オワリはじまり36 「決断」
数日前、僕は今後の祖母の人生を大きく変えるかもしれないある決断をした。
脚の手術が無事終わり、これからは骨折前の状態とはいえないものの、自分意思で歩けるようになるためのリハビリなのだが、そのリハビリを今後も引き続き病院で行うのか?それとも施設に戻って、施設でリハビリを続けるのか?というものだ。
ちなみに設備面で言うと、施設よりも病院の方が優れたものを提供している。
遡ること、先週の金曜日。
僕は仕事終わりにケアマネから前述の内容を説明された。
僕は即答で施設に戻って、できる範囲でもいいのでリハビリをお願いします。と僕なりの意見を伝えた。
祖母が骨折して入院と手術が決定的になった時は、
「手術が成功して、病院でリハビリを頑張ったら元気な姿で施設に…」
と祖母がどうにか手術や入院、さらにはリハビリの日々を耐えて笑顔で施設に戻る姿を期待していたのに、これまで面会に行き見た祖母の姿や看護師からの話を聞いていると、僕の心の中で「病院でのリハビリを続ける」よりも「祖母の精神状態を改善させる」ことが優先であることがわかった。
祖母が僕みたいに若かったり、認知症など患ってなかったら、きっと「ついにリハビリ!リハビリを頑張れば以前のように身体を動かせる」とリハビリ専門病棟に移るというイベントはポジティブなものだっただろうが、今の祖母にとっては違う。病棟が変わり、看護師も変わり、周りの景色も変わる。そうなると、ただでさえ元気がない祖母の精神状態がさらに悪化してしまうのは目に見えていた。
そんな最悪な精神状態でこれからも入院しながらリハビリを続けることができるのか?
できるわけがない。
どれだけ病院の設備が良くても、祖母がやる気を出さない限りは祖母の身体は一向に良くなるわけがない。「病は気から」という言葉の意味を僕は25歳の人生でよく理解している。
僕が決断した翌日である土曜日、僕は久しぶりに1人で面会に行った。
そして電話が可能なスペースに祖母を連れて行き、ケアマネにビデオ電話をした。
今回僕が決断したことを、ケアマネを通して祖母に話すことで、祖母に希望を持ってもらおうと思ったのだ。
ケアマネ「〇〇さん、元気?昨日〇〇ちゃんと話してね、〇〇さんを施設に戻すことに決めたよ。〇〇さん、〇〇(施設)に帰りたい?」
祖母「うん、帰りたい…」
ケアマネ「そうよね、〇〇さん寂しいよね。わかった、私と〇〇ちゃん、そして〇〇さん(父)が頑張って退院できるようにするからね。それまでは病院でリハビリ頑張るんよ!」
ケアマネとのビデオ通話は面会時間ギリギリの13分間。
ビデオ通話中に祖母はケアマネはもちろん、ケアマネの計らいで施設の介護職員や祖母と仲の良い利用者さんと話すことができた。
施設でかなり仲の良い利用者さんの顔や名前を認知できないのは悲しかったが、通話が始まる前まで「無」の表情だった祖母がビデオ通話を通して次第に笑顔に、そして元気になって行ったことが僕にとってとても嬉しかった。
しかしビデオ通話が終わり、看護師の介助で車椅子で病室に移動する時点でまたいつもの「無」の表情に…その姿を見ていると、祖母にとって入院生活というものがどれほどストレスフルなものなのかということがわかる。
ばあちゃん、辛い思いさせてごめんね。
でも、僕や父さん、そしてケアマネさんができることは現時点でこれしかないの。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?