鳥羽和久

子供たちと日々勉強。㈱寺子屋ネット福岡代表。著書に『親子の手帖』『おやときどきこども』…

鳥羽和久

子供たちと日々勉強。㈱寺子屋ネット福岡代表。著書に『親子の手帖』『おやときどきこども』『君は君の人生の主役になれ』『推しの文化論』など。子供や親を扱う文章は全てフィクションです。 最新情報→ https://tojinmachiterakoya.com/profile/

マガジン

  • 子どもや教育に関する記事

    親子関係、学校問題などに関する論考をまとめました。

  • 随想

    随想(エッセイ)記事をこちらにまとめました。

  • 鳥羽和久の関連記事

    鳥羽和久の関連記事(本人の記事、寄せられた書籍やイベントの感想など)

  • 本や映画の記録

    読書記録や書評、映画評などをまとめました。

  • BTS(防弾少年団)に関する記事

    BTS(防弾少年団)に関する論考をまとめました。

最近の記事

苦手意識について考える

大人のほとんどが、子供の頃できなかったことを、今もできないできないと胸に抱えながら生きている。(2024.7.3) 大人になって何度も「私は○○ができないな」「私は××が下手だ」と考えることがあるが、これらは多くが子供時代の苦手意識の反復で、人生はこういう反復に貫かれている。(2024.1.9) 人は日々変化していくし物事には様々な象面があるから、一度苦手だと思っても本当は何度でも出会い直せる。しかし、相対的に形成された苦手意識がその人の身体を固まらせて出会い直すことを妨

    • バランスについての心理的な話

      自分の両親が多少バランスを欠いた人間だったとして、子供がそのことに容易く気づけるわけがない。両親がその子供にとっての世界だから。(2023.7.5) 過度に倫理的な人はそれだけでバランス崩してる証拠だから気をつけなよ、という話をした。(2021.9.28) バランス感覚がいいと言われる人は別にバランスを取ってないことが多い。そして、ちょうどいい距離感、というときは、別に距離をはかってないことが多い。不作為。しかし、バランスを取ろうとすると途端に体勢を崩してしまうところに人

      • 『さびしさについて』を読む

        『さびしさについて』植本一子・滝口悠生(ちくま文庫)は、もともと自費出版として出された『ひとりになること 花をおくるよ』収録の往復書簡(2021年11月から翌年4月)に新たに2往復のやりとり(2023年7月から11月)が追加されたもの。 往復書簡には、相手の全力の言葉に対してその都度に全力で応答するという流儀の誠実さが見られることもあるが(その例として真っ先に浮かぶのはやはり『急に具合が悪くなる』宮野真生子、磯野真穂 著)、この本では、相手の言葉を参照点にしながらも、思考が

        • ジンのD-Dayに寄せて

          今日はソクジンのD-Day。彼を待っている間に、待っている人みんなが1年半ぶん年をとったというのが感慨深い。長いようで、The Astronaut からもうそれだけの時間が経ったなんて早すぎる…とも思う。 以下にこれまでのジンに対するつぶやき、心の叫びをまとめました。 BTSのもっとも年上メンバーであるJINは、人生の階段を大切にしながらも、執着を持たずに生きることを努めて意識している人です。動画を観ていると、よく「嫌なことはすぐに忘れるようにする」「良いことも悪いことも

        苦手意識について考える

        マガジン

        • 随想
          20本
        • 子どもや教育に関する記事
          20本
        • 鳥羽和久の関連記事
          110本
        • 本や映画の記録
          10本
        • BTS(防弾少年団)に関する記事
          5本

        記事

          「反省」という病について

          人が反省してるときって、単に他人の反省しろ落ち込め不幸になれという自分に向けられている(と想定される)負の欲望を内面化してそれに準じようとしてるだけで、自身の手持ちの感情ではないことが多い。だから反省には卑屈さと自己憐憫が付き物。手放したほうがいい。(2022.12.7) さかんに反省したがる人がいるが、その実は「卑屈になってもこの身勝手な欲望を認められたい」という思いの発露であることが多い。反省しているときには、反省したがっている自分に気づくのがとても大事。(2022.1

          「反省」という病について

          町屋良平『生きる演技』書評(改)

          この小説『生きる演技』は、長編小説ならではの巻き込む力が暴力的なまでに強く、読んだ後は心と体が硬くなってまともに言葉を発せずにいた。いまもその硬さが十分にほぐれずにいるのだが、年間で最も多忙な受験期に締切に強いられて書いた書評(文藝2024年夏号掲載)をもとに、それを大幅に改稿する形で、もう少しだけこの本を読み下すことを試みてみたい。私はこの小説を、暴力について、そして暴力という現実に対する「妥協」としての「言葉」や「演技」についての、著者の渾身の回答として読んだ。 この物

          町屋良平『生きる演技』書評(改)

          『庭のかたちが生まれるとき』山内朋樹著 キーワード集

          『庭のかたちが生まれるとき』山内朋樹著(フィルムアート社)から、この本を読み解くキーワードをピックアップしていきます。この記事をまとめることは5月31日に福岡に山内朋樹さんをお迎えしてお話しするためのささやかな準備の一環でもあります。 〇この記事のはじめに この本の副題は「庭園の詩学と庭師の知恵」である。ここに対句的に並べられた「庭園の詩学」と「庭師の知恵」はそのまま、本書の奇数章(庭の造形的な生成プロセスとその論理の系列ー庭の詩学)と偶数章(物体、職人、住職等の意図や振

