Misaki Nosachika

美術作家。英国IFPA認定アロマセラピスト。生まれは北海道、心の故郷はパリ。 tiss…

Misaki Nosachika

美術作家。英国IFPA認定アロマセラピスト。生まれは北海道、心の故郷はパリ。 tissue(細胞、布、紙)を主体に記憶と痕跡をテーマに制作を続ける。 独自の着色技法tissuecolor(R)での制作も手がけ、時々楽器も演奏するなど頼まれたらやってみるスタンスで幅広く活動する。

最近の記事

青い時代の小さな紙が

小学校、中学校、高校とずーっと友達とは、たくさん手紙のやり取りをした。 小さなメモからきちんとした便箋のもの流行っていた畳み方、オリジナルの折り方。 それはもうさまざまなな形で。 授業中にこっそり…なんてことも、経験のある方多いのではないだろうか。 さて、延々と片付けをしている今。 久しぶりに開けたタイムカプセルとも言えそうな箱には、 そんな青い時代の小さな紙たちが、未だに捨てられない思い出として残っており、 久しぶりにその時の記憶に触れることとなった。 当然、捨てにくい

    • それは痕跡というのかわからないけれど。

      家を出てからというもの、生活の中で頭の中で聞こえる声がある。 それは母の声である。 食事の後のテーブルを散らかしたままにしてれば、 “立ち上がる時に一緒に食器を片付ければいいのに” 夜までお風呂に入らずにダラダラしていれば、 “早くお風呂に入ってスッキリしておいで“ 他にも、これはああやったのか、こうしたのか。 ちゃんとやらないと後が大変だ、とか。 何かを中途半端にしようものなら“それでいいのか?”と問いかけてくる。 妹に聞くと、自分も全く同じだといって笑っていた。

      • ことばの痕跡。

        「匂いで具合悪くなっちゃって。」 あの場ではそう、説明したが、 本人にその言葉が届いていたとしたらそのあと、この言葉はどのような影響を残してしまったのだろうか。 いつだったか、こんなことがあった。 電車の入り口付近に立っていたら、次の駅で私が苦手な匂いの女性が目の前にたった。 人工的なバニラのようなココナッツのような、私がとにかく苦手な香り。 しばらくして具合が悪くなり座り込む。 私の様子に気づいた優先席に乗っていた年配の女性が席を譲ろうと私に声をかけてくれた。 しかし

        • 【歩き続けたパリ滞在編④】お礼を伝える旅、Auvers sur Oise 〜 Giverny へ

          フランスに来てからルームメイトと一緒に初めての遠出。 ゴッホの最後の地、Auvers sur Oiseへ。 ゴッホが最後を過ごした街を歩いてきた。 (晴れ女二人が揃ったおかげで雨予報が吹き飛ぶ。むしろ暑かった。) 駅に降り立ち一呼吸。 緑豊かで静かなところ、という印象。 まばらな人の流れについていくと、日曜日だったこともあり、商店はお昼で店じまい。少し歩くとマルシェがやっていた。 フロマージュのお店のムッシュが素敵な笑顔でとてもよかった。 郊外に行くとなんだか心の余裕を感

        青い時代の小さな紙が

          ツナ缶よ、さようなら。

          私はツナ缶が怖い。 正確には、資源ごみに出すために缶を洗う作業が怖い。 ツナ缶を開けて食べてから丸二日。 洗い場でつけおきされていたツナ缶を洗う決心がつくまでに二日かかった。 そっと掴んだつもりだったのに 左手の中指の関節に鋭い縁が触れて血が凍るような感覚になる。 これは少しでも動かしたら切れる。絶対に横に動かしてはいけないと全神経が警告する。 慎重に作業してなんとか洗い切る。 そっと、そーっと作業したつもりだった。 鋭い縁が触れた部分に残った刃物の感触がまだ残る。

          ツナ缶よ、さようなら。

          二歩目。

          会社員を卒業する時に決まっていた予定は2024年5月、ニューヨークでのグループ展まででした。 それが無事に完了し、ここからの未来は白紙。 そんな折に二人の人物からメッセージが同じタイミングで届き、 心の中で燻っていたやるべきことのGoサインがでた。 いよいよ、フランスでの体験から今までの間に起こった出来事をかたちにする時が来た。 次のマイルストンは来年の春。 ここからはひたすら突き進むのみ。 その先のことは心配していない。 会社員時代はいつもロールモデルを探していた。

          一歩目。

          * 本年もよろしくお願いいたします。 健やかで文化的な一年になりますように🐉 : 年明け早々、仕事でスマホを触る時間がなく世の中の動きを知ったのは少し経ってから。 ネットのさまざまな情報を見ると、今は言葉にできない、と直感的に思った。 …と同時に、言葉にできていないけど、言葉にしていかねばならない、そう思う出来事があった昨年のことを思い出し、まだ反芻している今。 音楽家ドビュッシー氏曰く、言葉で表現できなくなった時、音楽が始まるんだ…と。 (La musique co

