見出し画像

ピーター・ドラッカーの「マネジメントスコアカード 」をご存知ですか?

ピーター・ドラッカーが名付けたマネジメントスコアカード

ピーター・ドラッカー(経営コンサルタント、社会生態学者)のマネジメントに詳しい方でも、「マネジメントスコアカード」を知らないという人は多いのではないでしょうか?

なぜなら「マネジメントスコアカード」という用語は、ドラッカーの著書には明記されていないからです。

しかし、ドラッカー本人がインタビューを受けているときに、マネジメントスコアカードの存在を明言しています。その内容は、ドラッカーの著書「現代の経営」や「マネジメント」に書かれています。

ドラッカーの著書「現代の経営」は、原典では「プラクティス オブ マネジメント」、「経営の実践」です。マネジメントスコアカードは、著書「現代の経営」の内容そのものです。つまり、マネジメントスコアカードとは経営の実践、または経営の実践支援ツールのことです。

マネジメントスコアカードを活用して、ドラッカーのマネジメントを実践することができます。そして、事業の目的である顧客の創造をすることができます

□ドラッカーのマネジメントスコアカードとは?

マネジメントスコアカードとは、事業の定義を行い、8つの鍵となる領域の目標を設定し、バランスさせ、戦略計画を策定・実行・評価するものです。

□MSC(マネジメントスコアカード)は以下6つを行います。

1. 事業の定義
2. 事業の定義に従い、明確な目標を設定します。
3. 活動の優先順位を検討し活動領域を定め、最低限必要な成果を規定し、期限を設定し、担当者を明らかにし、成果をあげるべく仕事をします。
4. 成果の尺度を定めます。
5. 尺度を用いて、自らの成果についてフィードバックを行います。
6. 目標と成果を照合する。非生産的な活動を廃棄するシステムをつくりあげます。

□ドラッカーのマネジメントとは何か?

・自由と尊厳を守る唯一の方策である自立した組織をして、高度の成果をあげさせるものです。
・成果をあげる責任あるマネジメントこそ全体主義にかわるものであり、われわれを全体主義から守る唯一の手だてとなるものです。


序.マネジメントスコアカードとは何か?

マネジメントスコアカードとは、ドラッカー・マネジメントの実践ツール

ドラッカーのマネジメントとは、自らの外部において成果を上げるための機関であり、組織をして成果をあげさせる為の道具、機能、機関です。

マネジメントスコカードは、ドラッカーのマネジメントを実践するための手助けとなります。

ドラッカーは、事業の目的はマーケティングとイノベーションによる顧客の創造であると言っています。

マネジメントスコアカードの目的も、事業の目的と同じく、マーケティングとイノベーションにより顧客を創造することです。

ドラッカーのマネジメントスコアカードを実践して事業を成功へ導きましょう。

マネジメントスコアカードの進め方は3ステップ

「マネジメントスコアカードの3ステップ」
1.事業の定義
2.8つの目標
3.  自己目標マネジメント

マネジメントスコアカードとは、事業の定義を行い、8つの鍵となる領域の目標を設定し、バランスさせ、戦略計画を策定・実行・評価するものです。

「事業の定義」と「8つの目標」、「自己目標マネジメント」のスリーテップです。

①事業の定義で、顧客を創造する為の目的を定性的に設定します。

②8つの目標で、目的を8つの領域で目標として設定し、戦略計画を策定します。

③ 自己目標マネジメントで、成果の尺度を定め、尺度を用いて自らの成果についてフィードバックを行い、目標と成果を照合し、非生産的な活動を体系的に廃棄します。

1.事業の定義

事業の定義は「顧客の創造」の第一歩

事業の定義は、マーケティングとイノベーションによる顧客の創造の第一歩です。

「我々の事業は何か?、何になるか?、どうあるべきか?」の3つの問いを自問自答し、事業を定義します。

1.我々の事業は何か?「ミッション・最も重要な問い」
→(                   )

2.我々の事業は何になるか?「ビジョン・将来的な問い」
→(                   )

3.我々の事業はどうあるべきか?「バリュー・事業の再定義」
→(                   )

ドラッカーの事業の定義とは、ミッションとビジョンからバリューを導き出し、顧客を創造することです。 

あなた(御社)の使命と夢から顧客価値を導きだし、顧客を創造して下さい。

事業の定義の成功事例

①1960年代に急成長した証券会社ドナルドソン・ラフキン&ジェンレット

・事業の定義=「年金基金と投資信託に向けた財務的なサービス、助言、マネジメントの提供」

②AT&Tの例(アメリカの電話会社)

