キリンのウイスキー戦略 その背景とは?
【概要】
キリンビールは、国産ウイスキー「富士」をフランスに輸出する。海外で日本産ウイスキーの需要が高まりつつあり、まずはウイスキー主要消費国のフランスで力試しといったところだろうか。
【研究】
フランスのウイスキー市場
フランスのウイスキー市場は、他国とは異なる点が2点ある。
1点目は、飲酒場所だ。2011年に実施されたアンケートによると、フランス人の58%は自宅でしかアルコールを消費しないという結果が出ている。
2点目は、日本企業の市場シェアだ。フランスでの日本産ウイスキーの市場シェアはニッカが83%を誇り、2位のサントリー(11%)を大きく引き離している。アメリカをはじめとするその他の国では、その順位は逆転している。フランスでニッカがこれだけのシェアを伸ばしてる背景には、LMDW(ラ・メゾン・ド・ウイスキー)という代理店の存在がある。LMDWは2000年当初からフランス在住の日本人や日本料理店ではなく、フランス人やフランス料理店への販促を行ってきた(都留,2020)。その結果、若い層に日本のウイスキーが浸透し、ブランドの確立に貢献している。それだけ現在では、フランスに「日本のウイスキー」が参入する効果は大きく、キリンもそこに目をつけたのだろう。
カギは供給能力の向上
一方、記事にもあるとおり、供給能力向上は直近の課題である。一般的にウイスキーは製造に10年程度を要する。加えて、自社生産(垂直統合型)は日本企業特有の生産形態で、需要変化への対応をさらに難しくしている。事実イギリスでは、蒸留所の原酒を資本関係を超えて融通・交換する「英国方式」の形態があり、日本に比べて需要や嗜好の変化への柔軟性が高い。
キリンの戦略とは
現地の専門店で販売される「富士」は、価格こそ従来の日本ウイスキーより割高になるが、嗜好の変化に合わせた商品だといえる。その点、自社生産のメーカーを補完する役割として、ニッチな需要を汲み取った戦略と言えそうだ。
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