飯塚 信夫(神奈川大学経済学部教授)

日本経済論、経済統計。ホームページ(https://sites.google.com/…

飯塚 信夫(神奈川大学経済学部教授)

日本経済論、経済統計。ホームページ(https://sites.google.com/view/todobuono/)、東京財団政策研究所の研究プログラム(https://www.tkfd.or.jp/research/detail.php?id=3839)もよろしく。

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記事一覧

日本の国債費の予算見積もりは、「高め」がお好き?

 一昨日(22日)の日経朝刊に興味深い記事が出てました。来年度(2025年度)の国の一般会計の予算において、国債費が大きく増加しそうだというものです。「日銀が利上げに…

一般サービス物価上昇率が昨年6月以来の2%割れ~2024年7月の消費者物価

 本日(23日)、2024年7月の消費者物価が公表されました。日経電子版は、コア指数と呼ばれる「生鮮食品を除く総合」の上昇率がエネルギー価格の押し上げで高まったことを…

前年同期比で見れば2四半期連続のマイナス成長~2024年4-6月期のGDP1次速報

 本日(15日)、内閣府は2024年4~6月期の国内総生産(GDP)速報値を公表しましあ。日経電子版は季節調整済み前期比の動きに注目し、2四半期ぶりのプラス成長となったと報…

季節調整値でみると経常黒字は2ヵ月連続で減少~2024年6月の国際収支

 本日(8日)、2024年6月分の国際収支統計が公表されました。日経電子版は1~6月累計で経常収支黒字が大きく増加したことに注目しています。本稿ではいつものように、…

家計調査の消費支出は、せめて「除く住居等」を見よう

 昨日(8/6)、総務省統計局が発表した「家計調査」において、世帯人員2人以上の世帯の実質消費支出が前年同月に比べて2ヵ月連続で減少となりました。消費支出は1.9%増…

就業形態計の現金給与総額の伸び、共通事業所ベースは5%超え~2024年6月の毎月勤労統計

 本日(6日)、「毎月勤労統計」(厚生労働省)の2024年6月分の速報値が公表されました。日経電子版は、就業形態計の実質賃金が1.1%増と2年3ヵ月ぶりに増加したこと…

日本人宿泊者も回復か?~2024年6月の宿泊旅行統計調査と2024年5月の出入国管理統計

観光庁の「宿泊旅行統計調査」の2024年6月分が本日(7月31日)公表されました。「出入国管理統計」の「短期滞在」の入国外国人の動向ともにポイントをまとめたいと思いま…

物価、成長率見通しが変わらない中での政策変更か?~2024年7月の金融政策決定会合

 本日(7/31)、日本銀行が金融政策決定会合を受けて金融政策の変更(政策金利引き上げなど)を発表しました。それとともに、実質GDP成長率と消費者物価(生鮮食品を除く…

出荷-在庫バランスが再びマイナスに~2024年6月の鉱工業生産指数(速報)

 2024年6月の鉱工業生産指数の速報値が本日(7/31)公表されました。日経は、前月比3.6%低下と2ヵ月ぶりにマイナス昇となったことに注目しています。私は、GDP統計と同…

「総合」を除き、上昇率高まる。主因はサービス?~2024年6月の消費者物価

 本日(19日)、2024年6月の消費者物価が公表されました。消費者物価(総合)の前年同月比上昇率は2.8%と5月の2.8%と横ばいでした。日銀の金融政策に関連して注目を集…

季節調整値でみると経常黒字は前月から減少~2024年5月の国際収支

 昨日(7月8日)、2024年5月分の国際収支統計が公表されました。日経夕刊では「経常収支の黒字額は、比較可能な1985年以降の5月としては過去最大となった」と報じ、9日…

一般労働者の所定内給与上昇率が3%に近づく~2024年5月の毎月勤労統計

 本日(8日)、「毎月勤労統計」(厚生労働省)の2024年5月分の速報値が公表されました。日経電子版は、基本給(所定内給与)の伸びが31年ぶりの伸び率になったことに注…

