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そのテクノロジーは隣人と国を救うのか

要するに

起業して、サービスを作りました。同志を募集しています。
長い自分語りなのですが、サービスを公開した直後の人間の所信表明として生暖かく読んでもらえればと思います。

サービスを公開しました

先日、これまでステルスで開発・営業活動等をしていた社内管理画面作成サービス「ベースマキナ」を一般公開いたしました。

思った以上にお問い合わせであったり新規のご登録を頂き、感謝の想いに尽きません。
開発者一同が「きっとこの基盤なら自分達を含めWeb企業でサービス開発をしてきた方が何度も車輪の再発明をしてきた管理画面を作らなくて済むようになる」と信じて、持てる限りの技術でプロダクトを作っています。
公開時にも以前から相談させて頂いたエンジニアや事業者の方々にシェアいただき、一定話題に挙げていただきました。

ただ、自分としてはSaaSというサービスの提供方式やエンジニア文化を大事にするというのは手段で、本当にやりたいのは社内のオペレーションという観点から「自分の周辺人物と国全体が、"時間や人の余裕さえあれば得られるはずの技術の恩恵”を諦めないで済む社会」を作っていくということです。正式なカンパニービジョンの文言ではないのですが、現時点で言語化するとそういうことです。
プレスを出して多少区切りがついたこの段階で、その所信表明をしておくべきだと考え、この記事を書いています。

簡単な自己紹介

インターネット上ではtimakinというIDで活動しておりまして、本名は高橋誠二と申します。

新卒で株式会社DeNAに入社して大規模事業者様とのアライアンス案件のプラットフォーム開発、直近ではGunosyという会社でソフトウェアエンジニアとして事業の立ち上げ期から兼PM的な立場で600万DLくらいまでのグロース期に携わっていました。
基本的にはソフトウェアエンジニアとしてのバックグラウンドが多く、何社か技術顧問として参加させて頂いたり、外部での登壇をたまにしていました。主にGo言語のコミュニティに顔を出していたので、Go自体へのコントリビューションであったり、周辺の静的解析ツールなどのOSSを作って公開していました。

要するにエンジニアだったという話です。

なぜ起業したか

2020年夏頃に自分の法人を作って以来「エンジニア起業家」と呼称されることがありました。この呼び方には少し違和感があって、僕は元々自分で事業をやる時に備えてプログラミングをしていました。

ただ、「プログラミングは手段」と言い切る人はGitHubを見に行っても大した成果物がない、あるいはアカウントすらないことがしばしばありました。アカウントがあるかはどうでもいいですが、習熟してないのに手段と割り切るのは、作り手の技術への愛着に対して敬意が欠けるのでは?と常々疑問を持っていました。
僕はエンジニアの方と働くならその技術力に敬意を払いたいですし、「自分はプログラミングが好きだけど、”好き”を超えて手段として行使している」と胸を張って言えるまではエンジニアとして働こうと決めていました。
そして顧問業やコミュニティ活動を経て「多分エンジニアとして死ぬことはないラインに達したから、自分が最も良いと思う方法で技術を他者に還元していこう」と踏ん切りがついたため、起業しました。

なぜこの領域で会社を作ったか

僕はこれまで管理画面というものをおそらく10回以上作っているのですが、単に繰り返し作るのが面倒だったから作ったわけではありません。作るのが辛すぎてプロジェクトが終わった後3日間熱を出したこともありましたが…..

管理画面をはじめとした社内の改善は、経験上は金融業などの法的な縛りがあるドメインでない限り、ほとんど本業のついでに行われるものだと思っています。類似の事業ドメインのサービスでもオペレーション設計を会社ごとに行い、間に合わせのシステムを3日〜2週間くらいで立ち上げます。フレームワークを使って作られたそれらのシステムは、決して洗練されたUIでもなければ業務に沿った遷移を表現できるものではありません。

単純な開発工数だけを見て費用対効果を判断するならそれで良いですが、成果物を利用するエンジニア以外の働き心地が問題です。画像やテキストが大きすぎて目も当てられない崩れ方をしたテーブルやなぜ存在しているのかわからない導線など、感覚を麻痺させないと使い続けられないシステムを触らないと仕事が進まない人たちがいます。
より具体的にはオペレーションミスによる情報漏洩や、次第に増えるシステムの外での人力のダブルチェック工数など、扱う情報の機密性が高くなるにつれて開発速度の遅れがそのまま事業を停滞させるリスクに繋がります

簡単に言えば、こうしたエンジニアの周辺の方の作業を効率化して働き方改善をしたい、ということになります。

抽象的にはこの会社で何をしたいのか

具体的な事業の話はさておき、どのように社会に貢献していきたいのかも記載しておかなければ、所信表明の意味がありません。
僕は究極を言えば、ベースマキナを日本の話をするときの代名詞に使っていただき、誇りを持って欲しいのだと思います。

