マガジンのカバー画像

呻吟

14
自分の思想が滲み出たフィクション小説、『呻吟』です。 さとり世代の呻吟と思春期の葛藤を描く、ユース・サスペンスドラマ。 呻吟は”しんぎん”と読みます。葛藤の類義語です。
運営しているクリエイター

#私は私のここがすき

【呻吟】理の日

【呻吟】理の日

 約束の日前日。寝床にて、急に黒いナニカに襲われた。
 翌日で、彼とは二度と会えなくなるのだろうか。他人事のようだが、私が殺すことになるはずだ。
 彼が苦しむ姿を見たくはなかった。自殺同様、人を簡単に殺せるとも思えなかった。
 原因はわからないが、殺すという行為はとても恐怖に満ちていた。殺したくなくなった。

 当日、発表直前のアレと似た恐怖心が脳を支配していた。殺害方法や道具の準備を、まるでして

もっとみる
【呻吟】ユイの戯言Ⅲ

【呻吟】ユイの戯言Ⅲ

「現実と向き合うの?」ユイだ。

 無理でしょという目をしている。出てきやがったか。

「ムダよ。あなたは考えれば考えるほど、黒一色で出来上がったあなた自身に蝕まれる人でしょう。現状に満足しているのだから、なにかを成そうだなんて思わないことね」その姿は、すべてを悟った仏かのように思われた。

 たしかに、ユイのいうことも一理ある。好きなことを仕事にする人、億り人、数多の選択肢。考えるのには疲れたし

もっとみる
【呻吟】ーーとまともな中学生

【呻吟】ーーとまともな中学生

 『明るい』と言うと、またニュアンスが違う気もする。
 クラスメイトや私と関わる人全般には、私は夢を描ける子で、夢を叶える知性を兼ね備えているように思われていたことだろう。成績優秀で、リーダーシップを取る。クラスの人は皆私を慕い、友達がたくさんいる。
 全ての人の彼女の印象はこうだった。絵に描いたかのような優等生っぷりだ。
 そんな中、ーーだけは、私をそんな目では見ていなかった。
 『優等生もどき

もっとみる