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【活動日記】『目の当たりにしたコーチングの効果』~赤嶺スクールお手伝いにて~

「コーチングってすごい!」

お手伝いに行かせていただいているAKAMINE FOOTBALL SCHOOLでコーチングが持つ大きな効果を目の当たりにした。

19時30分からスタートする5、6年生のクラスでは最後に5対5のゲーム形式の練習に取り組んでいる。その日の練習でやってきたパスやドリブル、シュートを試す場になっているゲーム形式の練習は、コーチの赤嶺真吾さんの「コートを広く使おう、判断を早くしよう!」という言葉と共にキックオフされる。

13分間の前半がスタートすると、試合はテクニックのある選手が自陣の後方でたくさんボールを触って展開されていく。ドリブルの技術もあるし、キープ力もある。1人で2人の相手選手を突破していくシーンも少なくない。しかし、相手チームからすると、奪いに行きやすい状況になっている。どの選手がボールを長く持つとかパスをあまり出さないことが分かってくると、狙い所になるし標的にされてしまう。相手チームは後ろの選手も敵陣に入ってどんどん奪いに行く。そうすると、常に相手と近い位置でボールをキープしたりドリブルをしないといけない状況になり、ボールを持つ選手にもミスが生まれてくる。囲まれてからパスを出そうとしても、時すでに遅し。すでに受け手の選手もマークされていて、自陣の中にとじ込まれてしまった。

コート内の狭い部分でのプレーが多くなり、ゲームのテンポが上がらないことを見ていた赤嶺さんは「ここからは3タッチ以内でやろう」とルールを付け加えた。4タッチ目をしてしまうと、笛が鳴って相手ボールになってしまう。

タッチ制限を設けて試合が再開されると、選手たちのプレーはガラリと変わった。3タッチしかできない、つまりドリブルができないことを意味する。ボールを止めて1タッチ、パスやシュートをするにしても1タッチしないといけない。その間に1タッチしかできなくなった。フットサルコートの大きさでやっているから、相手を抜き去ろうとファーストタッチを大きくすることも難しい。ドリブルは完全に封じられた。

ボールを持った選手はパスを最初の選択肢として持つようになった。3タッチ以内にパスを出さないと相手ボールになってしまうから、パスを出すために味方を探す。自然と顔も上がる。ボールを持つ選手にも大きな変化があったけれど、ボールを持っていない選手にも変化があった。味方からパスを受けるために、早く動いてパスコースを作るようになり、相手選手の後ろに隠れてしまう選手が減った。さらに、ボールを受けようと下がり過ぎなくもなった。受けるために下がり過ぎると、相手はパスしかないことが分かっているから、どんどん奪いに行ける。コートを狭められてしまう回数も減っていった。

赤嶺さんは「もっと早くパスを出せ」とか「ドリブルをするな」と言ったわけではない。タッチ数の制限を設けただけ。しかし、結果的にテーマとして掲げられていたコートを広く使うこと、判断を早くすることができるようになっていた。

これこそコーチングの真骨頂だった。

コーチングとは「導く」「引き出す」という意味で、自発的に答えにたどり着けるようにきっかけやヒントを与える教え方を指す。対してティーチングとは「教える」という意味で、答えや正解が分からない相手にそれを教える、与えるという考え方に基づく指導法である。「横の味方にパスを出せ」「相手が右から来ているから左足でコントロールしろ」といったものはティーチングに分類される。

赤嶺さんが設定したタッチ制限はまさにコーチングだった。フリータッチのとき、プレーする選手たちはうまくいかない原因や状況を好転させる解決方法などをハッキリと分かっていなかったと思う。しかし、3タッチまでしかボールを触れない状況を設定したことで、選手たちは何をしないといけないのかを考えて行動に移した。その結果としてボールを持つ選手は味方を探してパスを出し、持っていない選手はパスを受けられるスペースを見つけて動き出すことができていた。

選手たちが自発的にうまくプレーできるようなきっかけを与えた赤嶺さんの指導を見て純粋にすごいと思ったし、僕も赤嶺さんの指導を受けたかったとスクールに通う子どもたちが羨ましくなった。

<参考>
サカボン.「コーチングとティーチングの違いとは:育成の放任をしていないか」. https://sakabon.net/coaching-teaching/ (参照 2022-07-26)

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