杵築(きつき)市民が驚く、杵築と警視庁との深いつながり
私が東京から大分県杵築市に移住してから約1年半が経ち、先月久しぶりに東京を訪れた。(2024年2月)
杵築に関して多少の知識が付いたうえで東京を巡ると、東京には杵築と関連する場所があることに気がついた。
杵築市民が東京観光する際に参考になるかもしれないと思い、今回気がついた2点を紹介しておく。
その1)江戸城のほとりにあった杵築藩の屋敷
日本の歴史に興味がなくとも、東京観光と言ったら江戸城跡(皇居)周辺の散策は外せないだろう。
江戸城跡の周辺には、江戸時代から明治時代にかけての史跡が数多くあり、杵築に関連する史跡もあるのだ。
杵築藩の屋敷跡
杵築藩の屋敷は江戸城の桜田門の目の前にあったようだ。
『桜田門外の変』でお馴染みの、あの桜田門だ。
『桜田門外の変』とは、江戸幕府の事実上のトップ(大老:井伊直弼)が暗殺された事件であり、現在で例えるならば、総理大臣クラスの暗殺事件に相当する大事件だった。
(これを引き起こした原因は、井伊直弼が次期将軍を独断で決めたことと、天皇に無断で開国を決めたことだと言われている。)
その事件の襲撃場所が、杵築藩の屋敷の前なのだ。
当時の様子を想像しながら周辺を散策すればロマンを感じられるかもしれない。
杵築藩の屋敷跡には警視庁ビルが建っている
さて、杵築藩の屋敷跡が現在どうなっているかというと、なんと警視庁のビルになっている。
警視庁のビルと言えば、東京で大きな事件があればニュース映像に映るおなじみのビルだ。ドラマや映画にもたびたび登場する。
テレビでこのビルを見たときには、「杵築藩の屋敷跡だ!」と思うと、なんとなく嬉しい気分になれるだろう。
さて、杵築と警視庁の関係についての紹介はここまでにしておき、もう一つだけ東京で杵築と関連する場所を紹介しよう。
その2)日本語消滅の危機を救った杵築の偉人『重光葵(しげみつまもる)』活躍の地
太平洋戦争に敗れた後、日本語が消滅しかけたのをご存じだろうか?
マッカーサー元帥率いるGHQは、日本語を廃止し、公用語を英語に変えようとしていたのだ。
それを阻止したのが、杵築出身の『重光葵』だったのだ。
紙幣にしたいほどの功績
ポツダム宣言(日本への降伏要求)を受けて『重光葵』が降伏文書に調印した。彼は太平洋戦争を終了させた人物として知られている。
しかし彼が成したことはそれだけではない。
GHQは当初の約束を破り、日本の行政・司法・立法の権利を奪おうとした。さらに公用語として英語を強要し、当初は天皇制の廃止も目論んでいたようだ。
そのようなことがあったにも関わらず、現代にこれほど多くの日本文化が残されているのは、『重光葵』の交渉力があったからに他ならない。
彼は戦勝国アメリカからの高圧的な要求を跳ねのけたのだ。
その度胸には胸が熱くなる。私がその立場ならば間違いなく怖気ずいていただろう。
なお、その後は東京裁判においてA級戦犯となり巣鴨拘置所に投獄された。刑期を終えて出所すると外務大臣や副総理を歴任している。
GHQ本部跡
『重光葵』の交渉相手であるGHQ本部は、『第一生命館』と言うビルで上述した杵築藩の屋敷跡(警視庁本部庁舎)から歩いて行ける距離にある。
東京湾に浮かぶ戦艦ミズーリの上で『重光葵』が降伏文書に調印した時点では、GHQ総司令部は旧横浜税関に仮設置されたが、それから約2週間後には皇居にほど近い『第一生命館』にGHQ本部が移設されたようだ。
日本のために一歩も引かずに交渉した『重光葵』を思いながら眺めると感慨深いものがあるはずだ。
外務省
外務省の庁舎も上述の杵築藩の屋敷跡地から徒歩3分だ。
外交官および外務大臣を歴任した『重光葵』を感じられると思う。
巣鴨拘置所(巣鴨プリズン)
バスまたは電車で移動が必要だが、巣鴨(というか池袋に近い)には重光が投獄された巣鴨拘置所の碑がある。
背面には次のように記載されている。
おわりに
杵築から東京に行く人へ
いかがだっただろうか。
東京にも杵築と関わりの深い場所がある。
出張や旅行に出かけた際にはぜひ立ち寄ってみてほしい。
東京から大分県へ行く人は杵築にもお立ち寄りを
大分県と言えば、別府や湯布院といった温泉地が目的地になるかもしれないが、せっかくなら杵築にも立ち寄ってほしい。
重光葵が子供時代を過ごした家が残っており、中に入り観覧できる。
また、重光の家から15分ほど車を走らせると、太平洋戦争の史跡『回天の訓練施設跡』がある。飛行機の特攻隊の存在は学校でも習うし多くの人が知っているが、実は海中でも特攻作戦が行われていたことをご存じだろうか?(当時は秘密裏に行われていた)
にわかには信じられないのだが、『回天』とは人を乗せるための改造を施した魚雷だ。前が見えないために操縦は経験と勘に頼るものだった。異常な発想の作戦だ。乗り込んだ男たちはどんなに怖かったことか…
戦争を終わらせた重光と人間魚雷回天には太平洋戦争の残り香があり、感情を動かされるし勉強にもなると思う。近い距離にある戦争関連史跡なのでまとめて回ってみよう。
なお、回天の訓練施設跡を訪れる際には『特攻の島(佐藤 秀峰)』という回天を題材にした漫画があるので、読んでから訪れると良いだろう。
以上
ご参考)マイナー(穴場?)な観光地『杵築』の特徴
お城:小さなお城がある
城下町:高低差のある城下町は映え写真が撮れる
干潟:海の表情が潮の満ち引きでドラマチックに変化する(カブトガニがいるらしい)
牡蠣:九州でありながら瀬戸内海に属し、瀬戸内ならではのおいしい牡蠣が食べられる(11月-2月頃が時期)
里山:山手には段々畑が広がり日本の原風景に出会える
車で行ける島:国東半島はその名の通り半分島。船に乗らなくても島の雰囲気がある。別府から車で45分。
独自の農業システム:瀬戸内の気候で雨が少なく地形的に雨がたまりにくく水の確保が難しかった地域。独自の農業システムが生まれた。(世界農業遺産)
瀬戸内気候で雨が少ない地域なのでアウトドアがお勧め。里山や城下町を散歩するも良し、るるパーク(大分農業文化公園)は花が満開の時期に行って深呼吸するととても気持ちいい。その他、いちご狩りをやってる農園があったりして、ファミリーや恋人とのんびり過ごすのに向く市だと思う。
ただし公共交通が充実しておらず車がないと楽しめないのでご注意を。