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たおやかに受け流し、疲れない“私らしさ”を生きる ラエステレン代表 岑山萌子さん

『tobira.』通信

日々の暮らしをもっとラクに生きられたらどんなに幸せだろう。

特別ハッピーでもラッキーでもなく、静かに自分を愛し、いまここにあるもので心を満たす。

そして“私”であることを呼吸するように生きる。

8、9月のマガジンテーマ「ここで暮らす」の第1回目を迎えた今回は、私らしさを自然体で生きるゲストを迎え、その人の暮らしぶりをちょっぴり覗き見する時間に。

マガジンを始めた理由やテーマについてはコチラ▼

今回の主役は『tobira.』のテーマでもある“エシカル”をキーワードに事業を展開している岑山 萌子(みねやま もえこ)さん。

廃棄されるパイナップルの葉の繊維から作られた新素材「Piñatex ®(ピニャテックス)」を使ったヴィーガンレザーバッグブランド『LAERSTERENN(ラエステレン)』を立ち上げ、サスティナブルなものづくりに取り組んでいる。

自分の“好き”を大切にしながらも、決して物事にしがみついたり、あらがったりしない萌子さん。

こだわることにこだわらず、「私」がありながらも「私」に縛られない姿勢には、「生きやすさ」のヒントがどこか隠されているようにも思う。

<プロフィール>
岑山 萌子(みねやま もえこ)
1987年生まれ。大学卒業後、専門学校でバッグの縫製・デザインを学ぶ。フランス留学を経たのち、鞄の卸会社に入社し、企画デザイナーとして勤務。2020年にヴィーガンレザーを使ったバッグブランド『LAERSTERENN(ラエステレン)』を立ち上げる。現在は自ブランドのデザイン以外にもフリーランスのデザイナーとして活動の幅を広げている。フランス人の夫と2歳息子の3人暮らし。

こだわりで相手を縛らない。暮らしにおける折り合いのつけ方

—今回のテーマは“ここで暮らす”だけど、萌子ちゃん自身は日々の暮らしのなかで大切にしているモノやコトはある?

岑山:今はやっぱり家族との時間かな。日常生活では健康を意識して朝ヨガをしたり、添加物をなるべく口にしなかったり、私なりの暮らしのルールみたいなものはあるけれど、家族との時間に比べればそこまで譲れないことではないかなって。

—確かに子どもは成長していつか巣立っていくし、家族のあり方はその時々で変化していくから今しか味わえない家族の時間は大切だよね。反面、家族という集合体で暮らすということは思い通りにならないこともたくさん出てくると思うのね。そんな時はどうやって解決してる?

岑山:う〜ん。難しいけど、基本的には「しょうがない」って受け流すことかな。例えば私自身はプラスチックをなるべく使わない生活を心がけているけれど、それはあくまで私のこだわり。夫に私の考えを押し付ければ喧嘩になるだけだから、思い通りにならないことにはこだわらないようにしてる(笑)

—その折り合いのつけ方は素晴らしいよね。これまでに自分の考えは伝えたことはあったの?プラスチックをなるべく使わないで欲しいとか。

岑山:うん。私のためじゃなくて、子どもの未来のためだよって(笑)

—納得してた?

岑山:全然してくれなかった(笑)でもたまにプラスチックの商品じゃなく木でできたものを買ってきてくれることもあるから、今はこれで十分なんじゃないかなって思ってる。

—なるほど。ポジティブな思考の切り替えだね。

岑山:うん。それこそ私はプラスチック・フリーの生活を心がける以外にも生ゴミを堆肥に変えるコンポストにも取り組んだりして、なるべくゴミを出さない暮らしを意識しているのね。

たまにストイックにやりすぎることもあるから、中立の立場で私を見て、バランスのいい状態に戻してくれる夫がいてくれると思えば、ちょうどいいのかもしれない(笑)

“当たり前にあること”への感謝が心の軸を強くする

—萌子ちゃんって意志の強さをちゃんと感じさせるのに、力の抜き方が上手だなって。そこがすごいなって思う。今は子育てしながら仕事をして大変な時もあるなかで、自分自身のバランスを保つために大切にしていることはある?

岑山:質問に対して答えが少しずれるかもしれないけれど、家族に感謝の気持ちを持つことかな。

—というと?

岑山:子どもはかわいいけれど、やっぱりずっと一緒にいるとイライラしちゃうこともあるし、仕事の時間もとれなくてストレスを感じるときもある。でも考えてみれば、今こうやって私が好きなことができているのは夫の支えがあるからだし、大切な息子もいてくれて、“当たり前にあること”に感謝することで私も冷静になって、気持ちのバランスが保てるようになったのね。

—確かに感謝するってすごく大切なことだよね。“当たり前にあること”に目を向けることで、ないものねだりをしている自分に気付くし、あらためて「自分は自分」という気持ちで前向きに取り組める気がする。

岑山:うん。まさに「自分は自分でいい」っていうことも同時に私が大切にしていること。やっぱり他人に同調して流されたら自分の幸せを失うというのはあるし、自分を見失わないという意味では「自分は自分」というブレない心は常に意識してるかな。