異例のGDP2次速報の改定~公共投資の速報推計にも課題

 本日(7/1)、内閣府が2024年1~3月期のGDP2次速報の改定値を公表しました。GDP速報は1次(2024年1~3月期であれば5月16日に公表)、2次(同6月10日に公表)と公…

出荷-在庫バランスがプラスを維持~2024年5月の鉱工業生産指数(速報)

 2024年5月の鉱工業生産指数の速報値が本日(6/28)公表されました。日経は、民間予測(2.0%上昇)を上回り、前月比2.8%上昇となったことに注目しています。私は、GDP…

日本人観光客の延べ宿泊者数の減少続く~2024年5月の宿泊旅行統計調査と2024年4月の出入国管理統計

観光庁の「宿泊旅行統計調査」の2024年5月分が本日(6月28日)公表されました。「出入国管理統計」の「短期滞在」の入国外国人の動向ともにポイントをまとめたいと思いま…

”日銀版コア”の上昇率が2%割れ寸前~2024年5月の消費者物価

 本日(21日)、2024年5月の消費者物価が公表されました。消費者物価(総合)の前年同月比上昇率は2.8%と4月の2.5%から上昇率が拡大しました。日銀の金融政策に関連し…

日本の国債費の予算見積もりは、「高め」がお好き?

日本の国債費の予算見積もりは、「高め」がお好き?

 一昨日(22日)の日経朝刊に興味深い記事が出てました。来年度(2025年度)の国の一般会計の予算において、国債費が大きく増加しそうだというものです。「日銀が利上げに踏み切ったことで財政運営上の「緩和の宴(うたげ)」は終わり、金利の規律と向き合う」と記事は伝えていますが、この予算見積もりはどれだけあてになるものなのでしょうか?

そもそも、国債費とは

 国債費は、国の一般会計の一項目。2024年

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一般サービス物価上昇率が昨年6月以来の2%割れ~2024年7月の消費者物価

一般サービス物価上昇率が昨年6月以来の2%割れ~2024年7月の消費者物価

 本日(23日)、2024年7月の消費者物価が公表されました。日経電子版は、コア指数と呼ばれる「生鮮食品を除く総合」の上昇率がエネルギー価格の押し上げで高まったことを報じています。ただ、政府の「電気・ガス価格激変緩和対策事業」がいったん終わったことでエネルギー価格の押し上げが高まることは事前にわかっていたこと。今月のニュースは、一般サービス物価上昇率が2%を割ったことではないでしょうか?

コア指

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前年同期比で見れば2四半期連続のマイナス成長~2024年4-6月期のGDP1次速報

前年同期比で見れば2四半期連続のマイナス成長~2024年4-6月期のGDP1次速報

 本日(15日)、内閣府は2024年4~6月期の国内総生産(GDP)速報値を公表しましあ。日経電子版は季節調整済み前期比の動きに注目し、2四半期ぶりのプラス成長となったと報じています。一方、前年同期比でみると、実質GDPは2四半期連続のマイナス成長です。マイナス幅も1~3月期とほぼ変わらず、日本経済の弱含み傾向に変わりはありません。

プラス寄与は公的需要のみ

 2024年4~6月期の実質GDP

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季節調整値でみると経常黒字は2ヵ月連続で減少~2024年6月の国際収支

季節調整値でみると経常黒字は2ヵ月連続で減少~2024年6月の国際収支

 本日(8日)、2024年6月分の国際収支統計が公表されました。日経電子版は1~6月累計で経常収支黒字が大きく増加したことに注目しています。本稿ではいつものように、季節調整値と原系列の前年同月差に注目しながら月次の推移を確認していきたいと思います。