・事業の定義:「われわれの事業はサービスである。」
・指標:「顧客満足度」と「サービス充実度」

事業の定義から、事業の目的を設定

「我々の事業は何か?何になるか?」から「我々の事業はどうあるべきか?」を導き出します。

「我々の事業は何になるか?」は、 予測される変化に適応するための問い。 現在の事業を修正し、拡張し、発展させることであり、将来的な問いです。

「我々の事業はなんであるべきか?」は、 現在の事業をまったく別の事業に変えることによって、新しい機会を開拓し、新しい事業を創造することであり事業の再定義です。

事業の再定義(我々の事業はどうあるべきか?)を、最も重要な問い(我々の事業は何か?)と将来的な問い(我々の事業は何になるか?)から、定性情報として言語化して目的を設定しましょう。

我々の事業はどうあるべきか?「バリュー・事業の再定義」が目的となります。
→(                   )

事業の定義ができたら、常に自問自答し、事業の定義が成果を生み出しているか、顧客の創造をしているかを定性的に評価していきましょう。

マネジメントスコアカード①「ドラッカー事業の定義」に詳しくマネジメントスコアカードの事業の定義について書いてます。

2.8つの目標

8つの鍵となる領域の目標設定

事業の定義で目的を設定したら、目的に対する8つの目標を策定します。

事業は目標を設定してマネジメントする必要があります。

8つの事業の鍵となる領域それぞれにおいて、測定すべきものを決定し、その測定の尺度とすべきものを決定します。

8つの領域は、マーケティング、イノベーション、人的資源、資金、物的資源、生産性、社会的責任、利益です。

  1.  マーケティング

  2.  イノベーション

  3.  生産性

  4.  社会的責任

  5.  人的資源

  6.  物的資源

  7.  資金

  8.  利益

8つの目標では、事業の定義で明確になった目的を、目標として事業活動の鍵となる8つの領域に落とし込みます。

まずはマーケティングとイノベーションの2つに目的を目標として落とし込みます。

次にマーケティングとイノベーションに従属する残り6つの目標に落とし込みます。

□それでは、8つの目標の各指標について確認しましょう。

マーケティングの目標設定

・事業の定義で明確になった目的を短期的に見て、成果目標としてマーケティングの領域に落とし込みます。

・マーケティングの目標は、2つの基本的な決定(集中の決定、市場地位の決定)を行い、7つのマーケティング目標を立てます。

□集中の決定
・経営戦場、集中する分野
・「立つ場所を与えてくれれば世界を持ち上げてみせる」と言ったアルキメデスの言う立つ場所が、集中する分野

□市場地位の決定
・市場において目指すべき地位は、最適
・市場シェアとして狙うべきは、最適
→顧客、製品、市場、流通チャンネルの分析が必要
→戦略とリスクを伴う意思決定が必要

□市場地位戦略
・リーダー:総力戦略
・チャレンジャー:起業家的柔道戦略
・フォロワー:創造的模倣戦略
・ニッチ:関所戦略、専門技術戦略、専門市場戦略

□市場地位の目標設定の問い
「何が自らの市場であるか」
「誰が顧客であるか」
「どこに顧客はいるか」
「何を顧客が買うか」
「何を顧客は価値と見るか」
「顧客の満たされていない欲求は何か」
→自らの製品とサービスを顧客の欲求との関連に照らして分析する。
→市場の定義に立って、市場を製品ラインごとに見、その現在の大きさ、潜在的な大きさ、経済的な要因、イノベーションの趨勢を明らかにする。
→市場地位についての目標設定を行う。

□マーケティング7つの目標
1. 現在の市場において、現在の製品が占めるべき市場地位ー金額およびシェア
2. 将来の市場において、現在の製品が占めるべき市場地位ー金額およびシェア
3. 技術上の原因、市場の動向、製品ミックスの改善、事業定義の変更によって放棄すべき既存の製品
4. 現在の市場において、新製品の占めるべき市場地位ー金額およびシェア
5. 新製品をもって開拓すべき新しい市場において占めるべき市場地位ー金額およびシェア
6. これらの目標を達成するための流通チャンネル、および価格政策ー金額およびシェア
7. 顧客が価値ありとみなすサービス

イノベーションの目標設定

・事業の定義で明確になった目的を長期的に見て、成果目標としてイノベーションの領域に落とし込みます。

□目標を設定する為の2つの予測 
1. マーケティング目標の達成に必要なイノベーションについての予測
2. 技術上の進展による変化についての予測

□価値の創造戦略
・効用戦略
・価格戦略
・顧客戦略
・価値戦略

□イノベーションの5つの目標
1.市場地位に関わる目標の達成に必要な新製品と新サービス
2. 現在の製品を陳腐化する技術変化が原因となって必要となる新製品と新サービス
3. 市場地位に関わる目標を達成し、かつ技術変化に備えるための製品改善
4. 市場地位に関わる目標を達成するために必要なプロセスの改善と新しいプロセス
5.経理、設計、事務管理、労使関係など、あらゆる種類の知識と技能の進歩に合わせたイノベーションと改善

