eスポーツを可視化する [スポーツが持つ感動と共有のフレームワーク]
試合前はあんなにディスりあっていて、試合中は相手が壊れるんじゃないかというほど殴り合っても、拳を交えた試合後は友情が芽生える。格闘家がそう語るのを聞いたことがある。
試合という非日常の舞台で、肉体的にも精神的にも極限の状態に追い詰められて真剣に向き合ったモノ同士しか分からない経験が友情につながるということになろう。
そこまで極端な例でなくとも、部活や学園祭、サークルなど、同じ目標に向かった活動を通じて感動を共有した仲間と強い友情が生まれる場面はあちこちにある。
プロスポーツの中継の殆どがライブ放送で行われ、皆が生で観戦するのは、試合で巻き起こる感動を選手のみではなく観戦者も同時に共有することにとてつもない価値があって、それこそがスポーツを社会的・商業的に成立させている理由だからだ。
スポーツをすることによる感動は、試合を通じて多くの人に共有されることによって、より多くの感動を共有して、大きな共有意識へと昇華される。それは人類愛に似た感覚と言ってもいいかもしれない。
初めて会った人でも同じサッカーファンというだけで何だか親しくなれる気がするのは、スポーツを通じた共有意識の働きだ。
試合の場での時の共有以外にも、選手の生い立ちといったようなプロフィール情報、選手へのインタビューやドキュメント映像などのように選手が考えていることや気持ちの変化を伝える情報、競技スタッツ情報など様々な補足情報によって、観戦者を含めた関係者全員が情報を事前に共有し、試合というフィールド上で感動の共有として結実する。
そして試合を観戦した人たちの『凄ぇ試合だった』とか『感動したー!』というツイートが「いいね」とともに拡散され、感動の共有の渦が生じる。
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2ヶ月後に開催されるスポーツの観戦チケットが手に入った時あなたはどうするだろうか。いつも観戦している競技であっても事前に選手情報やこれまでの試合経過などのおさらいをして観戦本番に備えるだろう。そして楽しみを共有したくて友人と連絡を密にするだろうし、何を着て行くか、何を持っていくか、どこで待ち合わせしてどこで昼食を取って、などとその日の行動スケジュールを空想して楽しむだろう。
スタジアムの全員の意識が選手のプレーに集中し、歓声やどよめきの一員になって盛り上がる、あの感覚に身を委ねて楽しむだろう。
試合の熱狂と得も言われない感情を誰かに伝えたくなるだろう。
そして、また次も見に行きたいと思うだろう。
こういった一連の体験全体がスポーツの醍醐味ではないか。
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ネットワークを通じて個人やチームで戦うeスポーツ。
試合の様子はネットやテレビでライブ配信される。配信を見れば試合の様子は分かる。最近の配信では実況も解説もあって非常に分かりやすい。
私は年柄もなく、若者たちが興じるeスポーツの大会を見たり、自分でも触ってみたりして、恐らく50歳を超えた年齢の一般人にしてはeスポーツとの関わりが強いと自負している。
そんな私でも、eスポーツの大会を見ていて他のスポーツほどには盛り上がらないなぁと思っていた。社会が盛り上がらないのもそうだが、観戦しているこちら側が盛り上がらない。なにしろ他のスポーツを観戦した時のような感動がない。
それは恐らく競技対象であるゲームタイトルを私がやり込んでいないせいだろうと思っていた。
しかしその考えは間違っていた。
つまり私にとっての2021年は、eスポーツだってやっぱりスポーツなんだと気付かされることと出会った年だった。
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過去に私の記事でも取り上げた『ApexLegends note creator's cup』。
この第二回大会が昨12月25日に終幕を迎えた。
これは言ってみれば草の根eスポーツ大会。素人が主催し素人が参加するコミュニティ大会だ。強すぎるチームは参加できないルールにもなっていて、楽しむことメインな大会と言える。
実際の試合が行われたのは2021年11月29日の1夜のみであった。それなのになぜ1月以上たった今頃終幕なのか。そもそも大会は試合の約1ヶ月前から既に始まっていた。それこそがこの大会の画期的なところだ。
この大会では、試合に参戦するチームのうち少なくとも一人はnoteへの投稿が義務付けらている。これが肝だ。
そして投稿されたnoteを最終的に審査員が読んで入選作が発表される。その発表があったのが12月25日。175本の投稿があったという。
入選かどうかはおまけ的要素ではあるが、選手や観客、チーム関係者などが試合前や試合後にnoteに記事を投稿するというこの仕組みは、他のスポーツにはあってeスポーツに欠けていた、観戦者を含めたみんなが競技を通じて感動を共有することを実現させた。
この大会を通じて、主催者、競技者、観戦者、そしてこれらの廻りにいる人々に意識の共有が起こり、友情が芽生え、感動が巻き起こった。
それは草の根eスポーツ大会が、れっきとしたスポーツ大会になった瞬間だった。プロスポーツ大会で実現されているようなことが、この小さな大会で現実となった。
試合に向けての取り組みや選手紹介を投稿したnote記事で読み、試合を見て、試合中にチーム配信でチーム内で交わされる会話を聞いて、試合後に書かれた選手やコーチのnoteを読み、ツイートを読んで感動に涙した(本当に涙した)なんて経験をさせてもらえるとは思っていなかった。
eスポーツを通じて友情や愛情が育まれる現実が、noteによって逐一詳らかにされる。それを読んで部外者である私のような者も感動の渦に巻き込まれる。もうすっかりファンやサポーターといった心境だ。
この大会は、eスポーツを通じて起きているいろんなことを可視化して、みんなが共有することで、目には見えない繋がりのアツい共有意識を造った。つまり、粗いものではあったかもしれないが、プロスポーツ興行で実現されている要素がギュっと詰まっていた大会だった。
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試合配信を見たときの私が感じた物足りなさは、私の努力不足だけではなく、eスポーツに感動の共有やそれを実現する仕組みが欠けていたからだったのだと気付かされた『ApexLegends note creator's cup』。
eスポーツスポーツ関係者はもちろん、ゲームはスポーツじゃない、eスポーツはスポーツじゃないという考えの方々には是非、このnote creator's cupに注目して欲しい。
でも、過去記事を読んだりするだけじゃきっと伝わらないんだよなー。
スポーツなんで、ライブじゃないと伝わらないんですよ、本当に重要な何かは。
おわり
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