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散文集

10
日常的な散文集
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#現代詩

ハジマリの唄

ハジマリの唄

「ハジマリノウタの準備に取り掛かるのだ。浮世離れした世界にもやはり終わりが来たのじゃ。今すぐ取り掛かれ!」
長寿のじいさまがあえて皆を前にしこう言ったのは、平和ボケし、危機を知らない私たちに向けた警告だったのだろう
時を期せずしてか、それとも必然にか
その後、私たちの半数以上は滅びることとなってしまう
それでも我ら種族は繁栄を求めなければならない
「オワリ」を呼んだ「ハジマリノウタ」ではなく
「ハ

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とびら

とびら

「開いてくれるまで寄り添ってください。
 しかし無理強いはいけません
 場合によっては逆効果になります」と注意書きがある。
独特な雰囲気を醸し出すこの扉。
見るからに大きく、厚く、重そうな見た目とは裏腹に
どこか危うく、繊細さが片付け切れていない独特な雰囲気。
鍵を開けてもらえる日は来るのだろうか、とつい弱音を吐きそうである。
気分はまるで登山をする前の気分だ。
登り始めたら後戻りはできない。

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じぶん色

じぶん色

人はノートに彩りを与え続けている。
ある意味デザイナーなのかもしれない。
人によって色、デザイン、厚さ、大きさ、長さ、全てが違うこのノート。
まっさらだった僕のノートも、随分と沢山の色が重なっている。
決してきれいとは言えないかもしれない。
けれども、僕はこの色が好きだ。
誰とも被ることのないこの色が好きだ。
これから先このノートがどれほど厚く、大きくなるかは誰にも分からない。
ただ、希望や欲望を

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季変化

季変化

シャワー浴びて
髪を直して
前の日から入念に選んだ服を着て
時計を着けて
靴を履いた
よし、準備万端だ。
行ってきまーす、と胸を躍らせ家を出る。
その途端、冷たく厳しい風が通り過ぎ、髪をぐちゃぐちゃに崩した。
めちゃくちゃ寒い
この風が僕の浮わついてる心を落ち着かせる。
あの白い季節はもう間近になってきた。