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双極性障害が正しく診断されるまでには8年もかかる!?『Shrink~精神科医ヨワイ~』

精神科医にかかるというのがすごくマイナスのイメージにとられるということは減ってきているとは思う。でも、風邪をひいたり、湿疹がでたりといった病気で気軽にクリニックを訪れる感じにはまだなってはいないのではないか。

この作品は精神科医とその患者の日常を丁寧に描いている。とりわけ医師の活動をストーリーのメインに据えるのではなく、患者の人生を深く描こうとしているところがおもしろい。

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『Shrink~精神科医ヨワイ~』(七海仁/月子/集英社)より引用

自分の取り扱い説明書を知って、生きやすくなるように

2巻までにおいて扱っている病名は「パニック障害」「微笑みうつ」「大人の発達障害」「双極性障害」で、患者の生活にフォーカスしてストーリーが進んでいくことで、読み手に病気に対する理解が深まるようになっている。また、クリニックの経営のポイントとして、次回の予約を入れてもらう事などの大切さとか、心療内科と精神科の違い、その治療に対するスタンスの違いなど、「いい患者」になるための情報も網羅されている。

そして読み進めるうち、精神科や病気に対する理解が深まり、やっぱりこれは誰にでも起こる可能性のあることだなって思えてくる。

例えば、自閉症がスペクトラム(症状などが、あいまいな境界をもちながら連続している)だということが描かれている。要は範囲があり、個人個人に程度の差がある症状だということだ。そこには「注意欠陥・多動性障害」「学習障害」「自閉症スペクトラム障害(以前アスペルガー症候群、自閉症と呼ばれていたもの)」が含まれる。自分の取り扱い説明書を知識として持つことが、そういう個性を持つ人たちが生きやすくなるためにすごく大切である。そうしたことが患者の物語によってわかりやすく描かれている。

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『Shrink~精神科医ヨワイ~』(七海仁/月子/集英社)より引用

また、症状がうつ病と間違われやすく、正しく診断されるまでに平均8年かかるといわれている「双極性障害」になったラーメン屋の店主の話は、非常に参考になった。まずそうした診断が下されるまでに時間がかかるということ自体が貴重な情報だし、その特徴を知ることで自分や身の回りで起こる異変に気づきやすくなる

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『Shrink~精神科医ヨワイ~』(七海仁/月子/集英社)より引用

漫画で知識を吸収して、心の健康を保とう

私も、うつだと思っていた友人が突然活動的になり、やたらと連絡をしてくるようになったという経験があった。この漫画を読んでいたら確実に「双極性障害」を疑っただろう。知識は現実をよく見るためのフィルターになる。それが漫画であればさらに効率的に知識を吸収できる。そういう意味でとても大切なテーマを扱った作品だ。

厚労省のデータによれば2002年(平成14年)から2017年(平成29年)までで、うつ病、認知症などの精神疾患の患者数は200万人以上増えている。

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私達の周りの学校や職場でこうした患者がでることは、もはや稀なケースではなく、1家に1冊、1社に1冊そなえて読まれることをオススメする。心の健康は知識から。

WRITTEN by 角野 信彦
※東京マンガレビュアーズのTwitterはコチラ

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