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授業中わさび食べるJKだった

授業中チョークで書かれた白文字を消そうと、先生の目線が生徒から黒板に移った瞬間、私は机の中からわさびを出し、ちょろっと舐めてひとり辛さに涙をこらえていた。

給食の後の5限目、どうしても睡魔が襲ってくる。寝ちゃいけない。寝たら、先生に注意される。そのとき、クラス中の注目が一瞬にして自分に集まってしまうのが、すっごく嫌だった。そこで、眠くなったら机の下からわさび出して、こっそり舐めて眠気を飛ばすということをしていた。

最初はほんのちょっとだった。だけど、だんだんわさびの辛さに慣れてきて、効かなくなってくる。最初はほんの爪先ぐらいの量だったのに、だんだん量も頻度も増えてくる。完全にわさび中毒になっていた。ヤクチューならぬ、ワサチュー。

そうなると、隣や後ろの座席の子にはバレ始める。
「〇〇(私の名前)さん授業中何食ってんの?」
「え、わさび」
「へ?はぁ?」
「〇〇さん授業中わさび食ってるんだってぇー」

当時私は大真面目にわさびを食べていた。チューブのわさびは常温で学校に置いておけないからと、粉末のわさびを入手してタッパーに入れて常に机の中に入れていた。

今思い返せば、何をやってるんだか。

***

高校3年生で、当時進路に関する保護者面談の時期だった。親と担任の先生だけで、話し合うみたいなことがあった。

そこで、家からわさびを持ち出す私のことを、母が担任の先生に話してしまう。
「先生、うちの子わさび授業中食べてるらしいんです〜」

***

翌日登校するとすぐに、
「おい〇〇、わさび食っとるんか!」
と先生から声をかけられる。
「お母さんから聞いたぞ」と。

もう、恥ずかしいやら何やら。

「これまでの生徒でわさび食っとるやつは初めてだ」
と言われた。先生は全然怒っていなくて、もはや呆れていた。

本当に、ただただ眠気を覚ましたかったのだった。Google先生に、「眠気 覚まし方」と検索しても大したことは得られなかった。散歩に出かけるだとか、ガムを噛むとか、授業中にはできないことしか書かれていなかった。それで何とか振り絞った結果が、わさびだった。

それで、母に
「このわさび学校に持って行っていい?」
と聞いて冷蔵庫から持ち出した。その後腐らないからと粉末わさびが欲しくなった時も、母がネットで買ってくれた。

あれ?今書いていて思い出したが、授業中眠くて困っていて、Googleで検索してもいい案がないという私に、わさびをすすめたのは母だったような気がする。

いずれにしても、確信犯は母か。

***

高校生の時授業中にわさびを食べていたという話が、どうやらウケるらしいと気づいたのは大学生になってからだった。飲み会で、過去の黒歴史という話題が上がった時に、
「私わさび食べてたんですよ」
と言ったら、オマエやばいと言われると同時に、場がめちゃくちゃ盛り上がった。

ついでに、母経由でこれが先生にバレたという話をすると
「オマエの母さんもやばいじゃん」
ともうひと盛り上がりする。ただし、この黒歴史は話すコミュニティを間違えると、本当にドン引きされるので注意が必要。

***

最近勉強を始めて、眠いのどうにかならないかなと思っていたら、ふと思い出した。私は、わさびを食べるJK(女子高校生)だった。

今は、コーヒーやらガムやらで眠気と戦っているが、やっぱり速攻性はわさびに劣る。

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