一般労働者の所定内給与上昇率が3%に近づく~2024年5月の毎月勤労統計
本日(8日)、「毎月勤労統計」(厚生労働省)の2024年5月分の速報値が公表されました。日経電子版は、基本給(所定内給与)の伸びが31年ぶりの伸び率になったことに注目しています(先月は「29年ぶり」と報じてました)。
かねて私のnoteで書かせていただいている通り、新聞・雑誌が注目する就業形態計の給与は、パートタイム労働者の労働時間の変動の影響を受けてしまいます。いつものように、一般労働者の所定内給与の伸び率とパートタイム労働者の時給の伸び率に注目していきましょう。
一般労働者の所定内給与伸び率は2.7%
一般労働者の5月の所定内給与の前年同月比伸び率は2.7%で、4月の2.3%から伸びを拡大しました。ただ、就業形態計の所定内給与のようなジャンプアップ(4月:1.8%→5月2.5%)ではなく、下図のように緩やかに上昇率を高めてきています(ちなみに、就業形態計の所定内給与は4月速報では2.3%で、確報で下方修正されています(本文末尾の表参照))。
一般労働者ベースの賃金上昇率は94年以降しかデータがないのですが、この2.7%という数値は94年以降で最大の伸びです。
なお、先月のnoteで心配していたパート時給(パートタイム労働者の時間当たり所定内給与)上昇率の減速は、今のところ杞憂で終わりそうです。5月は4.0%と4月から伸び率が拡大しました。
共通事業所ベースでも所定内給与の伸び加速
先月の私のnoteでは、共通事業所ベースでは賃金上昇の急加速が確認できないと書かせていただいておりました。というのも、共通事業所ベースでみれば、一般労働者の所定内給与上昇率は昨年春から2%程度の伸びが続いていて、2024年4月も2.2%だったためです。しかし、5月は2.7%へと伸び率をぐんと高めました。今後の推移に注目したいですね。
5月は所定内労働時間増加
4月から5月にかけての一般労働者の所定内給与の上昇率拡大には、労働時間の変化も影響している可能性があることには注意したいです。4月まで前年に比べて減っていた労働時間が5月は増加しているためです。しかも、一般労働者の労働時間1.8%増の内訳を確認すると、所定内労働時間が2%増で、所定外労働時間は0.7%減なのです。
一般労働者はほぼフルタイムで働いている人を指すだけで、基本的に労働時間が所定内給与に影響を与えない正社員だけでなく、派遣社員など労働時間で給与が変動する人々も含まれています。
今後、一般労働者の所定内給与だけでなく、所定内労働時間の変化にも注目していきたいと思います。