見出し画像

名前から学ぶ「コロナウイルス」③~「姉SARS」から学ぶ対処法~

前々回は「コロナウイルスとは何か」、前回は「新型コロナウイルス=SARSウイルス2号だ」について語ってきましたが、今回はいよいよ、新型コロナウイルス(SARSコロナウイルス2)とどう向きあうべきかという話になります。

SARSウイルス2

前回「新型コロナウイルス」=「SARSコロナウイルス2」だということを紹介しましたが、その名付け親である、「世界ウイルス分類委員会(ICTV)」は、新型コロナウイルスの性質について、こうまとめています。

①「MERSコロナウイルス」ではなく「SARSコロナウイルス」に近いウイルスの遺伝子配列(≒性質)を持っているため、「SARS」の名前をつける。

②「SARSコロナウイルス」と「SARSコロナウイルス2」は、直系の「親子」ではなく「姉妹」に近い関係。

※上記のような性質があるということで、SARSと同じように、感染元は「コウモリである」と想定されるようになったのです。

つまり、SARSであってSARSではない、でもSARSに似ている所もあり、SARSよりもなんか影響力の強い、お姉ちゃんより出来のいい妹みたいな感じです。

そういえば、マンガによく出てくる「妹」って、お姉ちゃんより男慣れしてて、男を手玉に取って「お姉ちゃんってホント恋愛ヘタだよね」と言っているイメージですね。私だけですか??

ちょっと話がそれてしまいましたが、そんなSARSコロナウイルス2号とされた新型コロナウイルス。

姉と妹は違うとはいえ、姉妹であれば、似た部分も必ずあります。

人間ならまだしも、相手はウイルスです。少しでも似ている部分があれば、そこからヒントを見出すことができるかもしれません。

姉SARSの対処法はどうしたか?

現在、SARSは発症者がいません。SARSウイルスがすべて死滅したのです。

でもこれは、「ワクチン」のおかげではありません(SARSのワクチンはありません)

そもそも、ワクチンもないのに、どうやってSARSはなくなったのでしょう?

今、感染症対策組織として、実力も実権もあって日本もそういうものを作るべきだとメディアでもさかんに紹介されている機関、「アメリカ疾病予防管理センター(CDC)」というのがあります。

そこで当時SARS対応に当たっていた研究者(加藤茂孝氏)の、当時の回想録が期間限定で公開されています。

もともとは『続・人類と感染症の歴史(丸善出版)』という一冊の本としてまとめられたものですが、今の世相に合わせて、SARSとMERSの部分を切り取って一般公開してくれているのです。

その中で、SARSを抑え込んだのは、

・WHOによる渡航自粛勧告(移動制限)
・各国による大規模な研究体制
・感染者の隔離
・公衆衛生(消毒や予防)の徹底

だったということが書かれています。

SARSウイルスは、物凄い人的資源を投入し、多くの研究者が研究した結果、地面に落ちた唾液などからも感染した「エアロゾル感染*」などの驚異的な感染力があることを突き止めて情報共有し、検査で見つけやすくして隔離するなどしたものの、それ以外では特効薬がないだけに、他の感染症と比べてちがうことをしたわけではないのです。
*新型コロナウイルスにもある特性

SARSがなくなったのは、感染病の基本、「封じ込め」に成功した、ということです(あとは幸運も)。

・・・でもそれって、今も武漢でやってることじゃない??

そうなんです、でも、武漢はそれができなかった、あるいは遅かったんです。代表的なのが、新型コロナにいち早く気づいた医師の意見を封殺したことでしょう。

その結果、武漢ではウイルスが蔓延し、残念なことに告発した医師も感染症で亡くなりました。

でも、色々問題のあった武漢ですが、実は今、感染者が減少傾向にあります。「封じ込め」が効果を表してきたのです。

SARSの性質を持つウイルスは結局、封じ込めるしかないのです

SARSから何も学ばなかった国と学んだ国

報道などでは「SARSは11月に発生して、翌年の7月に終息した」ということがよく紹介されています。

なので、日本でも「今回も夏頃には収まるんじゃないか」という根拠のない推測、オリンピック開催への希望から来る憶測がなされていたことが多いように思います。

そのため、何もかも対応が後手になりました。

それは、姉である「SARS」から何も教訓を得ていなかったからです。

なぜなら、日本ではSARSの拡大がなかったからです。

だからいつも、政治やメディアで比較対象になるのは、まったく異なるウイルスである「新型インフルエンザ」の話になります。参考になったとしても、有効な方法とは言えません。