—萌子ちゃんって「私はこうです」っていう自己主張みたいなのは強くないのに、「私は私」っていうことをすごく自然体で体現してるよね(笑)

岑山:えっ、そうかな〜(笑)でも常識とか周りの目よりも自分の気持ちを優先して生きてきたと思う。会社員時代は前例がないことでも提案してやらせてもらってきたけれど、やっぱり周りの目を気にしていたら新しいチャレンジはできなかったから。

パイナップルから生まれたPiñatex ®素材を使用したラエステレンのトートバック

Piñatex ®素材を使用したラエステレンのミニショルダー

—多分萌子ちゃんなりに迷ったり悩んだりしているんだろうけど、変にジタバタしないというか、静かにわが道を進んでいる感じがいつも印象的。

岑山:ありがとう(笑)でもたどり着きたい理想があるならまずはそこに向かって地道にやっていくしかないし、何をするにしても困難は必要なプロセスだと思ってる。会社員時代に仕事がうまくいかず苦労したときも、「辛いから辞めたい」じゃなくて、今やっていることが将来自分のためになるかどうかを考えながら地道に続けてきたかな。

—「感情」と「事実」を分けて判断するってことだよね?

岑山:うん。それに頑張りどきはずっと続くわけじゃないし、一時的な辛抱として捉えるようにしてる。気負わず、ただ自分の信じたことを楽しみながらやるってことが大切だと思ってるから。

なるようにあるがままに生きられる人になりたい

—これからの人生、どこでどうやって暮らしたいっていう目標はある?

岑山:将来的には夫の実家があるフランスに家族で暮らすことを計画中。彼の実家は周りに牧場しかないような田舎だから以前はさすがに住めないなって思ってたけど、子どもが生まれからはこういう自然にあふれた環境で子育てできたらいいなって思うようになってきた。

—具体的なイメージはある?

岑山:まだないかな。でもフランスの田舎に住む夫の友人夫婦に、旦那さんが木材で家具を作って、奥さんが木のアクセリーを作って自分たちのお店で売るということをやっている人たちがいるのね。自分たちで野菜を作って食べて、インターネットもない生活をしているんだけど、初めて彼らの生活を見た時にこういう暮らしも素敵だなってすごく印象的だった。

彼らと同じことがしたいというわけではなく、こういう小さな暮らしがしたいなって。もちろん便利な都会で暮らしている人間の田舎への憧れかもしれないけれど。

—不要なものをそぎ落とすことで暮らしの豊かさがより浮かび上がる気がするよね。

岑山:そう。最近はモノへの執着はどんどんなくなっていくばかり。色んな経験は得たいけれど、もうモノはいらないかなって。20代の頃はストレス発散で服や靴を買っていたことを振り返ると、きっと自分の足りないものを外に求めてモノを買うことで埋めてた気がする。

—確かに若い頃は自分に足りないものを何かで補う傾向はあったかも。それが着飾ることだったり、欲しいものを持っている誰かと一緒にいることだったり、外に向けて求めがちだったのかな。でも萌子ちゃんはそういうモノで自分を満たす時期を通り過ぎて、これからはどんな人になりたい?

岑山:やっぱり精神的にも物質的にも身軽な人。モノをあまり持たず、なるようにあるがままに生きられる人になりたいな。

—色んな意味で余計な荷物を背負わずに生きられたらいいよね。

岑山:本当にそうなの。でも、だからといって面倒なことを避けるとかじゃなくて、“何か”や“誰か”のために役立つ存在になって、幸せをふりまける人でいたい。

—まさにラエステレンのものづくりの根底にあることだね。

岑山:うん。でもまだまだ自分のことだけに精一杯だから、日々の心がけとしてその思いは大切にしていきたい。そしてラエステレンを通して多くの人に幸せになってほしいから、私が取り組んでいる活動もどんどん発信でいけたらなって思ってる。なので皆さん、ラエステレンを今後ともよろしくお願いいたします(笑)

【店主の編集後記】
ここ数日、彼女の言葉をすくい取っているうちに、「そうか、私は何をそんな必死に物事に答えを見出そうとしていたんだろう」と一気に肩の力が抜けた瞬間があった。私自身であろうとすることに力が入りすぎていたことに気づいたのだ。萌子さんはわからないことを無理にわかろうとしない。ただ自分の感性を信じて自分の道を作っていく。とてもゆるりと、でも確実に。彼女の率直な言葉に耳を傾けているうちに、彼女が身にまとう“生きやすさ“がどんな成分からできているのかほんの少し垣間見えたような気がする。恐れず自分を信じ続けること、物事に固執せず柔軟でいること、そして無理に答えを見つけようとしないこと。自意識過剰で頑固者の私には至難の技だが、ときに心を落ち着けて一瞬でも鏡越しにそんな自分を見つけていきたい。

取材・文・写真/『tobira.』店主

【Information】
LAERSTERENN(ラエステレン)

https://www.laersterenn.com

自然との調和と、人・動物に思いやりのあるものづくりを目指したブランド。現在は主にヴィーガンレザーのバッグやお財布を扱う。

アニマルフリーかつ環境に配慮された素材を使用し、シンプルで機能的なデザインを提案。商品は国内で一点一点丁寧に製作している。





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