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成長小説「秋の月、風の夜」0-99

100
死ぬほど難しい、はじめてのキス。 迫りくるタイムリミット。 親友を生き延びさせるために…… 四郎と高橋が「中の人」として活躍する、成長小説0-99です。 「100-」は別マガジ… もっと読む
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記事一覧

もくろみ・目次・登場人物紹介--秋の月、風の夜(0)

【もくろみ】 一連の「成長小説(ビルドゥングス・ロマン)」のうち1作分。 21世紀日本で…

高橋照美
6年前
5

どなられた。恩に着るって言ったのに。--成長小説・秋の月、風の夜(1)

#1 よろしくない状態スマホの着信…… (ああー) おっくうな、いやーな感じ。 指が、ポケ…

高橋照美
6年前
4

極上のコーヒーと、生涯ひとりの親友。--成長小説・秋の月、風の夜(2)

☆ 持ってきてもらった湯呑みに、コーヒーを注ぐ。 「斎藤さん、湯呑みに手盆ですいません」…

高橋照美
6年前
5

僕の親友は高卒新人で、業務オーバーフローしている。--成長小説・秋の月、風の夜(…

☆ 四郎の後姿をながめて、なんとなく高橋は斎藤課長と話を続ける。 「……四郎が来てから、…

高橋照美
6年前
4

三人で、と言ってるのに身を引こうとするのはご先祖さまのせい。--秋の月、風の夜(…

☆ 四郎にとっては、ドライブと海やプールという話題をさらに抽象化して、「そもそも論」を展…

高橋照美
6年前
3

私ってめんどくさい、な16歳。--成長小説・秋の月、風の夜(5)

#2 想い奈々瀬は通話を切って、「はあ」と小さなため息をついた。ほそいうなじがうつむいて…

高橋照美
6年前
6

あのひとのここが好き。そして困ったことにもう一人ーー秋の月、風の夜(6)

☆ 人をモノのように扱うご先祖さまや「奥の人」のようすが、四郎の中でわきあがってきてしまうとき、奈々瀬に気取(けど)られないようにしてくれる。 ……シャットアウトしようとしてくれる、そういう四郎の気もちが、奈々瀬は、好きだ。 話の通じないぐちゃぐちゃなご先祖さまたちと、大喧嘩になってもいいから、四郎に触れたい。 「奥の人」がどうしてあんなに悪魔っぽくなってしまったのか、「奥の人」じしんに問うてみたい。 人間を何だと思っているのか。どうして四郎を苦しめるのか。そのどこかお

なくした初恋を拾ってくれた人。--成長小説・秋の月、風の夜(7)

☆ 好きの感覚が、どうやら四郎に対してと、高橋に対してとでは違う。しかも二人に対して、そ…

高橋照美
6年前
6

サービスエリアで「ぼっち力(りょく)」を語る件。--成長小説・秋の月、風の夜(8…

☆ まだまだ夏の暑さが残る高速道路の風を、四郎はとても嬉しそうに受けていた。ちら、とスピ…

高橋照美
6年前
5

恋をゆずるなんて話をすると、どういう目に会うか。--成長小説・秋の月、風の夜(9…

☆ もつ煮の熱い汁が、たまらなくいい味だ。味噌仕立てで、こくがある。 ざっくりと大きく切…

高橋照美
6年前
6

自分の幸せをドアマットにしては、いけないんだ。--成長小説・秋の月、風の夜(10…

☆ 高橋の穏やかな二重まぶたの目が、わずかに細まった。四郎を見る。 「お前は自分の幸せを…

高橋照美
6年前
5

赤こんにゃく食いながら意地張ってみた。--成長小説・秋の月、風の夜(11)

☆ 高橋がなぜ、ぎりぎりと四郎が切なさや苦しさを感じるような、アクションリストを提示して…

高橋照美
6年前
4

京都の自分の店がグダグダになってるっぽい。ーー成長小説・秋の月、風の夜(12)

#3 京と大津大津と京都の間には、東山がどっしりと居座っている。 四郎を有馬先生のところ…

高橋照美
6年前
3

恋のセッティングして自分の首しめた。――成長小説・秋の月、風の夜(13)

☆ ツカサはごにょごにょと、むこうで何か言っている。電話口にしぶしぶながら、康三郎(こうざぶろう)が出た。四郎のおじだ。 高橋はすかさず、まくしたてた。 「もうさあ康さんさあ、昼間っからなにやってんのーー。先月から二週に5%ずつガタガタ売上落ちてんだからさあ、やめてよもう。このままいくと、そこ再来月閉めなきゃだよーー。しかもそこ僕が日本画描くための部屋だからね? 大丈夫? で、週に何回来てんの」 ――……一回。 あえて週に何回と聞いてみて、月に何回と訂正するかも、と思