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働くとはどういうことか

 就業時間外には仕事に関することはしたくない。
 そう思う人も多いだろう。
 それは業務命令ですか、と言いたくなることもあるかもしれない。
 表面的にはブラックと紙一重と誤解されがちなので言い方が難しいのだが、就業時間とは関係なく、あなたの生活は仕事の一部なのだ。だから、休日は仕事と無縁に過ごす、というように仕事と生活を明確に切り分けられると思わない方が良い。
 もしこれを聞いてブラックと思うのだとしたら、それは広い意味での仕事のことを理解していない可能性がある。

 実は、仕事にはふた通りある。

 ひとつは会社のためにあなたの時間を差し出すことによって報酬を得るという類のもの。つまり時給を貰って働くような仕事。一般的なサラリーマンもこちらに属すると考えて良い。ここでは便宜上これを時給系と呼ぶことにする。
 もうひとつは、あなたの行いが社会の誰かの役に立つ見返りとして報酬を得るというもの。つまり、与えたものに見合った料金を貰う類のもの。一般的には自営業や経営者、専門職が当てはまる。ここではそれを専門系と呼ぶことにする。

 どちらもあなたの行為が最終的には社会の役に立っていることは共通している。
 このふたつの違いは、あなたの仕事に対する考え方と報酬の額の決め方によって生じる。

 時給系の場合、あなたの視線の先にはあなたを雇う会社がある。そして報酬は会社がほぼ勝手に決めている。あなたがどれだけ効率よく仕事をこなして生産性を上げて会社が儲かってもあなたの時給は簡単には上がらない。少なくともあなたはそう思っている。

 専門系の場合、つまりあなたの労働が社会に役立った価値の分だけ報酬を貰う場合、あなたの視線の先には会社ではなく社会がある。つまりあなたの意識が社会と繋がっている。その場合、あなたが行ったことと報酬には相関性がある事が多い。

 あるいは、こういう風に捉えることもできる。

 時給系は時間的空間的に拘束される代わりに職と収入という安全を得ている。極端な話、仕事を多少サボっても給与は支給される。
 専門系は提供したサービスが良ければ評判が上がったりリピートされるようになるが、内容が芳しく無ければ相手にされなくなることになるというリスクを負っている。多少サボればその分だけ実入りは減ると思った方が良い。


 あなたがもし時給系の仕事についているのだとしたら、時間外にやる仕事はサービス残業となる可能性が高く、キャリアアップが自在にできる転職市場があるのでもなければスキルアップのための個人的な努力は報酬に換算される可能性は低い。なぜなら、あなたのサービス残業やスキルアップによる生産性向上によってサービスや製品を安く提供できるようになれば喜ぶ人が多いからだ。
 しかし専門系だった場合、そもそも時間や空間で拘束されているのではないし、スキル向上が報酬に直結する可能性が高く、つまりそれは報われる努力であって、喜びやモチベーションの一部ですらあるだろう。あなたが提供するサービスで喜ぶ人の顔が増えればなお動機付けられ易い。
 

 社会が複雑化した現代では、あなたの行いが誰のために役立っているのかは見えづらいのが普通だ。それは特に時給系の仕事の場合に顕著になる。直接目にするのは上司の喜ぶ顔となればモチベーションはだだ下がりというのも頷ける。

 しかし考えてみて欲しい。
 いや、想像して見て欲しい。
 あなたの仕事によって喜んでいるのは実は上司だけではない。そのずっと先の見えないところでは助かっている人がいる。なぜなら、誰の役にも立たない仕事には値段が付くはずもないからだ。あなたが仕事によってを報酬を貰えているとしたら、その代金を払った誰かの役に立っているということだ。

 もし報酬が低すぎるとしたら、喜ばせる量が足りないか、途中で誰かがパクっているか、それともあなたの雇用を維持するための経費が掛かっているかだ。どうしても報酬に納得出来なければ、自分で製品やサービスを開発し、直接自分の手でサービスや製品を欲する人に届ければ良い。

 仕事は生活や人生の一部では無く、生活や人生のために利用するものだと思っている人は恐らく時給系の職業に就いているのだろう。
 仕事も生活や人生の一部だと言う人は、恐らく専門系の仕事に就いているのだろう。
 どちらが正解というのではない。2つの種類があるのだと気が付くのが重要だ。
 そして、どちらのタイプだとしても、どうせならあなたの仕事によって誰かの顔を笑顔にしていることをイメージして働く方がハッピーになれる人は増えるだろう。

 だから、自分だけが得をしようとか幸せになろうという思いが強いほど、それらが遠ざかって行ってしまうというものだ。

おわり

 

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