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ネタばれミーティング07/29--高橋照美の「小人閑居」(21)

照 帆士 航さん、ちょっぺ~@歩くタイプライターさん、GlobalHomelessさん、「スキ」をありがとうございます。久しぶりの三時越えだね。
四 俺ふしぎなんやけどさあ、高橋なんでおじさんとお店の子に怒らんの。

照 お客様がいらっしゃると、そっち夢中になっちゃお、って決めるじゃん?
カクテルだって僕25種類しか作れないしさ。
イラっとしたら野菜のアクみたいなもんが出るだろ?だからお客様のことでいっぱいにしちゃうわけ。去年の僕だったらそれできてなくて、変なギザギザした空気を自分から作っていってたと思う。
あのさ、四郎の「ばん!」って叩きつけ方見たあとだと、シェイカーに絞ったライム汁「ひゅっ」て入れる軌道が、明らかにシャープなんだよ。わかる?弧を描く描線のうつくしさわかる?筆が伸びる感覚。

四 なあ。お前が舐められとらんかどうかってって、まっすぐ話ししよ。俺代わりに二人正座させてなんか言いそうや。むしろ高橋、今いっぺん怒れ、俺聞くでさ。お客さんの前で呑み込んだもん、どっかで全部出さなおかしいて。お前の仕事の足引っぱるやつ、俺ただでおくかてって思うもん。
照 あのさ。ほんとはさ。僕が受けるべきじゃない仕事引き受けたのかもしれないんだよ。一年持ちこたえたらシビアにレビューして、二年目どうするかがっつり話すつもりでいたんだ。一年たたないうちに飲食放り出すなんて、僕は引き受けちゃった以上できないから。山っ気出してムリした僕がシワ寄せを生んだかもしれないんだよ。

四 そう思うんか。
照 もしうちのおじさんみたいに燃え尽きちゃったら、寿美ちゃんやツカサの陰にかくれて廃人ぐらしするのに、珈琲屋っていいかもなー、って思っちゃったのは、あるんだよ。黙って豆の焙煎したりサイフォン見てたりして、お客さんに返事もしない変な店主になってさ。そしたらどれだけ肋骨の内側に穴があいてても、誰も気づかずにほっといてくれるだろうって。

四 だいたい俺のおじさんとお店の子、なんで会わせたんや。なあて。
照 四郎に居心地悪いままでいてほしくなかったからだよ。
四 ほうやけど。
照 本当はあの家から、四郎がさっさと出てきてしまった方がいい。物理的に自己肯定感を削がれる場やメンバーに耐えちゃいけない。
四 俺、掃除だれに任そうしらんと思って。

照 無意識に家族一同、掃除係とドアマット役を手放さない方向で一致しているのかもしれない、共依存的に。お前が便利だから。だったら先に物件探しはじめたほうがいい。初めてこの話してから結構長い時間たってること、自覚しとけよ。
四 俺表面的には家の居心地がわるて、奥の方では家でずぅっとうずくまっとる気でおるかもしれんてって話か。一人暮らしにええ物件ないなとか、お金のつごうつかんなとか、実は全部言い訳で。
照 可能性としてそうだ。僕と家賃折半したっていいんだから。
四 そうやなあ。そもそも、具体的な方法いくつも紙に書く作業しとらんのやて。仕事忙しなってまってアップアップしとるで余計やけど。

照 二人ともさ。ヤバい面持ってますね。
四 うわ、一人暮らしの様子どんな風や、感じがつかめん!俺あかんやつや!
照 ストップ、「あかんやつ判定」ストップ。自動で反射的にやらない。そこできるできないとひっつけないで無反応のまま放置で。自分は自分。どうせ色眼鏡通すなら、いいコトバかけて。
四 うわー。 


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「最大値の2割」ぐらいで構わないから、ご機嫌でいたい。いろいろあって、いろいろ重なって、とてもご機嫌でいられない時の「逃げ場」であってほしい。そういう書き物を書けたら幸せです。ありがとう!