【連載小説】公民館職員 vol.31「友達」
『友達を一人連れていっても構いませんか?』
はいはい、構いませんよ!
2つ返事の後、私は大慌てで準備を整える。
化粧はいつもより念入りに、服はまたしても妹のお気に入りのスカートにダウンジャケットを合わせる。靴は磨きあげたブーツ!
私、完璧じゃない?
完璧すぎて自分で自分に惚れちゃうぜ、ベイビー?
準備が終わって十五分くらいした頃、進藤さんからメールが届いた。
『着きました』
『すぐ行きます』
家は昨日送ってもらった時に教えてあったので、楽勝だ。
しかし、このタイミングで友達を呼ぶって、もしかして私、品定めされるんだろうか?
一瞬脳裏にそんな言葉がよぎったが、もう準備し直している時間はない。
充分おしゃれはしたつもりだし、初対面でよく思われるよう、あとは努力するのみだ。
進藤さんの車が見えた。
私は軽く手をあげて、お待たせしました、と言う。
助手席から降りてきたのはこれまた美形の、爽やかな青年だ。
「どうも、初めまして。佐藤と申します」
「お噂はかねがね伺っています。進藤の友人の長沢と申します。よろしく」
キャー!?どっちに転んでもいい男!もしかして私、やっぱりモテ期突入??
「佐藤先生、今日は突然ごめんなさい。長沢が会ってみたいって聞かないもんで……」
「いいえ、私も家で退屈していたところだったので、お誘いいただいて光栄です」
私は可愛らしく小首を傾げてみる。
あんまり効果はなかったようだ。
とりあえず場所を移動しようということになり、うちの近所のスバタックスコーヒーに移動する。
車内でも男性二人に気遣ってもらえて、ちょっとお姫様気分だ。
コーヒーを頼むと、進藤さんが先に席を取っておいてというので、一人先に座る。
コーヒーが到着すると、コーヒー談義に花を咲かせた。進藤さんはコーヒーが好きらしい。メモメモ。
長沢さんはどちらかというと紅茶派だという。
男の人には珍しい。
長沢さんの紅茶談義にも花を咲かせて、楽しい時間は過ぎていく。
それは突然だった。
途中、長沢さんがトイレで席を外した時だった。
「彼、かっこいいでしょう?」
「はい、素敵ですよね!」
「そう思ってもらえて光栄だな」
進藤さんはコーヒーに一口つけると、こう、言った。
「僕の彼氏なんですよね」
!!?!?
「え……今、なんて……」
「何度も言わせないでくださいよ(照)僕のか・れ・しなんですよ」
「彼氏……って、男同士で??!!」
「そうなんです。そこでね、佐藤先生にお願いがあって……」
そう言ったときに長沢さんが戻ってきた。
「何の話だっけ?」
爽やかに長沢さんが言う。
「今、お願いごとを話してたとこ」
進藤さんが長沢さんに軽くウィンクして見せる。
「あぁ、俺からもお願いします」
「お願い事っていうのはね、僕の家族に佐藤先生を彼女として紹介したいんだ」
「へ?」
「僕らは表立っては友人で通しているんだけど、最近両親が早く彼女を作れってうるさくてね。カモフラージュ彼女を演じてもらえないかと思って」
「は、はぁ……」
頭が混乱する。
つまりは、表面上彼女を名乗って欲しい、そういうことか。
「ま、まぁ、いいですけど……」
なんでいいなんて言っちゃうんだ、このお人好し!!と、自分を責めたときには既に遅く、二人で喜び合う二人の姿が……
あぁ、なんだか目が曇ってきましたわ……
それが涙と認識するより先に、進藤さんが話を進める。
「図書室でお会いしたときから、佐藤先生にお願いしたいとずっと思っていました。感謝します!」
「俺からも、感謝します!」
「で、両親に会う日なんですけど、佐藤先生はいつが時間取れますか?」
私の意識は宇宙を一周して、戻ってくることはなかった。
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