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【連載小説】ガンズグロウ vol.26「お見舞い」

タツキは私を許してくれた。

私はタツキのベッドの横で泣き崩れた。


私は中傷メッセージについて話した。

タツキは真剣な目で聞いてくれた。


せせらぎのことも話した。

レナから聞いたことも。


タツキは真剣な顔をして言った。

「俺が帰り次第、せせらぎは追放する。だから、それまで待ってね」

「うん…うん…ごめんね……」

私は泣いて謝るしかできなかった。



私は毎日見舞いに行った。

タツキはそのたび喜んでくれた。

私がいない時間は、

「今日は彼女は?」

と、からかわれるらしかった。


「私のせいでこんなに怪我させてごめんね」

「さやかちゃんが無事ならどうってことはないよ」

「私がもっときちんとしていたら……」

「いいよ、それより中傷の方は大丈夫なの?」

「うん、だいぶ落ち着いてきた」

まだちらほら中傷メッセージは来るが、ホントに一気に引けてしまった。

せせらぎの友人からのメッセージが一通り終わったということなのだろう。

第二波がこないように願うばかりだ。

せせらぎは、私がタツキのアカウントで入り、チームから除隊した。

その上ブロックをかけたので、もう関わることはないだろう。


しかし、散々な目にあった。

自業自得とはいえ、ここまで追い込まれるとは……



田中先輩もお見舞いに来てくれた。

田中先輩と私がタツキがいない間を埋める要員になっていたから、タツキはとても感謝していた。

田中先輩は田中先輩で、タツキの役に立てたことが嬉しくて仕方ないようだった。

「ホントに先輩、すみません」

「いやいや、こういう時はお互い様だよ」

そう言ってくれる先輩に、私もとても感謝した。


店長もお見舞いに来てくれた。

フルーツの盛り合わせを持ってきてくれた。

「病院食ばかりじゃ飽きるだろうと思ってな」


私はタツキにフルーツをむいてあげた。

タツキも美味しいと言って、よく食べてくれた。


一月もすると、タツキは退院した。

リハビリ通院だけが続く。

順調だと言われたが、リハビリは大変そうだった。

たまにシフトが遅いときに、私もリハビリに付き合った。

でも、私にできることは何もなかった。


二月が過ぎ、風が冷たくなった頃、ようやく普通の暮らしに戻ったタツキ。

まだ、少しだけぎこちないけれど、日常生活に支障はなくなった。


ただ、念のためバイトはまだ休んでいた。


それでも必死にバイトに行きたいと言っていたのには理由があった。


冬コミだ。


冬のコミフェスは、12月末にある。

それに向けて少しでもお金を貯めたいと言うのだ。

私は、

「こうなったのも私のせいだから、私の貯金を使って」

と言ったが、タツキは頑としてそれを受け取らなかった。

冬コミまでの1ヶ月、タツキはよく働いた。

田中先輩に休みを代わってもらっていた分だと言い張り、休みなく働いた。

私は、コミフェスってすごいんだな……と思った。



時が経ち、冬コミ当日。

私も一緒に行列に紛れ込んでいた。

寒いけれど、夏コミで学んでいたため、完全防備で臨んだ。


あちらにこちらに走るタツキについていくのはやっぱり大変だ。

しかし、今年も大手の本は手に入ったらしく、タツキは大喜びしていた。

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