が▲5.6%と2ヵ月ぶりにマイナスとなりました。一方で、外国人の寄与は6.4%と2024年3月から3ヵ月連続で1ケタにとどまっています。
 グラフを見るとあきらかなように延べ宿泊者数の前年同月比の伸び率は徐々に縮小しており、押し上げ役は外国人観光客頼みになっています。

2019年の同月比でも0.7%増にとどまる

 前年同月比での比較は、全国旅行支援の有無などかく乱要因もあるため、2019年の同じ月との比較もしてみましょう。2023年6月から12ヵ月連続でプラスになっていますが、伸び率は0.7%と急縮小しています。
 内訳をみると、外国人の寄与が5.0%、日本人の寄与が▲4.3%となっています。2019年同月と比べると、2ヵ月連続で日本人の宿泊者は減っています。宿泊料金の高騰が影響しているのでしょうか?4月、5月ともゴールデンウィークの時期にあたりましたが、日本人の国内旅行はむしろ減ったようです。

「短期滞在」の入国外国人は2019年同月を8ヵ月連続超える

 90日以内の滞在予定で入国する「短期滞在」の外国人、多くが観光目的と考えられる外国人も増加を続けています。現時点で判明している2024年4月において「短期滞在」の入国外国人は274.3万人で8ヵ月連続で2019年同月を超えました(1.05倍)。早く実績値が判明する訪日外客数で示されていたように、伸びは3月(1.13倍)から縮小しました。
 2024年5月の訪日外客数は、304万100人。3ヵ月連続で300万人を超え、2019年5月の1.10倍と伸びが拡大しました。

客室稼働率、改善テンポが縮小傾向

 客室稼働率は引き続きコロナ禍前水準に並んでいます(2019年水準にはまだ届きませんが)。2024年5月の宿泊稼働率は58.8%。前年同月(56.1%)に比べて2.7ポイントの改善です。前年同月と比べた改善幅はこのところ縮小傾向です(1月から、5.2ポイント→4.8ポイント→3.2ポイント→4.8ポイント→2.7ポイント)。延べ宿泊者数と同様に客室稼働率の改善は一服しつつあるように思われます。

 宿泊施設タイプ別にみると、ビジネスホテルと旅館に加えて、観光需要が中心のシティホテルやリゾートホテルでもコロナ前水準を確保したのが5月の特徴です。
 2024年5月のビジネスホテルの稼働率は75.2%と前年同月に比べて7.0ポイント上昇しました。ただし、2019年同月の75.8%にほぼ匹敵する高さです。需要の強さがうかがえます。
 観光需要が中心のシティホテルの5月の稼働率は73.7%。2019年の79.9%にはまだ届かない状況ですが、コロナ禍前の2016~2019年の下限の稼働率となっています。
 リゾートホテルは57.6%と前年同月に比べて7.5ポイント上昇と大幅に高まりました。コロナ禍前の2016~2019年と比べても高く、2019年同月の59.6%に次ぐ高さです。

1~4月平均の客室稼働率が例年の値を上回ったのは11県

 1ヵ月遅れで確認できる都道府県別データを用いて、2024年1~4月平均の都道府県別の客室稼働率を例年の値(2015~19年の1~4月の平均値)と比較すると、11県(青森県、秋田県、茨城県、栃木県、新潟県、富山県、石川県、長野県、三重県、滋賀県、島根県)が例年の値を上回りました。1~3月と数は同じですが、奈良県が抜けて、新たに秋田県が加わっています。
 石川県の客室稼働率は70.3%と2015~19年の1~4月平均(58.9%)を上回っていますが、その幅は徐々に縮小しています。復興支援者の宿泊などの影響が薄れてきているのかもしれません。
 例年は外国人観光客が多かった都道府県の客室稼働率はまだまだ例年の値には及びません。落ち込み幅が大きい順に、(1)沖縄県(マイナス11.1ポイント)、(2)大阪府(マイナス8.9ポイント)、(3)佐賀県(マイナス6.6ポイント)、(4)千葉県(マイナス6.5ポイント)、(5)群馬県(マイナス6.1ポイント)となっています。

延べ宿泊者数が2019年同期を上回ったのは24都府県

 2024年1~4月合計の都道府県別の延べ宿泊者数の前年比を確認してみましょう。減少しているのは7県(岩手県、秋田県、福島県、山口県、愛媛県、高知県)で、1~3月から1県増えました。石川県が56.9%増と断トツの伸びになっていますが、徐々に伸びが落ち着いています。
 次に高い伸びとなっているのが鳥取県(27.0%)、岐阜県(25.0%)、東京都(18.2%)です。東京は伸びの寄与のほとんどが外国人です。

 一方、4年前(2019年1~4月合計)と比較すると、24都府県で延べ宿泊者数が増加となっています。1~3月合計と比べて2つ減りました。東京都が外国人観光客を中心に2019年対比でも41.9%増と最大の伸び。外国人観光客を引き付けている姿が確認できます。

クルーズ船観光客、さらに増加

最後に、「出入国管理統計」の「入国審査・在留資格審査・退去強制手続等」の中で把握される「船舶観光上陸」を許可された人数を確認してみましょう。いわゆるクルーズ船観光客で、宿泊需要にはなりませんが、お土産などの消費につながる可能性があるものです。
 2024年4月は10万4833人と前月に比べてわずかに増加しました。2019年同月比も71%と3月(85%)に比べて縮小しましたが、増加傾向にあります。2024年は、2019年以来のクルーズ船観光の復活の年となりそうな勢いです。


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