続:新型コロナ報道が怖くなくなる話
欧米をはじめ、世界中で新型コロナが猛威を振るっています。
(4/7追記:七府県に緊急事態宣言が出されました)
国内では、多くの人がショックを受けた志村けんの訃報もありましたし、海外ではイギリスのジョンソン首相、チャールズ皇太子が感染したとか、国民に対して外出禁止令が出たとか、日本の若者は外に出るなというニュースとか、感染して発症した患者がSNSで発信する人がいたりして、世界中が半分パニック状態になっています。
こうなってくると、色んな意見が飛び交いますよね、やれ「自粛すべきだ」「いや、自粛なんて無意味だ」「人の生命が関わってるんだ」「大恐慌で死ぬ人の方が多い」など、議論がまとまりません。
こういう情報にさらされている我々は、ちょっとしたことでも「大丈夫か?」と思ったりして、躊躇するだけならいいんですが、ちょっとでも体調変化があれば「あれ?コロナ?」「誰かに感染させちゃう?」となって焦ったりしてしまったり、心が疲弊したりするものです。
2週間以上前に、新型コロナ報道が怖くなくなる話を書きましたが、状況が悪化し、さらに怖く感じるような状況が続いているので、続編としてしたためました。
➡本記事も含めた「正しいコロナ情報」まとめはこちら
なぜ日本はこんなに感染者が少ないのか?
欧米をはじめ、世界中がパンデミックに怯えているのに、日本は何をのんきなことをしているんだという人もいます。
日本はPCR検査をしていないから、感染者数が少なく見えるだけという人もいます。
ただ、この、新型コロナウイルス感染症は、特効薬がないために、SARSの時と同じように、「封じ込め」しか策はありません。
では、その「封じ込め」は何をするかというと、「隔離」と「公衆衛生のレベルを上げる」ことに尽きます。
ウイルスが他に感染すること自体を減らしていき、感染者の中でウイルスが消えるのを待ち、感染を封じ込めることができるわけです。
➡姉SARSに学ぶ新型コロナウイルス対処法の記事はこちら
つまり、接触を減らして、極端なことを言えば「みんな誰とも接しなければ」収まるんですね。だから、その極端な策として、「外出禁止」「都市封鎖(ロックダウン)」という選択があります。
そうしないといけないくらい、感染拡大が急ということですね。
ではなぜ、先にウイルスが来たはずの日本が、今のところ感染爆発を起こしていないかというと、いろんな条件が重なっているとは思いますが、
①日本は公衆衛生のレベルが極めて高い
②日本人は秩序を守る意識が高い
③日本人と欧米の生活スタイルが大きく異なる
という理由が考えられます。
①日本は公衆衛生のレベルが極めて高い
日本は国民皆保険制度があり、最新設備の医療体制がしっかりしているだけでなく、普段から健康状態に気をつける、世界一の長寿国家です。国民1人1人の手洗いなどもしっかりしています。
世界中見てみても、日本人ほど習慣的に「手を洗う」国民はいません。さらに「うがい」なんて、ほどんどの国で行われていないことをしています。
これは、幼稚園・保育園・学校教育の中に「手洗い・うがい」教育がしっかり組み込まれているからです。これは1960年代にかなり力を入れてPRをした歴史があるため、そこから現在に至るまでそれが続いていることになります。
これは日本だけが行ってきたわけではないのですが、結果的には日本ほど浸透してないのが現実で、海外では手洗いはせずにアルコール消毒*だけで済ます学校もありますし、医療従事者、外食産業従事者の意識の低さは日本の比ではないくらい低いと言います。
*アルコールだけじゃダメだって話はこちら
というわけで、日本の公衆衛生レベルは「きわめて高い」わけですね。それが今回のコロナ報道を受けて、そこからさらに「正しい手洗い」を学び、それがすんなり実践できる土壌があります。もちろん、綺麗な水もあるわけです。
ユニセフは「世界の半数近くの人が手洗いができない環境」であることを指摘していますが、日本は、手洗いしない人がいても、他の国に比べるとはるかに「マシ」なのです。
これは何も、発展途上国に限ったことではなく、手洗いできる環境があっても、手洗いの習慣がない国では、それを充分に実践することができませんので、感染が始まってしまったら一気に広まる土壌があるのです。
