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#8.バンドがしたい!お年頃

―連載マガジン『ポンコツだらけの音楽会~私の夢の叶え方』第8話。
全話はこちら第1話第2話第3話第4話第5話第6話第7話

中古のアコースティックギターは、
楽器店でのメンテナンスにより驚くほどきれいになって戻ってきた。

私はアヴリルのギターコード譜を購入し、さっそく家で弾いてみた。
当時はまだスマートフォンなんてないし、子供だったのでお金もない。
練習用CDを流して、音叉を使ってチューニングをしたりしていた。

しかし、弦に指が届かない…
難しいコードが一切弾けない…
なんでなんだ…

みんな簡単そうに弾いていたじゃないか
なんで私はできないんだろう。

初めて楽器に触った私の率直な感想だった。

そうか、きっと難しい曲のせいだ!
アヴリルはやめよう!
そう思って、当時ギターを弾く女性アーティストとして有名だった
矢井田瞳のギターコード譜を購入した。

有名で簡単そうな曲に挑戦してみよう!と意気込んだが
やはり弾けない…
弦がうまく抑えられず、きれいに音が出せなかった。


私の自信は簡単に砕け散っていった。


私はアルバイトをして学費を稼ぐことを条件に、私立高校に進学した。
国際系の高校で、校長先生が外国人。
2年生になれば短期留学もできる。

入学後、部活動見学会があった。
そこで「軽音部」に出会った。
マンガの中でしか聞いたことがない名前。
今まではここで初めて「バンド」の魅力を知った。

すごい、ギターやベース、ドラムを演奏できる人がいる。
しかも同年代に!!

すぐさまバンドメンバーを募った。
ドラム、キーボードは見つかり、ギターとベースは先輩たちがサポートしてくれることになった。

曲はすでに決めていた。
アヴリルの曲をやろうと。

練習初日、キーボードの子が急遽休むことになり
ドラムの子と二人での練習となった。
この日はCDに合わせて練習した。

数日後、キーボードの子から辞めたいと言われた。

「そんなに本気だと思わなくて」

その一言がすごくショックだった。
私はただバンドを組んで学園祭で演奏してみたいだけ。
その子にとっての「本気」とは何だったんだろうか。

結局このことが原因で、ドラムの子も他のクラスメイトとバンドを組むことになり、1人になった私は静かに軽音部を退部した。

そのあとはとにかくアルバイト三昧だった。
当時3つ掛け持ちしていた私は、終業ベルが鳴ると急いで教室を後にしバイト先へ向かっていた。
やりたかったことができないもどかしさを、アルバイトで埋めていた。
いつしか友達もできなくなり、学校で孤立することも増えた。
声をかけてきてくれる友達が本当にありがたいと思った。

この頃から、私はインターネットの世界に入り込むようになり、
そこでバンドメンバー募集の掲示板を見つける。

「矢井田瞳と相川七瀬のコピーバンドをやります!ボーカル募集!」

私は迷わず連絡をした。

「高校生ですが、ボーカルやりたいです」と

この連絡がきっかけで、私は社会人バンドでボーカルを担当することになる。

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