ファラフェル修行終了

奥のキッチンに行こう。そういってわたしをキッチンに迎え入れてくれた。そこにはひき肉を作るような大きな機械が鎮座しており、これがひよこ豆をファラフェルへと化していくためのものなのだ。

ファラフェルは簡単だよ。これさえあればね。そういって仰々しい機械を指差した。

さあ、たねを仕込もう。Ready?

OK!!BOSS

そう言って笑い合った。

彼の指示通り、と言ってもすでに準備している材料をこの大きな挽き豆機に入れていくだけだった。なんと単純な。

この作業を3回繰り返し、大きな銀色のボウルに粉砕されたひよこ豆ベースのたねを入れて少し水を加える。ひよこ豆の薄い黄色とパセリの緑が程よく混ざった優しい色の緩めのテクスチャのたねはクミンの食欲をそそる香りを放っている。

冷蔵庫に入れて少し寝かせよう。その間にシーシャでも吸ってお茶しようか。

店の向かいにある家の前で甘い煙をくゆらせ甘いお茶をすする。何もしない何もない平和な時間だった。占領地であるのに平和な時間だなんてなんとも不思議な気分だった。

サラームアレイコム、ファラフェルちょうだい。おじさんが歩いてきた。

さあ、ファラフェルを揚げよう。

店の前のディスプレイのような大きな鍋に並々と油を注ぎ火をつける。

2ミニッツ。

絶対2分じゃ温まらないし揚げられないけど、という思いは胸に留めておく。

冷蔵庫からファラフェルの種を出すと、なんとなくすべてがいい塩梅で混ざり合い落ち着いているように見えた。

ファラフェルを形成するアルミの変形スプーンを使って器用に油に丸くなったファラフェルの種を落とし込む。チリチリと油が跳ね、魅惑の香りが辺りに漂う。

わたしからは笑顔が溢れ店主と目を合わせる。

店主は揚がったファラフェルの油を切り、おじさんに渡し料金を受け取る。

シュクラン。またね。

そういっておじさんもファラフェルを受け取り笑顔で立ち去った。

やってみな。

うん。

見よう見まねでファラフェルを形成し熱くなった油に落とし込む。そしてニンマリとする。浮いてきたファラフェルの油を切る。どんどん作っては油の中へ投入し揚げていく。

好きなだけ食べて行きな。手伝ってくれてありがとう。楽しかったよ。

うん。こっちこそ。日本でも作ってみるからね。

まず1つ目を口に入れ熱々を頬張る。熱すぎて口がきけないわたしに大笑いする店主だった。

またおいで、いつでも連絡して。君はもうファミリーだから。

わたしももうファラフェルのシェフだね。

これでわたしのファラフェル修行の第一弾は終了となる。

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