また、日本では掃除も教育の一環として行われており、欧米のように「掃除は掃除担当の人(主に移民)の仕事」という意識を持つことはなく、国民全体の清潔さに対する意識が高いです。
私は日本より「キレイ(beautiful)」な国はたくさん見てきましたが、日本ほど「キレイ(clean)」な国は見たことがないですし、欧米では、金持ち向けの場所は清潔にしていても、一般市民向けの所は大概汚いものです。
ですが、日本は、一般市民向けの所でも、欧米の金持ち向けの場所以上に清潔にされていることも少なくありません。
たとえば、「世界で最も清潔な空港」ランキング1位は羽田空港、2位は中部国際空港で、日本の空港がトップ10の内4つを占めます。
新幹線の清潔さも海外で紹介されていますが、国民の清潔に対する感度の高さが、日本の公衆衛生レベルの高さを生んでいると言えるでしょう。
②日本人は秩序を守る意識が高い
日本人は世界でドイツと並び、ルールに厳しい国民と言われています。
悪い面としては、①のように、手洗いを教育をされたからと、習慣的に手洗いをするといように、「あまり考えずにルールに従う」という悪癖があり、そういった意識の労働者が、生産性を下げている、イノベーションを妨げているという指摘もあります。
良い面としては、大多数の国民が政府の力なしに「規範」に従った行動を取れることです。具体的には、災害時などでよく海外で報道されますが、国民が暴徒化せず、協力し合えることです。
あくまでも社会の秩序を保ち、周りに迷惑をかけないことを美徳として育ち、今も「周りに迷惑をかけないように自主的に自粛」ということができます。官僚ですら「迷惑をかけないように」忖度するくらいです(それは悪いことですが)。
日本では、「どんなアホな子に育っても迷惑をかけないでほしい」ということをよく聞きますが、個人主義の国ではそんな言葉すらありません。
自己主張の激しい国では、「出るな」とハッキリ言わないと伝わらないので「外出禁止令」を出さないといけません。それだけ、日本では、国民1人1人が自主的に、社会の秩序を保つように動くことができます。
それは、国民全体に平等に教育が行き届いているという証でもあり、それができるほど平和な社会だということが言えます。
なので、国のトップは正直誰でも大した変わりがないため、政治に関心が起きにくいというのもあります(※暴言)。
③日本人と欧米の生活スタイルが大きく異なる
日本人は「迷惑をかけたくない」という概念に代表されるように、社会的関係というルールに従う傾向がありますが、欧米人の考えは、個人的関係のルールに従う傾向があります。
たとえばスキンシップをするのが「礼儀」と考えているイタリアでは感染爆発を防ぐために「スキンシップを禁止」することを法律に盛り込むほどです(手遅れでしたが)。
そもそも、日本、あとフィンランドもそうですが、人と人との距離感が遠目で、会話も大声で話すことを嫌います(写真は離れて市電を待つフィンランド人たち、2017年)。
また、これはあくまでも私の個人的な考えですが、日本の家屋の特徴もあると思います。
日本の家屋は、たいがいが玄関で靴を脱ぐような設計になっており、複数人の家族が生活するような家は段がある家がほどんどで、家の中にウイルスが持ち込まれる確率がかなり低くなると考えられます。
というのも、新型コロナウイルスの姉妹ウイルスであるSARSウイルスの時に報告されたことですが、ホテルの床のカーペットにウイルスが大量に見つかったということがありました。
新型コロナウイルスもSARSウイルスも、空気感染はなく、飛沫感染のみなので、2mほど飛んだ飛沫は床に落ちます。でも、飛沫の中の飛沫核(ウイルス)は、すぐには死なない・・・それが、何かの拍子で空気中にただよう「エアロゾル」化して感染することもあるという指摘です。
なにせ実験できないのでこれはあくまでも私の想像でしかありませんが、なかなか死なないウイルスだからこそ、靴のまま家の中に入る欧米の家屋は新型コロナウイルスの脅威にさらされている可能性が日本より高いとも言えます。