6月は第一次所得収支の黒字幅が縮小

 6月の経常黒字は季節調整値でみると1.8兆円。2ヵ月連続で減少しました。2024年5月(2.4兆円)からの黒

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家計調査の消費支出は、せめて「除く住居等」を見よう

家計調査の消費支出は、せめて「除く住居等」を見よう

 昨日(8/6)、総務省統計局が発表した「家計調査」において、世帯人員2人以上の世帯の実質消費支出が前年同月に比べて2ヵ月連続で減少となりました。消費支出は1.9%増、物価変動の影響を除いた実質では1.4%減です。
 日経は2ヵ月前には14ヵ月ぶりに実質消費支出が前年同月比増加になったことを報じていましたが、以下の昨日の夕刊の記事が伝えるように「物価高を背景に節約志向から支出を絞る動きが残った」の

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就業形態計の現金給与総額の伸び、共通事業所ベースは5%超え~2024年6月の毎月勤労統計

就業形態計の現金給与総額の伸び、共通事業所ベースは5%超え~2024年6月の毎月勤労統計

 本日(6日)、「毎月勤労統計」(厚生労働省)の2024年6月分の速報値が公表されました。日経電子版は、就業形態計の実質賃金が1.1%増と2年3ヵ月ぶりに増加したことに注目しています。夏の賞与の増加で名目賃金(現金給与総額)が4.5%と高い伸びになったためです。
 かねて私のnoteで注目してきた共通事業所ベース(「前年同月分」及び「当月分」ともに集計対象となった事業所のみを集計)でみても、就業形

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日本人宿泊者も回復か?~2024年6月の宿泊旅行統計調査と2024年5月の出入国管理統計

日本人宿泊者も回復か?~2024年6月の宿泊旅行統計調査と2024年5月の出入国管理統計

観光庁の「宿泊旅行統計調査」の2024年6月分が本日(7月31日)公表されました。「出入国管理統計」の「短期滞在」の入国外国人の動向ともにポイントをまとめたいと思います。

2024年6月の延べ宿泊者数、前年同月比6.3%増

 2024年6月の延べ宿泊者数は5390万610人泊であり、前年同月比で6.3%増加しました。5月の5.0%増(速報段階では0.8%増でした)から伸びを拡大させました。日本

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物価、成長率見通しが変わらない中での政策変更か?~2024年7月の金融政策決定会合

物価、成長率見通しが変わらない中での政策変更か?~2024年7月の金融政策決定会合

 本日(7/31)、日本銀行が金融政策決定会合を受けて金融政策の変更(政策金利引き上げなど)を発表しました。それとともに、実質GDP成長率と消費者物価(生鮮食品を除く総合、以下コアCPIと記します)上昇率の新たな見通しも公表しました。
 一方、7月19日には内閣府が政府経済見通しの年央試算を公表し、その中で2025年度見通しの参考試算を公表しています。
 本日の金融政策変更については詳しい方がいろ

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出荷-在庫バランスが再びマイナスに~2024年6月の鉱工業生産指数(速報)

出荷-在庫バランスが再びマイナスに~2024年6月の鉱工業生産指数(速報)

 2024年6月の鉱工業生産指数の速報値が本日(7/31)公表されました。日経は、前月比3.6%低下と2ヵ月ぶりにマイナス昇となったことに注目しています。私は、GDP統計と同じように前年同期比(前年同月比)に注目して観察してみたいと思います。

6月の鉱工業生産の前年同月比は7.3%低下と大幅なマイナス

 前年同月比でみると、2024年6月の生産は7.3%低下。2024年3月(6.2%低下)以来

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「総合」を除き、上昇率高まる。主因はサービス?~2024年6月の消費者物価

「総合」を除き、上昇率高まる。主因はサービス?~2024年6月の消費者物価

 本日(19日)、2024年6月の消費者物価が公表されました。消費者物価(総合)の前年同月比上昇率は2.8%と5月の2.8%と横ばいでした。日銀の金融政策に関連して注目を集める生鮮食品を除く総合は2.6%上昇と5月の2.5%から伸びが拡大しました。エコノミストの皆さんの間で”日銀版コア”と呼ばれている消費者物価(生鮮食品とエネルギーを除く総合)の上昇率も2.2%も5月の2.1%から拡大しました。以

