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AIは人間の心を理解する?

 AIが人間のように振る舞うことと、AIが人間の心を理解することは全く別の話だ。これらを混同しては見誤る。
 AIに人間の心の理解を期待する時、無意識のうちにAIが心を持っていると錯覚しているのではないだろうか。これは大切なことだから覚えておく必要があるが、AIは人間と同じ心を持つことは無い。

 人間の心を理解する、と簡単に言うけれど、人間だって人間の心を理解などしていない。理解しているのは、今この瞬間に自分の頭の中をよぎる何かであって、それだってどこまで正確に把握出来ているか疑わしい。
 心は常に揺らいでいる。どこをどう捉えるのが正しく心を理解したことになるのか。言ってみれば心とは、一人の人間の中で起きているあらゆる現象の総体を他人が見た時に受ける印象のことだ。「心」という何かを持っているのではなくて、起きている一連の現象を「心」と呼んでいる。それはあたかも自分の「中」にあるかのように思えるが、それを外から見た時にはじめて「心」として形作られる。

 だから、それが人間ではなくAIだとしても、まるで心を持っているかのように見えることは十分にあり得る。外からそう見えるのであれば、それは心であることに違いない。そう、AIは心を持つことが出来る。
 しかし、AIが持つことの出来る心はAIの心であって、人間の心ではない。人間と同じ身体を持たない限り、AIが人間と同じ心を持つことはない。もし仮に人間と同じ身体を持つAIがあったとしたら、それはAIというよりもクローンだ。AIが半導体で出来ている限りは人間の心は持ち得ない。

 そうだとすれば、AIが人間と同じように人間の心を理解することはあり得ない。
 もっとも、悲しそうにしている人を見た時に「悲しいのですか?」と聞くのではなく「悲しいよね」と声を掛けるだけで、心を理解しているように錯覚させることは出来る。嬉しそうにしている人に「何か良いことがあったのですか?」と聞くだけではなく、「それは嬉しいですよね」と返してくれると距離が縮まった感じがするだろう。
 あるいは、足の小指を家具にぶつけて「痛ッたーい」と言った時に「それ痛いよねー。分かる」と言われたら共感して貰えたと思える・・・・か?。
 いや、お前にこの痛みが分かる訳ないだろ、と思いはしないだろうか。
 翻って、悲しいよね、嬉しいよねなんて相槌を打たれてちょっと親しみを感じたけど、よく考えれば『人の心を動かす会話術』みたいな書籍に書かれていることを実践しているだけじゃないかと思えてくる。

 でもそれでも、夫よりだいぶマシだと思えそうだし、何を話しかけても生返事な恋人よりも心を理解してくれていると思えそうだ。
 そんなAIが人間の幸せをサポートしてくれる日が来るのは案外近いのかもしれない。

おわり

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