壁にあるメッセージ

おじさんの背中、その先にある高い壁、ここからは空は見えない。お茶をすすり、しばらくぼーっと座り小さな空を眺めていた。

おじさん、お茶ありがとう。美味しかった。向こうのほうまで歩いてみるね。またね。

そう言って、わたしは小さな整備工場をあとにし大股で2歩程度の幅しかない壁の脇道を歩いた。壁にはグラフィティーだけではなくボランティア組織が掲示している地元の子供たちの作文があった。

16歳の少女、クリスティーナ。彼女は自分が兵役に就きたいと切実に綴っている。兵役に就き、国をよりよくするために力になりたい、しかしパレスチナ政府は兵役は男子のみとしているためそれができない。そういったことを書いている。わたしが16歳だったとき、国のことを考えていただろうか?自分の幸せな境遇に感謝しただろうか。学校を、勉強をいかにサボり、日々の退屈を埋めるために街に出歩いていた。16歳なんてそんなもののはず。友達と遊んだり、恋したり、着飾ったり、そんなことに夢中になるのが大人と子供の境目にいる年齢のはずなのに、彼女はそんなことよりも国をよりよくすること、そのために戦いたいとまで言っている。そう言いたくなるような環境下にあるということなのだ。胸が締め付けられる。

少しずつ日が傾き抜けるように青かった空が少しずつオレンジがかってくる。風も心なしか2、3度温度が低い。舗装されている道路を外れ砂や砂利で足もとが悪い道無き道を壁に沿って歩いてみる。ありとあらゆる壁に皮肉めいた落書きやグラフィティー。有名無名問わず多くのひとが疑問を投げかけている。見える壁は人を分断し、見えない壁は差別を生む。

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