見出し画像

【連載小説】透明な彼女 vol.16「思い出作り」

たまには筆を休めて、と、久しぶりに水族館へ行く。

受付で大人一名、と言うと、少し手間取ってお釣りが返ってきた。

ユイがクスクスと笑う。

大人一名だけというのはあまりないんだろう。


俺は記念にと、どこかしこでユイの写真を撮りまくった。

「そんなに撮ってどうするの?」

と聞かれたが、

「思い出作りだよ」

と言った。

確かに思い出作りだ。

俺のための。

写ってるのは一枚もないけど、それでも満足だ。

中央の巨大水槽では相変わらずジンベイザメがコバンザメを引き連れて泳いでいる。


ラッココーナーでも相変わらずラッコはイカを食べていた。

ラッコの水槽にべったりくっついているユイに、中に入って触ってきたら?

と言うと、さっそく入って触ってきた。

「なんか固くてあんまり可愛くなかった」

と膨れっ面するユイ。

ラッコは貝を与えると水槽にもぶつけて割ろうとするからイカしか与えないらしい。


アシカとイルカのショーをコーラ片手に見た

イルカショーではまた一番前の席で、今度はイルカジャンプの水を二人して被る。

二人でキャーキャー言いながら水を避けた。


帰りの車の中では道に迷ったことを思い出して笑いあう。

「あのときのユイのナビはひどかったなぁ」

「地図がわかりづらかっただけですー!!」

そんなやり取りをしながら帰宅する。



阿蘇にもドライブで行く。

草千里の超古くてぼろぼろのドライブインでソフトクリームを買って食べる。

ユイが、

「あんまりおいしくない」

と大絶賛だ。


馬乗り場に近寄ると、馬はユイの気配を感じとったのか、少し興奮させてしまい、距離をとった。

帰り間際にユイがオルゴール博物館なるものを発見したが、それは今度のお楽しみにとっておくことにした。



阿蘇ファームランドというところにも行く。

アスレチックがあり、ユイとおおはしゃぎして走り回る。

はたから見たら、少しおかしい人だったかもしれない。

オルゴールの装飾を自分でできるコーナーがあり、ユイに言われるままに組み立てていった。

「そっちじゃない、こっちのバラをそこに乗せて……」

ユイとの初めての共同作業かもしれない。

『乙女の祈り』の曲にあわせた、淡いブルーのケースに、花をたくさん散りばめた。

思えば、学校が違うから、こういう、絵以外の作品を見るなんてめったにないことだ。


そのあと、ガラス工房などを見て歩く。

ガラス工房も体験出来るらしかったが、手持ちが怪しいのでやめておいた。

すごく綺麗だったけどね!

途中の売店でホットドッグを食べる。

飲み物はコーラ。ユイが好きだった飲み物だ。


ここでもソフトクリームを食べる。

ユイは大絶賛し、2つも俺は食べることになる。


とにかく、そんな感じで思い出を増やしていった。

ユイのいない写真も記念にとアルバムに挟んでいったら、アルバムが3つ目に突入した。



俺はユイを絵から遠ざけることばかりを考えていた。

できるなら、もういっそこのまま描かずにそのまま留まってりゃいいじゃねーか。

そんな気持ちもしていた。



ある日、ユイを見ると、微妙に服が小さくなっていることに気づく。眼鏡も少し端があがったタイプの眼鏡に変わっている。

今の感じからすると、高校生くらいだろうか。


ちょうど、珍しく俺の絵が売れたところで、俺たちは通販のカタログをみている。

中身は普通のユイだけど、見た目が

「近寄らないでッ」

と周りを拒絶するように見える。

せめて服くらいは可愛いの着せたいじゃん?

安いことも手伝って一万円以上のお買い上げ。

でも、いいんだ。

ユイが喜んでくれるなら。

荷物は比較的早く届いた。

今回は下着も一緒にたのんでいる。

一度試着したい、というユイ。

俺はかくれんぼのように目隠しをして、まった。

「じゃーん!」

ユイがいつもよりも大きい声を出す。

振り向くと……そこはパラダイスでした。


いいもの拝ませていただきました。

今後のおかずにさせていただきます。


ブラもショーツも、バッチリなサイズだった。

よろしければサポートをお願いします。 生きるための糧とします。 世帯年収が200万以下の生活をしています。 サポートしてもらったらコーラ買います!!コーラ好きなんです!! あと、お肉も買います。 生きていく・・・