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詩創作

24
掴めない世界
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2023年8月の記事一覧

僕は先に夜を迎えて

僕は先に夜を迎えて

どんな最期を迎えたいか。
最期を迎えるならどこがいいか。

どこだっていい。

どこでだって白いお花を咲かせられる。

そうやって逝くことができるくらいに、
この世界の彩りを手に掬って生きたい。

きっと僕は先に夜を迎える。
山の上からお月さまを望む。

あなたがちょうど眠りにつくころに、
僕は来世を迎えるのかもしれない。

僕は目覚めたときは白いお花となって——

空が曇った日。

あなたは遅れ

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微笑みの声で全て救われる

微笑みの声で全て救われる

波打ち際。
水にそっと触れた僕を見て、
微笑んだ声がきこえる。

パフェにのったモンブランを、
満足気な顔で頬張る僕を見て、
微笑んだ声がきこえる。

潮風の涼しい縁側、
空咲く大輪に目を丸くしながら振り返る僕を見て、
微笑んだ声がきこえる。

できあがった指輪のことを、
愛おしそうに見つめる僕を見て、
微笑んだ声がきこえる。

心の全てが救われる優しい声。
見つめた先に温もりをとらえているのがわ

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フルニトラゼパム

フルニトラゼパム

肩を並べると泪がでた。
小指が触れると笑みがこぼれた。

そのまま僕らは眠りについた。
夢の中に沈んだ——

限られた命の中でできてしまった、
腐った詩を読み返す。

煤けた一文字、脆い一文字、穢い一文字を、
隣で優しく掬ってくれた。

そしてハンカチで優しく撫でていた。

そうやって目が覚めたとき、
泪がおさまっていた。

肩が温かい。

乾いた光

乾いた光

空気は音に戻り、

あの音を求めている。
色は光に戻り、

あの色を求めている。



鳴り輝いた雷のあくる日。

濡れた地面から溢れる光。
きらきら揺れる。

朝が終われば、
蒸発してしまう光たち。

空気へ還る足音と一緒に。



指先でそっと撫でようとした一筋の光。
乾いた木に響く、6弦の音色。

形も変えずに真っ直ぐ揺れる。
それはなぜ。

耳を潤す。



晴れた夜。
海上の空。

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