【連載小説】公民館職員 vol.30「よくできた男」
半分こして食べる料理は本当に美味しい。
「この店のオムライスは美味しいって有名なんですよ」
「そうなんですか?何も知らずに頼んじゃいました」
「佐藤先生が頼まなかったら僕が頼もうと思ってたんですよ」
ニコッと笑う進藤さんにくらくら来る。
私は少し酔ったみたい?たった一口しか飲んでいないというのに。
「でも、なんで食事に誘っていただけたのか、まだわからないんですけど……」
「あぁ、それは追々説明しますよ」
追々説明って……やっぱりなんかあるのかな?けど、今日は突っ込んで聞かないことにした。
食事を終えて、どうするかという話になる。
「少しドライブでもしましょうか」
「そうですね、進藤さんさえよければ、私は何でも」
何でもオッケー牧場だぜ!って古かったか……
バイパスを通って空港裏に来た。空港裏はカップルのメッカだ。
いよいよ……と私はもじもじしたが、そのようなことは一切なかった。
「僕は写真を撮るのが好きでね。とくに飛行機を撮るのが好きなんですよ」
「進藤さんって、何でもお出来になるんですね」
「いやいや、お世辞にも人に見せれる代物じゃないんですけどね。こうして夜空に羽ばたいていく飛行機もなかなかいいなと思うんですよ。今の時間じゃきちんと装備しないと撮れませんけどね」
私は進藤さんの一挙一動に感激した。
これぞ、私の王子様……
「寒いですし、一旦街へ戻りますか」
「はい!」
この気遣いといい、出来る男は何か違うな。今までの男が腐ったミカンに見える。あ、おっさんは除いてね。
最近はおっさんとばかりいたから、自然とおっさんのことを考えることが増えていた。今もそうだ。おっさんだったら、今何を言っただろう。きっと私を笑わせるためのジョークをねじ込んで来たに違いない。
けれど、進藤さんはくさいセリフも平気で使いこなす。今までの男とは訳が違う。だから、私も進藤さんにどう接するのが一番いいのか、戸惑うことばかりだ。
車に乗ってしばらくして、進藤さんが話しかけてきた。
「佐藤先生は、明日はお仕事ですか?」
「いえ、お休みです。」
「じゃあ、もう一件行っても?」
「ええ、構いません」
街中へ戻ってくると、駐車場に車を止めて歩き始めた。歩くときもさりげなく車側を歩いてくれたりするのが嬉しい。
次に行ったお店はおしゃれなバーだ。
「バージンブリーズを」
「お客様はなんにされます?」
「さっぱり目のお任せで」
バーには行き慣れているので、注文に困ることはない。
「佐藤先生はよくバーに行かれるんですか?」
「ええ、まぁ……ところでタバコを吸っても構いませんか?」
「あ、こりゃ気づかず失礼。もしかしてずっと我慢してました?」
「ええ、少し……」
ここで本音がポロリと出た。
「おっしゃっていただければ良かったのに」
進藤さんは笑顔で答える。
「いえ、大丈夫です」
「しかし、佐藤先生がタバコを吸うとは……意外でした」
「そんなに意外ですか?」
「佐藤先生はどこか、あどけないところがおありなので、意外でした」
「あどけない?私が?」
「見た目もお若いですしね」
なんだか褒められているのか微妙な返事だがよしとしよう。
それからは小説談義に花を咲かせた。
こんなに楽しい夜は久しぶりだった。
◇
明けて翌日。
機嫌のよい私に妹が言う。
「やけに機嫌いいじゃん。彼氏でも出来たか?」
「まだ確定ではないんだけどね〜♪」
私はすこぶる機嫌よく洗濯物を干し終えた。
すると、携帯がなる。
進藤さんからだ。
私はウキウキして電話をとる。
「今日はなにしてらっしゃいますか?」
「家で暇してます」
「よかったら今日もお会いできませんか?」
「はいはい、いいですよ!」
私は2つ返事で会うことを了解したのだった。
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