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季節調整値でみると経常黒字は前月から減少~2024年5月の国際収支

季節調整値でみると経常黒字は前月から減少~2024年5月の国際収支

 昨日(7月8日)、2024年5月分の国際収支統計が公表されました。日経夕刊では「経常収支の黒字額は、比較可能な1985年以降の5月としては過去最大となった」と報じ、9日の朝刊でも「サービス収支が2ヵ月ぶり黒字」と報じています。本稿では季節調整値と原系列の前年同月差に注目しながら月次の推移を確認していきたいと思います。

経常黒字の原数値の前年同月差は拡大したが…

5月の経常黒字は季節調整値でみ

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一般労働者の所定内給与上昇率が3%に近づく~2024年5月の毎月勤労統計

一般労働者の所定内給与上昇率が3%に近づく~2024年5月の毎月勤労統計

 本日(8日)、「毎月勤労統計」(厚生労働省)の2024年5月分の速報値が公表されました。日経電子版は、基本給(所定内給与)の伸びが31年ぶりの伸び率になったことに注目しています(先月は「29年ぶり」と報じてました)。
 かねて私のnoteで書かせていただいている通り、新聞・雑誌が注目する就業形態計の給与は、パートタイム労働者の労働時間の変動の影響を受けてしまいます。いつものように、一般労働者の所

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異例のGDP2次速報の改定~公共投資の速報推計にも課題

異例のGDP2次速報の改定~公共投資の速報推計にも課題

 本日(7/1)、内閣府が2024年1~3月期のGDP2次速報の改定値を公表しました。GDP速報は1次(2024年1~3月期であれば5月16日に公表)、2次(同6月10日に公表)と公表された後は、新たな情報などがあれば次の四半期(今回であれば4~6月期)の公表の際に過去に遡って実績を改定するのが一般的であり、かなり異例な対応です。直近で2次速報の改定値が公表されたのは2000年7月27日に公表され

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出荷-在庫バランスがプラスを維持~2024年5月の鉱工業生産指数(速報)

出荷-在庫バランスがプラスを維持~2024年5月の鉱工業生産指数(速報)

 2024年5月の鉱工業生産指数の速報値が本日(6/28)公表されました。日経は、民間予測(2.0%上昇)を上回り、前月比2.8%上昇となったことに注目しています。私は、GDP統計と同じように前年同期比(前年同月比)に注目して観察してみたいと思います。

5月の鉱工業生産の前年同月比上昇率は2023年10月以来のプラス

 前年同月比でみると、2024年5月の生産は0.3%上昇。2023年10月(

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日本人観光客の延べ宿泊者数の減少続く~2024年5月の宿泊旅行統計調査と2024年4月の出入国管理統計

日本人観光客の延べ宿泊者数の減少続く~2024年5月の宿泊旅行統計調査と2024年4月の出入国管理統計

観光庁の「宿泊旅行統計調査」の2024年5月分が本日(6月28日)公表されました。「出入国管理統計」の「短期滞在」の入国外国人の動向ともにポイントをまとめたいと思います。なお、昨年の実績値が改定されており、前年同月比の動きなどが前月のnoteから変わっている点には注意ください。

2024年5月の延べ宿泊者数、前年同月比0.8%増

 2024年5月の延べ宿泊者数は5176万1760人泊であり、前

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”日銀版コア”の上昇率が2%割れ寸前~2024年5月の消費者物価

”日銀版コア”の上昇率が2%割れ寸前~2024年5月の消費者物価

 本日(21日)、2024年5月の消費者物価が公表されました。消費者物価(総合)の前年同月比上昇率は2.8%と4月の2.5%から上昇率が拡大しました。日銀の金融政策に関連して注目を集める生鮮食品を除く総合も2.5%上昇と4月の2.2%から伸びが拡大しました。日経夕刊の記事はそこに注目しているようです。
 一方、エコノミストの皆さんの間で”日銀版コア”と呼ばれている消費者物価(生鮮食品とエネルギーを

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