ソーシャル/デザイン/コミュニティ
コミュニティ・デザインやソーシャル・デザインといったキーワードが、ここ数年書店の店頭でも目立つようになりました。私が住んでいる鳥取の市街地でも、個性的なお店が増えたり、空き家や空き店舗を活用したワークショップが開催されたりと、自分たちが暮らす場所を見直す機運が高まっています。そしてこの流れは、世界中で同時進行しています。
佐久間裕美子さんの『ヒップな生活革命』(朝日出版社)は、アメリカの各地で広がりつつある、「『より多く』から『より良く』へ」という動きを丁寧な取材で捉えた好著です。
もしかしたら、ヒップという言葉に違和感を覚える方もおられるかもしれません。けれども、 例えばニューヨークなどの都市部で広がりを見せる屋上農園。美味しい有機野菜が食べられる、大気汚染や温暖化対策といった側面だけでなく、輸送コストを抑え、貧困層の食料調達に関する負担を減らすという、セーフティネットとしての役割も視野に入れています。何よりもまずは楽しく、そして新しい技術を使いこなし、社会をより良いものにしていく。まさにスマートな「革命」です。
現代型のリサイクルショップ「PASS THE BATON」を立ち上げた遠山正道さんも、ビジネスの世界でこの流れを体現している方です。『やりたいことをやるというビジネスモデル』(弘文堂)で書かれているのは、単なるサクセスストーリーではありません。やりたいことをやり続けるために、仲間とともにどこまで泥臭く踏ん張れるかという、苦悩と喜びの物語です。
この「新しい流れ」を追いかけていると、鳥取出身である一人の民俗学者が思い浮かんできます。その名は橋浦泰雄。地元の仲間(尾崎翠も!)を巻き込んだ文学活動から始まり、師である柳田國男を支え、当時すでに失われつつあった地方の風習を記録しながら、民俗学の全国組織設立実現に向けて日本各地を奔走。そして戦後は生活協同組合を創設と、生涯を通じて人と人をつなぎ、やりたいことの筋を通したこの人物、最高に「ヒップ」だと思いませんか?
興味を持たれた方は、鶴見太郎さんの『橋浦泰雄伝』(晶文社)をぜひ手に取ってみてください。
*残念ながら版元品切れのため、講談社学術文庫か筑摩学芸文庫あたりで復刊してほしいところです。
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