新型コロナウイルス(SARS-Cov-2)が、文字通りSARSコロナウイルス(SARS-Cov)の姉妹ウイルスなのですから、いくら初期のうちはそれがわかりにくかったとしても、それを指摘する専門家もいました。

https://www.jmedj.co.jp/journal/paper/detail.php?id=13954

さらにSARS2ということがわかった今、「SARS対策」をするのが正しい選択だったのですが・・・いかにも世界情勢に疎いガラパゴスな発想です。

逆に、評価が凄い高い国があります。

それは台湾です。

台湾は、新型コロナウィルスの姉であるSARSコロナウイルスに最後まで苦しめられました。先ほど「SARSは翌年の7月に終息した」と紹介しましたが、実はこれは台湾のことなのです

詳しくは上記リンクで紹介していますが、SARSに最後まで苦しめられた台湾は、その教訓から、どの国よりも早く新型コロナウイルスの対応に動き出しました。

その結果、日本より中国に近く、人の移動も多いにもかかわらず、新型コロナウイルスの影響を最小限に抑えています。

SARSってどんな病気?

さて、肝心のSARSですが、日本で蔓延していなかったので、どんな病気かということはあまり詳しく知られておりません。

しかし、SARSを知れば、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)を理解する助けにはなります(国立感染症研究所、『続・人類と感染症の歴史』より)。

SARS;重症急性呼吸器症候群(Severe acute respiratory syndrome)
・2~10日間の症状のない期間のあと、発熱、悪寒、筋肉痛で発症
・さらに1週間後に、呼吸困難を伴う肺炎がおこり、死亡することがある
初期は検温しても体温が高くないこともある
発症者の8割が軽症で、残りの重症者の内、基礎疾患の有無で生死が分かれる
接触感染、飛沫感染、エアロゾル感染の報告がある
看護や介護での院内感染、同居者との濃厚接触による感染が多かった
・しかし、若い世代の感染者は少なく、死亡者は高齢者に集中
一人の人が多数に感染させるスーパースプレッディングの報告がある
・ワクチンがないので経過観察か肺炎治療しかない
・発症前の人からの感染報告はない

どうでしょう?

最後のをのぞけば、まんま、新型コロナウイルスですよね?

特に、院内感染が多いのは武漢でも、日本国内でもよく見られました。同じなのです。電車じゃないんです。学校じゃないんです。

こうやって見ても、新型コロナウイルス=SARSウイルス2というのは理解していただけると思うし、最初からSARSの親戚として動けば、ダイヤモンドプリンセス号の対応を含め、予想できたこと、防げたことが多かったのかな、と素人でも思うくらいなので、専門家の方からすると、本当に「オイオイオイ」という感じだったことでしょう。

また、確かに怖いウイルスだけど、キチンとした対応を取れば大丈夫、ということでもあります。

なぜなら、姉、SARSは抑え込めたわけですから。

国立感染症研究所には、SARS対策としてこのように書かれています。

患者の早期検知と即時隔離と、接触者の自宅隔離(検疫)以外には、特に有効な予防措置はない。一般的呼吸器感染症の予防策として手洗い、うがい、マスク着用、体力や免疫力の増強をはかる、人混みへの外出を控えるなどがあげられる

しかも今は、SARSの時以上に各国が対処に力を入れています。日本を含め、SARSの時よりもお金も資源も投入されてるとか。日本だって、確かにSARSの流入を許したけど、国民一人一人の意識が高くなっています。

つまり、希望しかないわけです。

焦らず、やるべきことをしっかりやれば大丈夫です。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?