          【歩き続けたパリ滞在編③】ちょっとそこまで。オランダ滞在編。

          (今回、長すぎて途中で力尽きました…) フランスのついでにオランダに行こうと決めたのは、友人に会いに行こうと思い立ったからだ。そしてもう一つ、大好きな絵画であるフェルメールの「View of Delft」と実物の景色を見に行こうと思い立ったからだ。 この絵は調べたところによると、オランダの国宝級絵画ゆえに1990年代を最後に一度も国外に出ておらず、会いに行かないことにはお目にかかることが難しい絵画の一つである。収蔵場所はハーグにあるマウリッツハイス美術館。 ありがたいこと

          【歩き続けたパリ滞在編③】ちょっとそこまで。オランダ滞在編。

          【歩き続けたパリ滞在編②】毎日街歩き。

          今回の旅はアートフェアの出展と友人に会う以外は特に決まった予定はない。 社会人になってから初めて手に入れた真に自由な時間。 やりたいことしかするつもりはない、無理をするつもりもない。 自分の心を柔らかくしにきたので頑張ることもない。 もはや生き急いでいないのでゆっくりなれる前半と動く後半、くらいに考えた。 初めは街の様子をじっくり観察した。 お店に入るわけでもなく、ただひたすら街の中を歩き回った。 街の匂い、音、すべての空気感、それから街の人の動き方を観察しながら、ただただ

          【歩き続けたパリ滞在編②】毎日街歩き。

          【歩き続けたパリ滞在編①】ついに到着。歩き出したパリ。

          パリに着いた初日のことはよく覚えている。 シャルル・ド・ゴール空港の荷物受け取りまでの距離の長さにドキドキしながら、 同じ不安を共有した人と仲良くなり、なんとか正しいタクシーに乗り込み いざ、滞在先へ!走り出した車の窓から見えた光景と音がとても印象的だった。 ひっきりなしになるサイレンとクラクション。 渋滞の車の隙間にやってくる何かを要求する人々。 少しグレーがかった空。 そんでもって運転手の荒い運転!というか、みんな荒い! とか思って運転手を見ると、ちょっとソワソワしてい

          【歩き続けたパリ滞在編①】ついに到着。歩き出したパリ。

          次の人生に進むことにした話③「渡仏準備編」

          さて、フランスに行こうと決めてから準備したことをメモで残しておくことにする。 日程が自分の中で決まったのが4月。 なんだかんだ1日に一つくらいしか進められず、のんびりと準備した。 以下、思いつくままに記します。 飛行機は3ヶ月前に予約した。今回は2カ月なのでビザは不要。 円安やら、原油高やら戦争やら落ち着かない世界情勢だけど、いくと決めたからにはとるしかない。 こんな世の中なので安心と安全を何よりも優先する!という心のスローガンの元 ANAの直行便一択でとりました。(もち

          次の人生に進むことにした話③「渡仏準備編」

          次の人生に進むことにした話②「他人を気にするなかれ、魅惑のプー太郎ライフ編」

          12年勤めた会社の最終出社日を終えた8/1。 一ヶ月間の魅惑の有休消化期間が始まった。 考えてみれば12年って小学校から高校卒業までと同じ期間だ。 だから気分的には卒業って感じだ。 特に思ったのは幼稚園に入る前ぶりの所属するということから離れたとも言える気がする。(所属の単位は、家族、地域、国、とかあげれば色々あるあろうけど。言いたいことはなんとなく伝わるだろうか。) そんなことを色々考えながらも、休暇の初日に朝起きてしたことは、 “パソコンがわりのiPadを開く” だっ

          次の人生に進むことにした話②「他人を気にするなかれ、魅惑のプー太郎ライフ編」

          次の人生に進むことにした話①

          大手電機メーカーに勤めて今年で12年。 12年と5ヶ月目となる夏の終わりに私は会社から卒業することにした。 いつからその決断をしたか。 常々、会社を辞めようかなと言い続けてはいたけれど、話は昨年の10月に遡る。 2021年10月、初めて海外のアートフェアへ出展した。 しかし、新型コロナの影響で出社規制が敷かれ、海外渡航には制限がつき、私自身は結果的に行くことができず、残念な想いをした。 頑張れば休暇をとって行くこともできたのかもしれない。ちょうど勤続10年目の5日間のリフ

          次の人生に進むことにした話①

          ひきだし。

          先日、2年ぶりの個展が無事に終わりました。 たくさんの方に作品を見ていただくことができ、大変幸せな5日間でした。 本当にありがとうございました。 展示期間中にお客さまとお話したことのひとつに、今の自分に重なることがありました。それは、 [引き出しの話]です。 イベント後、毎度終えるたびに 何かをわかった気でいまして。 その毎度、"得たもの"をなんとなく自分の引き出しの中身と呼んでいたりします。 その"得たもの"は 引き出しに大事にしまっておいて たまに