もちろん、海外でも家の中はスリッパという所もありますので必ずしもそれだけが原因ではないですが、日本において、感染が拡大しにくい要因の一つにはなっているように思います。
そこに、手洗いまでバッチリ、マスクまでしていたら、なおさら、他の国よりも感染拡大率が抑えられていても不思議ではないのかなと思います。
つまり、感染拡大が起きていないのは、家の中に入る時に靴を脱ぐのも、家に入ったら手を洗うのも、民俗学的に、日本人が「内」と「外」を明確に分けるという、文化的背景もあるということですね。
さらに、海外では異様に映る、日本人の「マスク好き」も、予防にはならないという医者も多いですが、誰がウイルスに感染しているかわからない現状では、無意識な感染拡大の抑止につながっているのは間違いないでしょう。。
私たちは何をすべきか
かといって、もし「地面が危ない」としても、靴の消毒をすれば100%感染が防げるかといったらそんな事はあり得ません。手洗いと同じく、汚れていたらアルコール消毒も無意味です。
また、靴のこともあくまでも、可能性を下げる一つの要素なだけであって、それがどれくらいの重要度なのかというのは私にはわかりません(0.0001%かもしれません)。
菓子店では靴裏の消毒をしてから作業する店もありますが、個人宅でやる意味はないように思います。というのも、玄関でご飯を造るわけではないですからね。
(そういう意味で、玄関と部屋に区切りのない「ホテル」「クルーズ船」は危険性が普通の家よりは高いと言えるでしょうが。)
そもそも、靴の裏にウイルスが付着するのは、あくまでも濃厚接触のある場所にいて、たくさんのウイルスが付着していなければ危険性はありません。
だから結局は、濃厚接触にならないように、飛沫がかかりにくいようにするなどをする方が効果が高い、ということになります。
そこへ行くと、やはり基本にあるのは、専門家も言っているように、手洗いの実施でしょう。
➡新型コロナの正しい予防法①手洗い編〜アルコール消毒は必要か?〜
そもそも「なぜ手洗いをするか」ですが、無意識に口や鼻や目などの粘膜に触れるからです。ということは、そこを防げば感染は防げるのです。
逆に言えば、満員電車が危険とは言いますが、いくら人が密集しているからと言って、真っ正面に向かい合っている人はまずいませんし、豪快に飛沫を飛ばしている人はいません。そこからさらに粘膜のある所にピンポイントでウイルスが来るかと言ったら実に怪しいところです。
だからもし、つり革などにウイルスが付着したとしていても、手洗いさえすれば防げる、ということなのです。マスクも予防には効果がないと言われていますが、周りへの感染拡大を防げますし、直接粘膜を触らなくなる効果はあると思います。理想は花粉症対策のような、メガネもするのがよいでしょう。
それを考慮してドクター中松は、ぱっと見変なマスクを造ったのでしょうが、今、世界中の病院で使われているのは同様のフェイスガードです。
逆に言えば、手に付着していたら、手を洗わなければ危険、ということでもあります。
そこで、日本人に感染が拡大していない理由に戻りますが、外食産業では基本的に「おしぼり」が出るほど、衛生レベルの高い日本において、「汚い手で食べない」というレベルを、普段より、1段、2段あげるだけで、世界的に見ると異常なまでに公衆衛生レベルが高くなるのが日本です。
だから、全体としてみれば、都市を封鎖しなくても、「自粛してください」と要請するだけで、人の活動が活発でなくなることで拡散が減少し、結果的に封じ込めができていく・・・という国なのです。
(4/7追記:七都道府県に緊急事態宣言が一応出ましたが封鎖はしません)
政治家や官僚たちもバカじゃないので、そういったことを計算してやっているのです。だから、あまり焦らないように、「頑張ってるなぁ」「大変だけどご苦労さん」と思えばいいのです。
もちろん、そういったことを忘れて、何もかも無視して「自粛は疲れた!」と自由奔放にやれば感染が拡大するのは大間違い。ウイルスは神でもなんでもないですし、気持ちで感染が防げるものではありません。
まして、「自分はかからない」なんて言っている人は危険です。
