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名前から学ぶ「コロナウイルス」②~新型コロナはSARS2号?~

前回、風邪などを引き起こす「コロナウイルス」そのものと、「コロナ」にまつわる風評被害や差別が起きる仕組みのお話をさせていただきましたが、今回は、「新型コロナウイルス」について掘り下げて、正しい付き合い方を考えていこうと思います。

そのためにはまず、風邪を引き起こす4種の「コロナウイルス」とは違う、「SARS」や「MERS」のことを知らなければいけません。

「SARS」「MERS」とは?

SARSウイルスは2002年、MERSウイルスは2012年と比較的新しく発見されたウイルスです。

結構混同されがちなんですが、「SARS」「MERS」はあくまでも病気の名前で、それを引き起こす原因となるウイルスが「SARSウイルス(SARS-Cov)」「MERSウイルス(MERS-Cov)」となります。
(Co-Vは「コロナウイルス」Coronavirusの略です)

ちなみにSARSは、「重症急性呼吸器症候群(Severe acute respiratory syndrome)」の略、MERSは「中東呼吸器症候群(Middle East respiratory syndrome)」の略で、MERSはその名が示すとおり中東でしか流行っていません。

SARSを命名したのは、何かと話題の「世界保健機関(WHO)」、MERSは「国際ウイルス分類委員会(ICTV)」です。

SARSとMERSはいずれも、全7種類あるコロナウイルスの内の4種の「風邪のコロナウイルス」と違って、「新型コロナウイルス」と共に、重篤な肺炎症状を起こすウイルスであることがわかっています。

日本では「サーズ」「マーズ」とばかり言っていますので、「なんか肺炎?みたいな?」というイメージがある方もおられるようですが、SARSだったら「重症急性呼吸器症候群」と、実はちゃんと、どういう病気かっていうのは名前に書いてあるんですよね。

「名は体を表す」なんです。

これは結構、学校の勉強(特に理科)でも同様に忘れられていることですが、大事なことです(炭水化物を燃やすと何が残る?⇒答え:炭)。

「名前」には意味を考えてつけられているものも多いのです

でも、略称にしちゃうと何が何だかわからないですよね。

ここでも、前回お話ししたように、情報が短くされてしまうことで、正しく理解することを妨げてしまっているんですね。

新型コロナウイルスの本当の名前

そもそも、「新型コロナウイルス」は、先に挙げたSARSコロナウイルス(SARSーCoV)、MERSコロナウイルス(MERS-CoV)などのように、動物から人に感染したウイルスと考えられています。

そして、色々分析してきた結果、だいぶ「このウイルスが何か」と言うことがわかってきており、MERSの名付け親である「国際ウイルス分類委員会(ICTV)」により、正式な名前もつけられていることをご存じでしょうか?

その名も、

Severe acute respiratory syndrome coronavirus 2」

略して「SARSーCoV-2」です。


「あれ?」

と思いませんでしたか?


そうなんです。

「SARS」

と入っているんです。

しかも、「SARSコロナウィルス2」と、「2」がついている!!

ICTVのサイトではしっかりと

The virus causing the current outbreak of coronavirus disease has been named "severe acute respiratory syndrome coronavirus 2" (SARS-CoV-2).
〔訳〕現在アウトブレイクを起こしているコロナウイルス病の原因となるコロナウィルスを「重症急性呼吸器症候群(SARS)コロナウイルス2(SARS-CoV-2)」と名づけた。(訳、強調筆者)

と、書かれています。

「新型コロナウイルス」=「SARSコロナウイルス2」なんです!

んが!

日本では紹介されていません。

なんてことでしょう!!

誰も言わない正式名称

というか、「SARS2」ですよ、「2」!

これって結構、「名は体を表す」という考え方から行くと、「新型コロナウイルスとは何か」ということを理解するためのヒントになると思いませんか?

でも、誰も言わない・・・

そもそも、この、「新型コロナウイルス」については、WHOがある名前を提唱しています。

それが、

COVID-19(コヴィッド・ナインティーン)」

です。

実はこれ、ウイルスの名前だと私もずっと思っていたんですが、詳しく調べると、ウイルスの名前ではなく、「新型コロナウイルス感染症」という病名のことだったんですね。

ですので、ここでいったん整理しておきます。

ウイルス名
・SARSウイルス(SARS-Cov)
・MERSウイルス(MERSーCov)
・新型コロナウイルス(SARS-Cov-2=SARSコロナウイルス2)
病気名
・SARS(重症急性呼吸器症候群)
・MERS(中東呼吸器症候群)
・COVID-19(新型コロナウイルス感染症)

COVID-19だけ変じゃないですか?

それには理由があるのです。

WHOも頑張ったんだけど…

WHOは、今回の新型コロナウイルスへの感染症について「COVID-19」という名前をつけたと発表しました。

SARS、MERSって、アルファベットの略称ですよね。

でも、アルファベットの略称って、結構団体に使われていますよね。

WHOだって、「World Health Organization」の略ですし・・・このように、SARSやMERSという名前を冠した団体とかがあったのかもしれません。

前回もお話ししたとおり、ウイルスの名前なんかついていたら、風評被害もいい所ですよね。

また、団体名もそうですが「地名」も風評被害が起きます。「スペインかぜ」「エボラ出血熱」「ジカ熱」なども、発生源となる地名(スペイン、エボラ川、ジカ森)からつけられ、イメージ最悪になりました。

そのため、WHOは、2015年に、特定の場所団体個人とひもづけられて風評被害が起きないような「名前付けのガイドライン」みたいなものが作られて、風評被害を抑えようと考えたんですよね。

だから、今回の「新型コロナウイルスによる感染症」を、「武漢」「湖北省」「中国」などと結びつかないような名前で、団体などにも使われず、誰も傷つけることがないような名前として「COVID-19*」という名前にしたのです。
(*Coronavirus disease 2019の略。disease=疾患)

使われない名前

しかし、「どこにもなさそうな名前」「非常に聞きなじみのない名前」だったためか、全然浸透しませんでした。

発表された当初は、メディアでもそういった経緯の解説もありました。

では実際現状はどうかというと、ウイルス名は「新型コロナウイルス」、病名も「新型コロナウイルス感染症」と、まんまの名前になっており、官報でもバーンと公開してしまっています

これは、「情報」として「新型コロナウイルス」が根付いてしまっているというのも大きいでしょう。

メディアの立場からすると、「COVID-19」という言葉では、見ている人が「何かわからない」「興味をひかれない」となってしまうからヘッドラインにも使えないし、特に新聞やテレビしか情報源がない世代は「c」と「v」の読みに困る人もいるので、名称として「使えない」と判断したのもわかります。

そのためか、英語ができる人、英語にアレルギーがない人を中心に、ネットでは「COVID-19」と書く人もいますが、マスメディア、特にテレビでは使われません。

そのことに警鐘を鳴らす方もいて、賛同できるのですが、では浸透するかというとかなり厳しいのが現状(ちなみに疾病とウイルスを混同されているようです)。

そんなわけで、病気としての正しい名前(COVID-19)も、ウイルスとしての正しい名前(SARS2)も、注目されないのですが、でも、本当の意味で「新型コロナウイルス」を理解し、正しく対策しようと思うと、その本当の名前を知ることはとても大事なことなのです。

➡名前から学ぶコロナウイルス③に続く

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