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【中学受験ネタ】親が忘れていた大切なこと

昨日、息子は算数の「速さと比」の問題をやっていた。
問題集の最後に載っている問題は、数学が得意な大人が見ても、猛烈に難しそうな問題だった。
息子はその問題に取り組んでいた。

30分以上経ってもずっと考え込んでいる。
明後日は公開模試がある。
さすがにこの問題ばかりで時間をかけるわけにはいかないだろうと思い、「答えを見たら」と言ってみたが、息子は頑なに「見ない」と言う。
「どうして?」
「この問題はね、前回解いたときもできなかったんだよ」
「そのときは答えを見たの?」
「見てない。次にやるときは、絶対に自分で答えを出そうと思ってたから。だから今度こそ絶対に自分で解く」

それから30分後、息子が「できた!」と嬉しそうに言った。
「前回はね、ここに気づかなかったから、できなかったんだよ。今回はね……」
息子は嬉しそうに説明していたが、私は別のことを考えていた。

30分も考えて答えが出ないなら、答えを見て解法を理解し、次に類似問題が出たときにできるようになればいい。
なんとなくだが、そのとき私はそう考えていた。
時間が限られている以上、どうしても「効率」だとか「無駄を省く」みたいなことを考えがちになってしまう。

ところが、息子はただひたすらに、脳みそから汗が出るほど考えて、答えに辿り着いたのだ。
本来私が息子にやらせたかったのは、公開模試でいい点数を取ることでもなく、中学受験でいい中学に合格することでもなく、このことだったではないか。

困難な問題にぶち当たっても絶対にあきらめない根気、できなかったものをできるようになった喜び、何度打ちのめされても立ち上がる強さ。
中学受験をするまでは、ただ勉強ができるだけの人間ではなく、そういうことを身につける人間になって欲しいと思っていたではないか。

受験というものは、点数取りゲームの要素があると思う。
いつの間にか、息子が目指す中学に合格するためには、勉強をある程度「点取りゲーム」と割り切って、効率的に勉強したほうがよいと思っていた。
しかし、難問が出たからと言って、すぐに根を上げて答えを見るような子になってしまっては、本末転倒ではないか。
勉強は中学受験だけではない。一生勉強なのだ。
勉強に効率なんてあるわけがない。

中学受験に追われて、親が忘れかけていたものを、息子が再度思い出せてくれた大切な日になった。

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