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「好き」は言葉や文化を越える。ゲーセン店員と英国少女のほのぼのラブコメが癒しの極み『ゲーセン少女と異文化交流』

【レビュアー/西川裕貴

こんにちは! ゲーム制作会社「サイバーコネクトツー」の西川裕貴です。

皆さんは「ゲームセンター(ゲーセン)」に対してどんなイメージを持っていますか?

私が生まれた昭和の時代は、ゲーセンといえば一般的に「薄暗くてタバコ臭い場所」「不良の溜まり場」のようなイメージが強く、遊びに行く人も度胸が試される場所でした。

特に対戦格闘ゲームを遊んでいると、対戦の仕方や結果によっては相手(特に不良)とのリアルファイトが発生しそうになるため、相手を分析しながら接待プレイをしたり、トラブルが起きないように戦略的撤退をしたり…などといった処世術を学ぶことができたのも、今となっては良い思い出です。

そんなゲーセンも「昭和」「平成」「令和」といった時代の移り変わりや、業界の方々&ゲーセン店員さんたちの努力の結果、今では「明るくて賑やかな場所」「カップルや親子連れも楽しめる場所」へとイメージが変わりました。

「クレーンゲーム」「メダルゲーム」「対戦格闘ゲーム」「ドライブゲーム」「ガンシューティングゲーム」「リズムゲーム」などなど、色んな種類のゲーム機が並んでいる光景は圧巻であり、私のような40を過ぎたオッサンでも、ゲーセンに行くと童心に返ったようにテンションが上がります。

今は新型コロナウイルス感染症のせいで不安な状況が続いていますが、もう少し世の中が落ち着いたら、ぜひ皆さんもゲーセンで楽しい時間を満喫してもらえたらいいなと思います。

さて、そんな流れで今回ご紹介する作品は、ゲーセンで知り合った男女のほのぼのラブコメ漫画『ゲーセン少女と異文化交流』です。

本作の主人公・草壁蓮司(くさかべ・れんじ:18歳)はアルバイト先のゲーセンで、長時間クレーンゲームを遊び続けている外国人の少女を見かけます。

少女の名はリリー・ベイカー(13歳)。

親とともに英国(イギリス)から日本へと引っ越してきた彼女は、日本語での会話が苦手なために学校で友達ができず、ひとりでゲーセンで遊んでいました。

しかし、お金をいくら使っても目当ての景品が取れず、少女は途方にくれます。

そんな少女の様子を見るに見かねた主人公が、代わりに景品をとってあげたことがきっかけで、「大学生のゲーセン店員」と「中学生の英国少女」の交流がスタートするのでした……。

本作は安原宏和先生ご自身のTwitterで発表された後、現在KADOKAWAの無料マンガサイト「ドラドラしゃーぷ#」で連載中です。2020年12月には、単行本1巻が発売されました。

本作のオススメポイントは、ズバリ「英国少女のリリー」の可愛さです。

主人公・蓮司のためにオシャレを頑張ったり、逆にそっけない態度をして気を引こうとしたり、女性客への蓮司の接客態度に嫉妬したり&落ち込んだり…と、恋する少女・リリーの天真爛漫さを見ていると、蓮司よりも先に、読んでいるこっちが「尊死」しそうになります。

また、蓮司とリリーはお互いの言語を上手く喋ることができないため、ゲーセンにあるコミュニケーションノートのような感覚で「交換日記」を始めるのですが、そのやりとりが実に初々しく、読んでいるこっちまで「なんだか照れくさい」気持ちになってしまいます。

たとえ「言葉がうまく通じなくても」「生まれ育った国や文化が違っても」相手を思う気持ちがあれば歩み寄っていける……。

本作はそういった「人として大事なこと」を思い出させてくれる作品です。

未読の方はこれを機に読んでいただき、今後はリアルタイムで連載を追っていただけると嬉しいです。


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