【レビュー】『鬼門で発揮できなかった自分たちのサッカー』~第15節ジェフユナイテッド千葉VSファジアーノ岡山~
マッチレポート
“鬼門”フクアリで発揮できなかった自分たちのサッカー
岡山は今年も“鬼門”フクアリで勝つことができなかった。試合前にイビチャ・オシム氏への追悼セレモニー、黙とうが行われて特別な雰囲気に包まれたスタジアムで自分たちのサッカーができなかった。
岡山はボールを保持していたものの、効果的に敵陣に進入できない時間を過ごす。左サイドの背後を狙うチアゴは鈴木に抑えられ、両SBは相手WBに蓋をされてしまった。サイドを封鎖されて中央に活路を見いだそうとするも、ボランチからの縦パスは少なかった。ブロックの外を回すビルドアップからは閉塞感が漂い始める。
千葉は[3-4-3]のブロックを敷いて冷静に岡山のビルドアップに対応していく中で、決定機を作った。23分、レオンソへのロングボールのこぼれ球を拾い、素早く右サイドに展開すると、米倉がクロスを入れてCKを獲得。高木が蹴ったボールはクリアされるも、PA内でボールを拾った末吉がシュートを放つ。そしてレオンソがGKに弾かれたボールを詰めるも、ネットを揺らすことはできない。
岡山はサイドの幅を広く使う千葉の攻撃に押し込まれ続ける。しかし、金山を中心に集中して守ると、セットプレーで反発する。42分、ピッチ中央でのFK。柳が蹴ったボールをデュークが頭で落とし、チアゴが左足で合わせた。シュートは枠を捉えるも、新井の好守に遭う。
後半も自陣でのプレーを強いられる岡山は、推進力のあるアタッカーを両サイドに投入するも、押し返せない。71分にはFKのこぼれ球をバイスが左足で合わせたが、枠を越えた。83分、阿部を入れてシステムを[3-4-3]に変更。守備時は[5-4-1]になってゴール前に人数を増やす。しかし、最後まで守り切ることはできなかった。94分、途中出場の髙橋に縦パスを打ち込まれると、コンビネーションでPA左奥への進入を許す。そして高木のクロスにフリーで髙橋が走り込んできた。柳と河野が身体を投げ出して金山も構えたが、髙橋のシュートはネットに突き刺さった。
3連勝の原動力となったサイドの奥を突く攻撃と果敢に奪いに行く守備は影を潜めた。主導権を握ることが難しい試合だったからこそ、強みのセットプレーで逆境を跳ね返そうとしたが、それもできなかった。木山監督は『攻守両面で自分たちにスイッチを入れるプレーが少なかった』と試合を振り返り、選手はうつむきながらスタジアムをあとにした。
コラム
デュークが孤立し、今季最も少なかったシュート数
今季最もゴールに迫れなかった試合となってしまった。
今節岡山が放ったシュートは6本、そのうち枠内シュートは1本のみ。どちらも第15節終了時点で最も少ない数字だ。また、千葉のゴール前でのプレーは全体の19%。シュート数が少なかった理由は相手ゴール前に入っていけなかったことが考えられる。
主な要因は4つ。千葉に押し込まれて、守る時間が続いたこと。サイドの奥を突けれなかったこと。デュークが孤立してしまったこと。相手のブロックの内側にパスを打ち込めなかったこと。
最も響いたのはデュークが孤立したことだ。岡山はこれまでもサイドの奥を突く攻撃が機能しない試合はあった。奥のスペースを埋められて、ウイングの推進力を封じられる形だ。それでもデュークにロングボールを入れて彼の高さと強さでゴールをこじ開けようとしたり、こぼれ球を拾って押し込んでいったりしてきた。第10節・新潟戦のデュークのゴールが象徴的だろう。
しかし、今節デュークへのロングボールはその場しのぎに留まった。押し込まれた状態で蹴り込むため、デュークの近くには相手選手ばかり。陣形は間延びし、サポートも間に合わない。結果的に背番号15は孤立してしまい、押し返していく手段とはならなかった。
サイドの奥を突けないなら、デュークでこじ開けていく。岡山の攻撃は二段構えだからこそ、相手に脅威を与える。デュークへのサポート体制の整備を徹底し、コンパクトな陣形でデュークを生かしていきたい。