          『庭のかたちが生まれるとき』山内朋樹著 キーワード集

          言葉に自分を乗っ取られる

          あなた、言葉に自分を乗っ取られて嬉々としてるね。(2023/10/9) 世の中がポジティブな言葉で埋まっていくというのは、それだけ許容できる認識の幅が狭くなっているということだ。(2023/10/9) なぜ言葉を大切に扱うべきかといえば、言葉は現実をつくる力があるから…という肝要なことを国語の授業において学ぶ機会がないことを考えると、国語というより言葉の授業が必要だと感じる。ちなみに国語の授業ではなぜ「国」語なのかということすら教わらない。(2024/03/26) ⇒「

          言葉に自分を乗っ取られる

          「やる気」という見立てを疑う

          子どもに日々やる気を問う親たち教師たちはやる気があるんだろうか。(2021.2.8) 相手のやる気を削ぎたいなら方法は簡単で、相手のネガティブな過去を蒸し返してそれを叩けばいいのだが、そのことをやる気を出してほしいはずの子供にする親の多さ。(2023.12.23) うちの子は全然やる気がない、偏差値が伸びなくて未来がないって思ってる親は、自分がいかに奇妙で差別的なことを考えてるかに気づいてほしい。その焦りは自信のない自分が作り出したもので、全然本当ではない。(2023.1

          「やる気」という見立てを疑う

          千葉雅也『センスの哲学』読後メモ

          昨日、千葉雅也『センスの哲学』を台湾‐福岡の機上で読み終わったので、ここにメモを残す。 現代の「作品」は、フィールドワークなどを通して個別のコンテクストを拾い上げることに重きが置かれるし、作品の土台にある権力勾配について無自覚であってはいけない…というような昨今の「常識」に対して、旧来のマウント的な〈ツッパリ・フォーマリズム〉(しかしこのネーミングには単なる批判ではなくユーモアと敬意を感じる)ではなく〈平熱のフォーマリズム〉を推奨するのがこの本の中身だ。 フォーマリズムと

          千葉雅也『センスの哲学』読後メモ

          いわゆる仕事観

          心の隅で「私はこれがあまり得意ではないな(好きではないな)」と思いながら長いこと仕事をしている人は多い。好きや得意なんて変わっていくものだし、それでもやり続けるということに「尊さみ」が生じるのは事実だが、その状況をどれだけ正当化したところでその人にストレスを与え続けるので、結果的にそんな自分を正当化したまま状況自体を破壊する(ことで自身を解放する)ような人もいる。自分に「尊さみ」ではなくまっとうな尊厳を与えながら仕事をするのは大事だ。(2024.5.2) 公私混同という言葉

          いわゆる仕事観

          1991年2月27日

          学校の廊下を歩きながら急にフラっとした。倒れることはなかったが、この感じが今の僕なのだと思った。もう中学校も卒業だというのに、僕は最近、すっかり元気がなくなってしまった。頭にずっと靄がかかっていてすっきりしない。さっき下級生の女子が、すれ違いざまに僕の方を見て笑った気がする。もしかして僕は彼女たちが思わず笑ってしまうような恥ずかしい存在なんだろうか。僕はもう本当にみすぼらしい。 保健室の前を通る。保健の先生は優しいけどちょっと迫力がある。元気がないときに会うのはきついから、

          1991年2月27日

          友達って

          先日、「友達」についてのインタビューを受けて、その際に私の中での「友達」の定義を考えてみた。それは、君はこれからもそんな調子で君の好きに生きたらいいじゃない、と相手の生き方を全面的に面白がれる関係性のこと。 「友達」と同義で用いられることがある「仲間」だと、部活動だったりクラスだったりするとまとまって何かをいっしょにやらないといけないので「君はそんな調子で好きに生きたらいい」とは言えない。だって共同の目的を持つのが仲間だから。そこには協調性という軸があり、同調圧力もかかる…

          LA(高校生哲学対話)授業

          noteは昨年12月に始めたばかりで、その使い方として、すでに書いた文章のアーカイブ用という位置づけをしていたのだけど、それに備忘用という用途を加えようと思う。今日は昨日行われたLA(高校生哲学対話)授業について。 この授業の概要は以下 ◆LA(リベラルアーツ)が目指すこと <授業内容> ・開講は4~7月のみ *最終は7月7日 ・リベラルアーツは「自由を獲得するための知識」の意味 ・毎回テーマごとに現代の論点解説と対話 ・予定されるテーマ  意識と認識  存在と時間  

          LA(高校生哲学対話)授業

          福岡エリア、滞在するなら

          先日、平倉圭さんとのメールのやりとりで、福岡の滞在エリアのオススメを案内する機会があったので、少し編集してこちらに載せます。他にもたくさんありますが、私の観測範囲でということで。 (1)市内 柳橋連合市場周辺(渡辺通駅) 天神も博多も近く利便性が高い 古い市場が面白いけど、一部再開発が始まってしまっています けやき通り・護国神社周辺(六本松駅/または赤坂・大濠公園駅) 天神や大名が近く利便性が高い上に、大濠公園日本庭園、舞鶴公園、福岡市美術館などのランドマークがすぐそば

          福岡エリア、滞在するなら

          社会的価値に対する抵抗

          社会がいまこうだからこうしようという判断は基本的にやらない方がいい。たかがしれるので。(2024.4.3) 日々の仕事について社会的意義を語り出すとどうしても虚飾が張り付いてくるので、目の前の現実に反応できる状態こそを保持したい。(2023.9.27) 学校や社会に馴致した我々の選択は、すでに能動的な主体性を奪われた後の受動的選択でしかないのに、選択はそこに主体性があるよう錯覚させるようにはたらく。(2024.3.14) 悪事やタブーに片足つっこむことなく無難に大人にな

          社会的価値に対する抵抗