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【連載小説】ガンズグロウ vol.33「一呼吸」

「ええっ、それってどういう意味?」

「私、さやかさんのことが好きなんです。女性として、ではなくて、異性として好きなんです」

はあっ?と思う。

それってどういう意味よ?

「女性じゃなくて、って言うことは男性としてっていうこと?!」

「いえ、女性としてですが、異性と同じようにすきということです」

「それって……」

レズ、なにそれおいしいの?

「レズととっていただいても構いません。でも、今まで好きだった人はみなさん男性でした。さやかさんは特別なんです」

だけど私の気持ちはモヤモヤしたままだった。

「だからと言ってチームメイトにあんなメッセージを送るなんて、いけないことだよ?!」

「虫を退治しなければと思いまして」

虫?この子どこまで痛々しいの?

「だって、私、彼氏がいるって言ったよね?」

「はい、ですから彼氏以外の方と親密になるのはよろしくないと思いまして」

私は大きくため息をつくと、

「私の彼氏って、タツキだよ?」

くうは目を見開いた。

目をそらすくう。

「それはタツキさんには失礼しました。でも、さやかさん、ゆらぎさんと仲良すぎはしませんか?」

「ゆらぎも女だよ?」

「……」

くうが言葉を失った。

「それに、みんなチームメイトなんだから、仲良くしないと、連携がとれていないといけないでしょう?」

「……だったら女の子だけのチームを作りましょうよ」

くうは必死だった。

「女子だけのチームをくんでも、くうちゃんみたいな子がいないとは限らないじゃない?」

「それはっ……そうですけどっ……」

私はコーヒーを一口すすって、

「それから、このチョコは受け取れないよ」

私はテーブルに置かれたチョコを返した。

「えっ……私、二番目でもいいんです。さやかさんのそばにいられるなら」

くうがチョコを押し返す。

私は、

「ごめんね、私が好きなのはタツキだけなの。それ以上もそれ以下もないから」

またチョコを押し返す。

くうの顔が赤面してゆく。

チョコをバッとバッグに入れると、くうは

「ごめんなさい」

と言い残して涙目で走って店を出ていった。

私は大きくため息をつくと、気を取り直し、伸びを一つすると、伝票を持って立ち上がった。



今日はバレンタイン。


まず、みなもの家に寄った。

みなもにチョコを渡すと大喜びした。

「お母さんと妹からしかもらったことがなくて!!」

みなもは美少年が故にもらえなかったということか……

「そういえば、さっきくうちゃんからメールがあって、いろいろ都合悪くて時間が合わないから、チームやめたいらしいよ。タツキさんにはあとで連絡するってさ。残念だよねぇ」

一人メッセージが来なかったみなもは、呑気なものだった。



その足でバイト先に顔をだす。

「お?さやかちゃん、今日は休みじゃなかったっけ?」

田中先輩が聞く。

「じゃーん」

と言ってチョコを差し出す。

「お?なになに?チョコじゃーん」

先輩たちが群がる。

「一人一つですよ」

「なになに?」

タツキが後からやって来た。

「た、タツキくんの分は別にあるからね!」

バイトのみんながジト目でタツキを見る。


「まあ、彼氏だからね」

田中先輩がさらっと言う。

「えっ?!お前ら付き合ってるの?」

そうだった、田中先輩以外には言ってなかったんだ……

タツキは絞め技をくらった。

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