「かかるかも?」と思うから、ちゃんと予防するんです。ちゃんと予防してない人から拡大していくのです。
かといって、逆に、あれもこれもと心配しすぎて「誰とも接しない!」とするのも確かに予防ではあると思うのですが、日本はまだ、現時点ではそこまで危険なレベルまでには至っていないのが事実です。
「絶対」はないから
でも、だからといって「これをやれば感染しない」と100%言えるものでもないですし、私自身も、絶対に感染しない自信があるということもありません。
感染は誰に起きてもおかしくありません。
そもそも感染症というものはそういうものなのです。
でもそれは、「交通事故」に遭う確率は誰にでもあるのと同じです。
ずっと家の中にいれば交通事故には遭いませんし、車で人をひくこともありません(ちなみに交通事故死は年間3千人ほどで、インフルの死者とほぼ同数です)。
「ウイルスを拡散するかも?」と心配される方も多いですが、咳エチケットなど気をつけて、体調不良なのにムリをしなければ、そこまで心配することもないと思います。
それを国や自治体が大々的に言ってくれないから不安になるのもわかりますが、彼らはそこで「大丈夫ですよ」と言ってしまって、「じゃぁ今までと大丈夫だ!」と言って人の動きが活発になって最悪の事態になってしまうと困るので(特にパリピが危険)、大丈夫と言えないのを濁しているだけで、悪気はないのです(あと、責任とりたくないですし・・・)。
一時的に交通事故をゼロにしたいので、車に極力乗るな、極力外に出るなとしたい、だからといって、乗ってはいけないとは言えない。
今はそんな状況です。車に社会権がない時代なら、それも可能でした。それに近いですね。
実際、この「自粛」で交通事故死はさらに減ることでしょう。地球環境も良くなることでしょう。排ガスによる気管支炎の人も減るでしょう。
誰も責任は取れないから
どれが正しいかなんて、立場によって異なります。
だからこそ、自分が自信を持って、「家から出ない」「自粛する」ならそれでもいいです。
でも、日本人は「規範」に従う意識が非常に高いので、「どうしよう?」「もんもんとする……」というのであれば、ちゃんと冷静に見て、自分の出来る範囲で、公衆衛生のレベルを今までより引き上げれば、それが自分にとってのベストなのではないでしょうかね?
なにせ、非常事態宣言が出ていませんので、今から心配しすぎていたら、心が病んじゃいます。本当の危機は、こんなもんじゃないですからね。
かといって、非常事態宣言が出たからといってやることが大きく変わるわけではありません。
➡9.11の時にNYで非常事態宣言を喰らった体験談はこちら
国家や自治体にとっては大変なことですが、それは全体を見てるからで、では個人でどうするのかというと、交通事故の予防や、インフルエンザの予防と同じように「自分にできる限り気をつける」しかない。
人間、誰かに迷惑をかけて生きているのは間違いがないので、その迷惑を減らすため、しっかり学んで、「手洗いをしっかりする」とか「飛沫を飛ばさない」とか「三密の環境を避ける」とか、基本的なことをやる、と。
プラスチックの上で3日も生き続けるウイルスが、プラスチックに蔓延した我々の社会に入ってきたら、ウイルスの拡散そのものを完全に防ぎきることはできないですから。
まぁ、それなのに感染拡大していないということはやはり、手や飛沫が一番危険であって、それがきちんと皆が出来ていれば、移動の制限をかける必要がない、それ以外の感染は心配しすぎてもいけない、という判断なのでしょう、現状では。
〈新型コロナウイルスの正しい情報〉記事一覧
新型コロナの正しい予防法シリーズ
➡①手洗い編〜アルコール消毒は必要か?〜
➡②うがい・マスク編〜飛沫って何?〜
➡③消毒編~アレでも濃厚接触~
名前から学ぶコロナウイルスシリーズ
➡①そもそもコロナウイルスって何よ
➡②新型コロナはSARS2号?
➡③「姉SARS」から学ぶ対処法
読み物シリーズ
➡こんなコロナの時に大事なこと
➡新型コロナ対応で成功した台湾から何が学べるか
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