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【連載小説】透明な彼女 vol.7「病気?」

俺はこうした生活を1ヶ月繰り返している。

相変わらずユイは誰にも見えないようだ。


俺は黙っていることがつらくなり、親友の鈴木にだけ、その事実を話す。

すると鈴木は

「ちょっと、行こう」

と言って俺を連れ出す。


行った先は精神科だ。

半ば強引に受付を済ませると、椅子に腰かけて順番を待つ。

「お前さ、ちょっと疲れてるんだよ、多分。ユイちゃんのこととか、思い出してんだよ」

鈴木の言うことは一理ある。

俺は病気かもなんて考えもせずにユイを受け入れたけど、常識で考えると絶対おかしい。

けど、そしたら昨日の食事はなんだったのか……

昨日も俺はユイの手料理を食べた。

一昨日も、その前も、だ。

ユイは茶碗を洗うところまでしてくれる。

まるで新婚生活みたいだ、と嬉しそうにしていた。


病院の順番がくる。

鈴木は

「行って全部すっきりさせてこい」

と肩を叩いた。


「どうぞ」

と看護師さんに促されて入ると、パソコンを横にして医者が待っていた。

「今日はどうされましたか?」

俺はユイとの再会のことから今に至るまでを詳しく話した。


医者は頷くと、

「統合失調症という病気をご存知ですか?」

と聞いてくる。

なにやら幻覚や幻聴を見たり聞いたりする症状がある病気らしい。


どうやら俺は、統失患者という肩書きをもらったらしい。

疲れから発症することもあるらしく、薬を数種類出される。


鈴木はほれみろと言わんばかりに、

「お前、考えすぎて疲れてんだよ」

と言う。

俺は

「そうかなあ」

と納得いかないまでも、薬をもらった。


薬は主に副作用で眠たくなるものが多いので、寝る前に服用する。

これでユイが消えてしまったら、それはそれで寂しい。

もう1ヶ月も同棲しているのだから、当然のことだ。


ユイには病院へ行ったことも、薬のことも、包み隠さず話す。

ユイは

「それで見えなくなっちゃうことはないと思うけど、念のためさよならね」

と小指を出してくる。


俺は指切りをすると、今日の分の薬を飲んだ。

薬の効果は二週間ほどで現れることが多いらしく、根気よく治療していきましょうね、と医者から言われた。

薬を飲んでしばらくしたら、飲み込まれるように睡眠に落ちていった。


翌朝、いつものようにユイが朝食の支度をしている。

俺は眠気でぐるんぐるんしながら朝食を食べる。

薬がまだ残っているのだろう。

ぐるんぐるんして、だるい。

まだ寝ていたいが、今日の午前中ははずせない実習がある。


ユイが心配をするのをよそに、俺は寝かぶりながら自転車を漕いで行く。

気がつくとユイがまたついてきていた。


鈴木に会う。

「どうだった?薬。見えなくなったか?」

会うなり聞いてくる。

心配してくれているのだろう。

俺は正直に、

「眠くてだるいだけで何も変わらない」

と答えた。

「そうか……まぁ、気長に治していこうな」

と鈴木は言う。

「おぅ、サンキューな」

と俺は返事をしておく。


今日の実習は塑像だ。

俺はよりリアルな油絵を描きたいから、こうして三次元を元にする実習は外したくない。


懸命に作成していると、横からひょいっと手が出てきて勝手に塑像を加勢する。

俺は

「ユイが作ってたら俺は上達しないから」

と小声で言う。

それでも周りには聞こえたらしく、怪訝な顔をされる。

最近ではこの怪訝な顔に慣れつつある。

ヤバいヤバい。

ユイは

「それもそっか」

と言い、退屈そうに立っている。

先日も俺が描いている絵に勝手に描き加えてきた。

やはり絵を描きたいのだろう。


俺はカンバスを一つ、帰りに購入して帰った。

ユイがそこに絵を描けるように。

俺の油絵の具はあっという間に減っていく。

二人で使えばどうしてもそうなる。


俺は絵の具やカンバス代を稼ぐためにバイトをすることに決めた。

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