こんなことを書くくらいなので、自分はこの国が一定好きなんだと思います。特にソフトウェアエンジニアリングの領域においては、国内で草の根的な勉強会で発表されてる内容は海外の大規模なカンファレンスの2周くらい先を行っていたりするものもあり、英語で発信さえすればすぐ拡散されるのにと思うものがごまんと転がっています。
しかしやはり言語の壁は大きいのでしょう。ヨーロッパにカンファレンスの用事ついでに旅行に行ったときは、SONYの広告かCanonのカメラくらいしか自国のものを目にしませんでした。ガラパゴスな村社会から一歩外に出たとき、マイノリティとしての孤独感を埋めてくれるのは、偉大な先人が残してくれたモノづくりの軌跡や、会社のブランドです。しかし、ソフトウェア産業において世界が日本に魅力を感じる事業がどれだけあるでしょうか?僕はそうした、海を超えて業務効率化以上の価値が人にもたらされるような会社を作りたいです。

また、幸いソフトウェアエンジニアの給与は観測する限り上がり続けています。しかし、事業を生み、外貨を稼ぎ、国を富ませ、その過程で自分達自身の給与を上げていけるような技術者はまだまだ少なく感じます。
ビジネスが偉い、エンジニアが偉いという話ではありません。海外では両取りしている才気溢れる傑物がいて、身の周りには少なくないですか?という話です。でも、きっと仕入れる情報と技術者ではなくビジネスの世界のシビアなルールに自分を適応させれば戦える可能性があるはずで、僕は多少楽観視してそこに挑んでみたいです。
そして、挑む過程で「エンジニア起業家」というラベリングでエンジニアであることを特別視せず、一人の起業家としてエンジニアが事業を興すことは自然だと捉えられる社会にしていければと思っています。

また、エンジニアとして働いていたことで抱いた課題意識もあります。日本人はよくITリテラシーが低いと卑下したり批判されますが、それは正しくないと思います。実際にはITリテラシーの”格差が大きい”というのが正しくて、特にエンジニアに技術の恩恵が偏重しすぎているのではないかと感じます。
その格差はWeb企業においても同じで、僕たちエンジニアはユーザーへの価値提供を声高に主張するものの、ビジネスサイドの同僚などの隣人とも言えるほど身近な方々には価値提供できてるんでしょうか?その歪さに違和感を覚えたとき、僕は技術者としてどうキャリアを築くかではなく、培った技術を一刻も早く隣人に還元したいと感じました。

こうした自分が好きで培ってきたテクノロジーを隣人と国に還元する道を模索するために、僕は会社をやっています。

一度、お話ししませんか?

最後に、弊社は幸い僕より遥かに優秀なエンジニアの手を借りて少しずつ前に進むことができています。隙あらば使っている標準ライブラリに修正PRを投げることができる技術的フットワークは見ていて楽しいですよ。

ただ、技術的に優れていることは会社として優れていることを必ずしも意味しません。エンジニアは比較的、エンジニアのためにサービスを作る傾向があると思います。それで停滞した会社を何度も見てきました。技術者が技術者に価値を還元するだけでは、家が火事になっているレベルで困っている隣人を助けることはできません。
また、経済なき道徳は寝言だととある人は言いました。スタートアップとして急速な成長を遂げなければ、ビジネスのフィールドで勝利を収めたとは言い難いです。しっかりとお金というものに拘りつつ、会社を前に進める気合と根性が結局のところ必要なのだと思います。

技術という合理的な世界から、資本に絡む人の欲や政治的な課題を紐解く非合理の世界に身を投じるのは、少し肝が冷える心もあるでしょう。ですが、技術の総力を尽くしてビジネスの世界に繰り出し、隣人と国を助け、自分達は誇れることをしたよねと後から言えることは、どれだけロマンがあるでしょう。”好き”に使命感が宿ったときのモチベーションは大きく、チームであれば非合理の世界でもきっとやっていけます。僕たちはそこに技術力というバフをかけることができるのですから、技術と経営両面で強い会社を作れば何もやれないことはありません。
ただもちろん、海外を意識して情報を仕入れたりネゴシエーションしても、国内で得られる強みを見過ごして海外に突撃するのも良い策とは思えません。そこは狡猾にいきましょう。長い時間をかけてでも、できないと卑下する人が多い中で一歩ずつ不可能を達成していく愚直さと技巧を兼ね備えたエンジニア。これほどその背中に憧れを感じるものが、他にあるでしょうか。

短期的な課題として、僕たちのプロダクトはまだまだバリュープロポジションの磨き込みが甘い、というのがあります。管理画面の中でも特にペインの大きい業務やその構造的要因を特定しないと「なんでもできそうでなんにもできない」プロダクトになってしまいます。
急成長にはペインの強い使い道にフォーカスを絞り、それがより多くの人に共感頂けるよう言語化し、機能を作り込んでいく必要があります。曖昧に成長することを怖がりつつ、シャープな成長を遂げるため、まだ始まったばかりの僕たちの会社に、ご意見を頂けますと幸いです。

そんなこんなで、会社を前に進めるためには、お手伝いいただける方がビジネス・技術両面で必要です。あるいはすぐにご一緒できなくても応援してくださる方が必要です。
興味を持ってくださった方、Twitterで連絡いただければと思います。最近の技術組織のあり方や、スタートアップの特有の話を肴に、未来の話をしましょう。

https://twitter.com/__timakin__

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