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小中学生の頃の自分に知ってほしいこと

新年度から小中学生対象のフィジカルアカデミーのお手伝いをすることになりました。自分は小中学生の頃から怪我が多く苦しみました。大学生になりスポーツを学ぶようになり、当時から、“ああしておけば良かった、こうしておけば良かった”と実感する機会が多くなりました。そんなことがきっかけで小中学生に運動指導をしたいと思っていました。

今回のnoteは子供に運動指導する上で必要だと感じた概念や知識、生理学をアウトプットしたいと思います。

【大きな外枠として使用する概念】
Long Term Athlete Development:LTAD
“子供の成熟度を考慮に入れ運動能力の発達に対してより効果的な方法を提供する”

“人生が豊かになる”
アスリートとして長い競技人生 ☞ 充実した競技人生、競技成績の向上
一生スポーツを続けることが出来る ☞ QOL向上、健康体

運動が身体に対する効果は前回のnoteで一部説明しました。
例)生活習慣病の予防や心理的にも効果があるetc.

≪長期的である必要性≫
“計画を立てて勉強しなさい”
誰しもが言われたことがある言葉。その場凌ぎで物事を実行しても何も成し遂げることはできない、もしくは、成し遂げることができる物事は自分自身の本意ではないものだろう。

引用:近藤克則,研究の育て方,医学書院

1をするのは当たり前。
アをするのは他人の評価を気にしている。
イをする人はなりたい自分に近づくことができる。
★いかにイに時間を費やすことができるか。

LTADに応用すると…
将来の伸びしろのために、地味な=退屈な基本的な動作を身につける。(楽しくできるかは指導者の能力)
目先の楽しさに囚われてどうでもいいことをするのは愚か者。

自分は17年間サッカーしかプレーしてこなかった。
最近では、こんなエビデンスもある。

NBA選手を対象にした研究。
マルチスポーツをしていた方が怪我する確率が低い。
そんな考えを支持する概念を2つ記す👇👇


一つ目
【早期の競技スポーツ特化】
“若い年齢において、その他の競技を排除した特定の競技の集中的な通年トレーニング”

日本では早期の競技スポーツ特化が主流である。
理由は、上記でも述べたようにほとんどの学生スポーツは、“通年”で行われるために、他のスポーツをやる時間やタイミングがない。

それよりも、影響が強い理由がもう一つあると思う。
やった分だけうまくなる”的な概念。
無意識的に影響を与えた概念が“10年ルール”だと思う。↓

“10年ルール”
10 年という期間は達人と考えられる知識レベルを蓄えるのに十分な時間であるというチェスを教える際の一般的な基準。この理論を競技スポーツに用いると、アスリートが特定のスキルや競技で最高のパフォーマンスを行なうために、スキルの発達を早期から始める、つまり、専門的な活動に特化した競技スポーツの練習をする必要があると結論づけることが出来る。

これらの概念に基づいて、早期の競技スポーツ特化が一般的になっているが、早期の競技スポーツ特化のネガティブなポイントを下記に記す。

1.モチベーションと興味
やる気のないものには興味を持たない。誰しもそうだろう。特に子供の場合は顕著である。基礎的な運動能力がない、運動制御や操作ができない人が、幼少から競技スポーツ特異的なトレーニングや戦術練習をしても、つまらないだろう。

2.成長と受傷リスク
子供の身体は成長段階であり、骨には成長軟骨等がある。特に成長軟骨は運動によるストレスに対して脆弱である。上記でも述べたように、日本人は“やった分だけうまくなる”という概念を持つため、過度な量の練習をしてしまい、結果としてオーバートレーニングになりがちである。オーバートレーニングは、Osgood Schlatter病や野球肘等のオーバーユース障害や下記の症状を発症する。対処としては、継続的にストレスを与える反復的な動きを休止し、休息することが重要である。

引用:青少年における早期の早期の競技特化と多様化,JSCR

※傷害リスク:1.6倍、オーバーユース障害:1.5倍

3.バーンアウト
一つの競技の早期特化による負の影響であり、“アスリートの競技に対する心理学的および生理学的要求による身体的および感情的な疲労”と定義される。楽しみであった競技スポーツから退き、その理由が上記で述べたものであるという深刻な問題である。また、パフォーマンスの低下と傷害の増加によりうつ病になり、競技やチーム活動から抜けることもある。


★対の考え👇

2つ目
早期の競技スポーツ多様化
様々なスポーツや活動への参加を通し、アスリートが多面的な身体的、社会的、そして心理学的スキルを発達させること


競技スポーツの多様化の信念は、1つの競技スポーツではなく、複数の競技スポーツをプレーすることで、潜在的なクロスオーバー効果により、身体的および認知的な能力がより早く発達することである。
複数の競技スポーツをするということは、1つの競技スポーツに費やす時間も短いため、まず楽しむことを目的に置いたトレーニングをする。
これは子供が継続することに繋がり、その中でトレーニング内容を変化・レベルアップすることを可能にする。

※オリンピックアスリートがユース時代までにプレーした競技スポーツの種類
10y:3.11、10-14y:2.99、15-18y:2.20、22y:1.31

また、こんなエビデンスもある。

エリートアスリートにおける早期競技スポーツ特化への参加傾向を調査している研究者たちは、早期特化は優秀な運動神経発達の必須要素ではないことを発見した


LTADを実施する上で指標となるのが身体の成熟👇

【成熟度の指標】
Peak Height Velocity (Age):PHV(A)
“最大身長増加速度(年齢)”

Peak Weight Velocity :PWV
“最大体重増加速度”

引用:飯田悠佳子,身体の発育と発達,日本AT学会誌

PHVの出現前後で身体能力に変化が起きる。というのは、細かいことはわからないが、成長に関わるホルモン濃度の変化が関係しているからである。

【PHVと成長、身体能力】

骨が成長する。それに合わせて筋肉も成長する。

この時に“動きのぎこちなさ”が生じる。
イメージとしては、短い棒より長い棒を素振りする方がより大きな力を必要とする。
この現象は時間とともに解決するが、子供は繊細なため、ケアが必要である。

引用:運動生理学20講第3版

PHV群は大きなパワーを発揮できていることがわかる。

この時に適切な筋力トレーニングをすることができれば、より大きなパワー発揮をすることができる。つまり、パフォーマンスの向上につなげることができる。

また、筋力の向上はPWVで有意に向上。メタ分析において思春期の前後でも向上がみられたので、継続的に筋力トレーニングを続けることが大事である。


さらに、パワーの他の能力も適切なトレーニングをすることで身体能力の向上が起こる。(トレーナービリティ)

引用:運動生理学20講第3版

トレーニングによって有酸素能力の向上がみられる。

【まとめ】
理想は、単一の競技スポーツではなく、複数の競技スポーツを行うことで、より良いプレーヤーやパフォーマンスを可能にする。
成長・成熟に合わせてトレーニングを行う。

【今後について】
生理学をもっと勉強して効率的に指導していきたいですね。
また、今はどんなトレーニングをすればいいかわからないので指導しながら勉強していきたいと思います。
子供と一緒に成長します。

【参考文献】
1.青少年における早期の競技特化と多様化,JSCR
2.青少年の身体発達モデル,JSCR
3.近藤克則,研究の育て方,医学書院
4.飯田悠佳子,身体の発育と発達,日本AT学会誌
5.運動生理学20講第3版,朝倉書店

p.s.
趣味は何ですか?って聞かれたら、…となる。
趣味がないことが悩みです。
飽き性なんですかね?!
好きなものには熱中するのに。
よくわからない😑

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