経営資源(人、物、金)の目標を設定

・マーケティング目標とイノベーション目標の達成に必要な経営資源の確保についての目標

「これが利用可能なものです。最大限の利益を得るには、私たちは何をしなければなりませんか、どのように行動しなければなりませんか?」と問わなければならないとドラッカーは言っています。

  1.  人的資源目標

  2.  物的資源目標

  3.  資金の目標

生産性の目標設定

□マーケティング目標とイノベーション目標生を支える生産性の目標

□生産性の測定
・生産性とは、資源の活用とその産出を示すもの
・マネジメントの質という、事業にとって重大な要素を測定する方法

□生産性の測定に必要な尺度(付加価値)
・付加価値とは、総支出と総収入との差(すべての資源と活動に対する市場の評価)

□生産性にかかわる目標
1.総収入に対する付加価値の割合
2.付加価値における利益の割合

社会的責任の目標設定

・マーケティング目標とイノベーション目標を支える社会的責任の目標

1.社会に与えるインパクトについての目標
2.社会の問題について貢献を行う為の目標

利益の目標設定

□どれだけの利益が必要か?
・必要最小限の利益: 事業があげなければならない最小限の利益を考える

・利益目標の尺度: 税引き前資本収益率
※大きな事業の場合は、リスク込みの利益率の目標が必要

(重要な修正事項)
1.時間的な要素を入れる。
→事業年度という暴君から自らを解放する。
2.利益率を業績の波をならした平均としてとらえる。
→損益分岐点分析

□利益の三つの役割
1. 判定基準:  事業活動の有効性と健全性を測定する。
2. 事業存続のコスト:  陳腐化、更新、リスク、不確実性をカバーする。
3. 事業のイノベーションと拡大に必要な資金の調達の手段:  社内留保による自己金融、外部資金の導入誘因。

□税引き前資本収益率
・御社の損益分岐点売上高はいくらですか?
☆税引き前資本収益率は何%ですか?

マネジメントスコアカード②「ドラッカーの8つの目標」に詳しくマネジメントスコアカードの8つの目標について書いてます。

3.戦略計画

戦略計画とは何か?

戦略計画とは、「リスクを伴う企業家的な意思決定を体系的に行い、その実行に必要な活動を体系的に組織し、それらの活動の成果を体系的にフィードバックするという連続したプロセスである」とドラッカーは言っています。

戦略計画において重要なこと

  1. 目標の設定について体系的な作業を行うこと

  2. 昨日を廃棄することからスタートすること

  3. 目標の達成のために、努力の倍加よりも新しい方法の開発に力を入れること

  4. 対象とする期間を考え、必要なときに必要な成果を手にするには、いつスタートしなければならないかを考えること

仕事として具体化する

  1. 成果をあげるために、組織の中の有能な人材を具体的な仕事に割り当てる

  2. 将来において成果を生むべき活動に資源を割り当てる

・「マネジメントの判断力、指導力、ビジョンは、戦略計画という仕事を体系的に組織化し、そこに知識を適用することによって強化される」とドラッカーは言っています。

優先順位の決定

□何もかもできる組織はないから、優先順位が必要
・優先順位を付けるための公式はない
・優先順位はリスクを伴うが、成果をあげるために付けなければならない。
→そのための装置が予算です。

実行計画

・事業の定義を考えて目標を設定するのは、目標達成に向けて行動するためです。

・その狙いは、組織のエネルギーと資源を正しい領域に集中することです。

・検討の結果もたらされるべきものは、具体的目標、期限、担当を含む実行計画です。

4.明日を予期するための手法

重要な領域それぞれにおいて設定する目標は、事業を運営するための計器盤です。しかし、この計器盤さえ、計器を読み判断する能力がパイロットになければ役に立ちません。事業の運営において、パイロットの能力に相当するのは将来を予期する能力であるとドラッカーは著者「現代の経営」で言っています。

※ドラッカーの明日を予期する方法については下記をクリック下さい。

5.自己目標マネジメント(目標と自己制御によるマネジメント)

自己目標管理とは、自己制御によるマネジメントです。

事業の定義と8つの目標で目標を設定したら、自己管理による目標管理(自己目標管理)を行う必要があります。

目標(情報)はセルフコントロールの道具であり、上からの管理ではなく、目標(情報)が自己管理のために使われるならば、マネジメントの仕事と成果は大きく進歩します。

✅支配によるマネジメント→マイナスのインパクト拡大へ

自己目標管理によるマネジメント→プラスのインパクト拡大へ


終わりに

ドラッカーのマネジメントスコアカードを自分なりにまとめてみました。

マネジメントスコアカード①「ドラッカー事業の定義」マネジメントスコアカード②「ドラッカーの8つの目標」に詳しくマネジメントスコアカードの事業の定義と8つの目標について書いてます。

最後まで読んで頂きありがとうございました。

ダイヤモンド社出版  P.F.ドラッカー著「マネジメント(上)」「現代の経営(上)」「マネジメント」「経営者に贈る5つの質問」から 一部引用および参照しました。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?